私の動物病院もそうですが、あなたの動物病院でも複数の診療サービスやペットアイテムを取り扱っているかと思います。
あなたはいくつの診療サービスや商品をそろえるべきか、深く考えたことはありますか?
おそらく多くの方が「たくさんあったほうが喜ばれると思っている」や「特に数にこだわりはなく、自信を持っておすすめできる商品だけを置いている」と答えるのではないのでしょうか。
それも決して悪いことではありません。
しかし、実際に提供する「数」を少し意識してみると、商品・サービスの売れ行きが変わっていく可能性があります。
そのことを理解するためには「マジカルナンバー」という言葉を知っておきましょう。
今回はアメリカの認知心理学者であるジョージ・ミラー氏が発表したマジカルナンバーについてお話したいと思います。
マジカルナンバー7±2とは
ハーバード大学の教授でもあったジョージ・ミラー氏は1956年に発表した論文で、この「マジカルナンバー7±2」を提唱しました。この論文では、人は短期記憶としては7±2個の事項しか覚えられないと断言されています。数日間、少ない人で5個、多い人でも9個しか覚えていられないというのは、少々驚きかもしれませんね。情報の単位は「チャンク」で表され、何をもってひとつの情報とするかは、その時々によって変わります。しかし、マーケティングにマジカルナンバーを活かしたいときには、「メニューの種類」「商品の種類」をひとつのチャンクとして区切るのが一般的です。
近年有力なのはマジカルナンバー4±1
1956年にジョージ・ミラー教授がマジカルナンバー7±2を提唱して以来、この説が有力とされていましたが、2001年にミズーリ大のネルソン・コーワン心理学教授が新たに「マジカルナンバー4±1」を提唱したことで、風向きは変わってきます。人間の脳のキャパシティはどうやらそこまで広くはないそうで、短期記憶としては3~5つの事項までしか覚えられないということです。確かに日本には「三原則」や「五箇条」といったものが多く存在しますね。これは「3~5つであれば覚えやすい」という根拠かもしれません。
また、私たちは6文字以上の言葉を4文字程度に省略する傾向があります。
- スマートフォン→スマホ
- パーソナルコンピューター→パソコン
- コンビニエンスストア→コンビニ
- サブスクリプション→サブスク
などです。これは4文字以下であれば覚えやすいという、根拠になるのではないでしょうか。
情報が氾濫する今の時代、少しでもあなたの動物病院の情報を飼い主さんの記憶に残すようにするためには、メニューや商品の数を絞ってアプローチすると売上が変わってくるかもしれません。
商品数はまず5つ以下に絞ってみよう
あなたは「ジャムの法則」というものをご存知でしょうか。ジャムを販売するときに、あまりに多くの種類のジャムを取り揃えていると消費者が迷ってしまい、かえって手に取ってもらいづらくなるという心理です。
なんとなくこの「マジカルナンバー4±1」と通じるものがありますね。闇雲に複数の商品をそろえるのではなく、厳選したものを5つ前後用意しておくと、飼い主さんにも覚えてもらいやすくなるでしょう。
コンテンツを整えれば5つ以上も記憶しやすくなる
いくらマジカルナンバーが重要だと言っても、サービスや商品などが5つ以下に収まりきらないこともありますよね。そのときにおすすめしたいのが「コンテンツ」の作成です。例えば、シャンプー、トリートメント、ブラシ、ペットフード魚味、ペットフード肉味、ペットトイ、サプリメントと7つのペットアイテムを販売したい時、いきなりこの7つを羅列して飼い主さんに勧めても、一発ではなかなか覚えてもらえません。
それも
- 美容アイテム(シャンプー、トリートメント、ブラシ)
- ペットフード(魚味、肉味)
- 健康アイテム(サプリメント、ペットトイ)
とコンテンツを作って分類すると、覚えやすくなるのではないのでしょうか。このように情報を整理してあげることで、飼い主さんの記憶に残りやすくなります。
商品を羅列するときにはランクをつけましょう
以前このブログでも紹介した、「松竹梅の法則」をご存知でしょうか。人は3つのランクのなかから真ん中のものを選ぶ傾向にあるという法則です。そのため、一番販売したいものを真ん中に置き、ランク設定をすると手に取ってもらいやすくなります。ただ一列に並べるよりも、あえてランクを付けることで記憶にもとどまりやすくなるのです。ぜひ今回紹介したマジカルナンバーの法則とともに活用してみてください。
どんなに質の高い商品・サービスであっても、飼い主さんの記憶に留まらなければいつまで経っても覚えてもらえません。今回のブログで紹介したマジカルナンバーをはじめとする人間心理をうまく活用して、効果的な戦略を打ち出していきましょう。