動物病院に限った話ではありませんが、私たち経営者はどうしても新規顧客獲得に気を取られがちです。決していつも懇意にしてくださる、リピーターの飼い主さんをおざなりにしているわけではありませんが、キャンペーンを打ち出すときは、ついつい新規獲得を想定した企画を考える傾向にあります。
しかし、これは決して良いこととは言えません。
今回は自分自身を戒めるためにも、リピーターを大切にする必要性をお伝えしたいと思います。
パレートの法則に見るリピーターの重要性
経営者であれば「パレートの法則」という言葉を聞いたことがある獣医師も多いのではないでしょうか。これは、企業が抱えている顧客全体のうち、約2割の優良客が売上の8割を生み出しているという法則です。
基本的にリピート率が高いリピーターであるほど、その企業やブランドへの愛着が強く、たくさんの商品を購入してくれたり、来店頻度が高かったりするものです。積極的に他の人に紹介してくれるリピーターも少なくありません。
すなわち、リピーターが多ければ多いほど、認知の拡大や売り上げの向上を期待できるのです。この法則を信じて、少しリピーターの獲得について考えてみてはいかがでしょうか。
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1:5の法則を知っていますか?
マーケティング用語のなかには、新規のお客様を獲得するときには既存のお客様の5倍のコストがかかるという、「1:5の法則」があります。誤解のないように補足しますと、明確に新規顧客のコストは、既存顧客の5倍かかると調査で証明されているわけではありません。多少人間の記憶に残りやすいように、誇張されている部分があると考えておいたほうが良いでしょう。
しかし、自分が経営する動物病院のことをまったく知らない飼い主さんに、新しい商品の販促をするよりも、既存の飼い主さんのほうが話しかけやすいことは事実です。私も新商品が発売された時にはまず、既存の飼い主さんから声をかけるようにしています。
その理由はふたつあります。ひとつ目は、やはり顔見知りの飼い主さんのほうが気軽に話しかけやすいということ。飼い主さんのペットの特徴や悩みを把握しているため、その飼い主さんにあったセールストークをすることができるのです。信頼関係ができているので、飼い主さんも「先生が言うのなら、ひとつ試しに買ってみようかな」「そういえばペットのここが心配だから、この商品は使えそう」と言って、ご購入していただいたこともあります。
もうひとつの理由は、新規顧客に対してうかつに声をかけると、「セールスに熱心な動物病院」と思われて敬遠されてしまうおそれがあるのです。アパレルショップや美容院で経験がある人も多いかと思いますが、こちらが望んでいる商品やサービスだけではなく、しきりに他の商品をアピールしてくる店員がいますよね。そのようなショップに対して「次行ったら、また誘われるのではないか」と拒否反応が出て、足が遠のいてしまう人は珍しくありません。
動物病院もこれと全く同じことが言えます。そのため、初回は極力商品の宣伝や売り込みを避けて、飼い主さんが希望するサービスや治療に注力をするようにしています。
リピーターのプロフィールは細かく把握しておく
頻繁な新規顧客獲得キャンペーンを打ち出すのであれば、私はその時間を使ってリピーターの見直しをすべきと考えています。電子カルテで顧客情報を呼び出すのは簡単です。しかし、飼い主さんの名前を聞いただけで、どのようなペットを飼っているのか、前回の診療内容は何だったのか、パッと思い出せる獣医師はそう多くはないかと思います。
それもそのはずです。たとえ1日に一人、一匹しか来なかったとしても、月に20日開院していれば20名、1年経てば単純計算で240名の飼い主さんを対応したことになります。240名の顧客をすべて暗記するのはそう容易ではありません。
しかし、リピーターが訪れたときに、獣医師が飼い主さんの名前や飼っているペットのことをまったく思い出せないようでは、がっかりされてしまいます。「自分は、たくさんいる患者のうちの一人なんだな」と感じて、寂しく思う人は意外と多いものです。プロフィールをすべて把握するのは至難の業ですが、飼い主さんの名前とペットの情報は最低限頭に入れておくようにしましょう。飼い主さんの情報を記憶していれば、次の来院時にふとした会話が弾んで、より自分の動物病院のファンになってくれるかもしれません。 リピーターとの付き合い方については以下の記事を参考にしてください。
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リテンションマーケティングの実施方法
既存顧客維持活動のことを、専門用語でリテンションマーケティングと呼びます。リピーターを大切にするためには、診察中のコミュニケーションはもちろんのことを、既存顧客向けのキャンペーンを打ってみると良いでしょう。
例えば私が経営する動物病院では、「3回セット」というものを販売しています。これは初回来院時に次回の予約をすると、次回の診察料が30%オフになるというもの。最初に3回分の診察料をいただいているので、飼い主さんは次回も必ず来てくれますし、リピーターの獲得になります。値段も安くなるので、飼い主さんにとってのメリットもあります。
このように、ただ「次回来院していただければ、安くします」「この商品はお値打ちです」など、単純な売り文句ではなく、少しひねっているのがこのキャンペーンのポイントです。他にも「人数限定」「個数限定」など、限定品に惹かれる人も一定数存在しますので、リピーター限定キャンペーンを打ち出すのも良いでしょう。
飼い主さんの離反が起きているなと感じた時には、ぜひ以下の記事も参考にしてください。
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リピーターがたくさんいる動物病院は信頼性が高い証であり、リピーターによる口コミが広がることで、新しい飼い主さんが来院してくれるかもしれません。自分の動物病院を応援してくれるリピーターを作ることが新規獲得につながると考え、新規だけではなくリピーターにもぜひ意識を向けてみてください。