
今回のブログでは、動物病院経営における「仕事の断捨離」について考えてみたいと思います。
動物病院では、診療や手術だけでなく、受付対応、電話対応、会計、清掃、発注、スタッフ教育、院内ミーティングなど、日々さまざまな業務が発生します。院長であるあなた自身も、「本来もっと時間を使うべき仕事に手が回らない」と感じることがあるのではないでしょうか。
業務の効率化とは、単に手を抜くことではありません。限られた人員と時間を、本当に価値のある仕事に使えるようにすることです。成果につながっていない業務や、惰性で続けている取り組みを見直すことは、動物病院経営を円滑にするうえで非常に重要です。
とはいえ、部屋の片付けと同じように、仕事もなかなか簡単には整理できません。そこで今回は、仕事の断捨離に役立つ「4つのC」の考え方についてお話ししていきます。
労働と仕事の違い

仕事の断捨離を成功させる第一歩として、今あなたの目の前にある業務を「仕事」と「労働」に分けましょう。このふたつは混合されがちですが、ドイツの哲学者であるハンナ・アーレントは著書の中でそれぞれを明確に定義しています。
原文のままだと非常にわかりにくいので、私なりにかみ砕いてみると、
- 仕事=消費以外の価値を生み出すための活動
- 労働=生活や消費のために仕方なく取り組んでいる活動
ということになります。一概に「仕事だけに取り組むべき」「労働は無駄」と言うわけではありません。成果を得るためには、労働をしなければならないこともあるでしょう。しかし、成果が出ていないのに仕方なく取り組んでいる労働は精神的にも肉体的にもストレスであり、本業へのモチベーションを下げてしまうことになりかねません。
今あなたが「ストレス」だと感じている「労働」はありませんか?もしあまり乗り気ではない業務があれば、それは果たして本当に必要なのか。無意味な「労働」になっていないかどうかを考えてみましょう。
仕事を断捨離に効果的な「4つのC」の考え方

仕事の断捨離はどのようにしていけば良いのでしょうか。私がおすすめしたいのは、アンド・クリエイト代表取締役社長であり、人材育成コンサルタントの清水久三子さんが提言している「4つのC」です。この4つのCでは、まず業務を以下の4つのCに分けることから始めます。
- Cut(切る)…成果が出ない業務をなくす
- Convert(移す)…業務の担当者を変える
- Combine(集める)…分散している業務を一か所に集める
- Create(創る)…新しい仕事を生み出す
どのように進めていけば良いのか、ここからは具体的に解説します。
①Cut(切る)
たとえば、目的があいまいなまま続けている院内ミーティングや、ほとんど反応がないキャンペーン、昔からの流れで続けているだけのサービスはないでしょうか。もちろん、すぐに結果が出ない取り組みもありますが、一定期間続けても成果が見えないのであれば、見直す(=Cut)勇気も必要です。
また、院長自身が細かく確認しすぎている業務も、場合によってはCutの対象になります。すべてを100点に仕上げようとすると、重要度の低い業務に時間を取られ、診療やスタッフ育成、経営判断といった本来向き合うべき仕事に集中できなくなるためです。
ルーティンワークの見直しの大切さを以下の記事では説明していますので、ぜひ参考にしてください。
②Convert(移す)
最近は専門ではない分野の業務を外部委託(アウトソーシング)する流れが主流になっています。動物病院も例外ではありません。受付や経理、清掃スタッフなどは外注すると、その分コア業務に集中できるようになります。また、これまでベテランスタッフが担当してきた仕事を新人スタッフに回すと、ベテランスタッフはよりレベルの高い仕事にチャレンジできるようになり、結果的に業務の進行がスムーズになるでしょう。
ただし、何でも業務担当を変えれば良いというわけではありません。深く考えずに担当を変えてしまった結果、かえってコストがかかってしまったという事例もあります。本当にその業務は担当を変えるべきなのか、じっくり考えましょう。
アウトソーシングのコツについては、以下の記事をぜひ参考にしてください。
関連記事:プロにアウトソーシングして業務の効率化をはかることも重要
③Combine(集める)
分散されている仕事というと分かりづらいかもしれませんが、代表的なものを挙げるとメールチェックが該当します。一日に何度もメールチェックをしているとそれだけで集中力が途切れ、本業に支障が出ることがあります。他にもチームごとのミーティングなど、分散されている仕事は意外と多いものです。それらはあらかじめ日時を決め、まとめてこなすようにしていきましょう。
④Create(創る)
最後に考えたいのが、病院の成長につながる新しい仕事を創ることです。仕事の断捨離というと、業務を減らすことばかりに意識が向きがちですが、本当に大切なのは、空いた時間を何に使うかという点です。
たとえば、予防医療の案内を見直す、飼い主さん向けの情報発信を始める、スタッフ教育の時間を定期的に設ける、来院数や再診率などの数字を振り返る時間をつくるといった取り組みは、動物病院の未来につながる仕事です。
忙しさに追われていると、目の前の業務をこなすだけで一日が終わってしまいます。しかし、病院をより良くしていくためには、今ある仕事を整理するだけでなく、これから必要になる仕事を自らつくる視点も欠かせません。不要な業務を手放した分、病院の成長やスタッフの育成、飼い主さんへのより良いサービスにつながる時間を確保していきましょう。
仕事の整理をすれば経営の本質も見えてくる
仕事の断捨離は、ただ業務を減らすことではありません。動物病院にとって本当に必要な仕事を見極め、限られた時間や人員をより価値のある業務に使えるようにするための考え方です。
成果につながっていない業務を切る。院長以外でもできる仕事をスタッフや外部に移す。分散している業務をまとめる。そして、病院の成長につながる新しい仕事を意識的に創る。この4つのCを意識することで、日々の業務に追われる状態から少しずつ抜け出しやすくなります。
忙しさが当たり前になっていると、何を見直すべきか気づきにくくなるものです。だからこそ一度立ち止まり、自院の仕事を整理してみてはいかがでしょうか。仕事の断捨離は、スタッフの負担軽減だけでなく、院長自身が本来向き合うべき経営や診療の質を高めるきっかけにもなるはずです。
最後に理想的な仕事量がわからないというあなたのために、おすすめの記事を紹介します。こちらを参考にしていただければ幸いです。
