例えばフランス料理店でコース料理を頼む時、ABCと3つの複数のコースが設定されていることがありますよね。その際に最もリーズナブルなコースと、中級、最上級のコースの違いがわかるように明記されている場合がほとんどです。
動物病院の商品やサービスでも、ランクをつけて販売されることがありますが、その時には違いをわかりやすく明記するようにしてください。
今回は商品のランクを明確化することの大切さについて説明したいと思います。
なぜ3つのコースが理想的?「松竹梅の法則」とは
「松竹梅」だけではなく、「S・M・L」や「ライト・スタンダード・プレミアム」など、コースを3つに分けている企業をよく見かけます。
その際、顧客は無意識のうちに真ん中の選択肢を選んでしまいがちな心理は「松竹梅の法則」または「ゴルディロックス効果」と呼ばれています。
3つのコースを設定することで、料金や内容を比較しやすくなり、無難なものを選択できるようになるのです。ただし、それも顧客を満足させられる商品・サービスのみに有効です。ただなんとなくで設定するのではなく、差を明確にして飼い主さんに提示するようにしましょう。
松竹梅の法則については、以下の記事もぜひ参考にしてください。
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ペットホテルのコース設定事例
私が経営する動物病院ではペットホテルのサービスを提供しています。そのコースはただペットを預かるだけではありません。エコノミーコースとスタンダードコース、そしてデラックスコースの3種類のコースを設け、24時間体制でお預かりしています。(ただし猫はエコノミーコースのみ。)
エコノミーコースを申し込まれた飼い主さんのペットには、お預かりしている間に5分の散歩を一回行っています。スタンダードコースを申し込まれた飼い主さんのペットには一回10分の散歩を2回と、獣医師による健康チェックをおつけしています。最後のデラックスコースには一回に10分の散歩を2回と、ブログによるお知らせ、また獣医師による健康チェックをお付けしています。
この内容はホームページからも分かりやすく確認ができ、それぞれの料金差についても納得いただいております。コースの違いを明確化しておくことで、飼い主さんは比較しやすくなり、「これだけの価格差でこんなに充実したサービスが受けられるなら、高いコースにしようかな」と考えてもらえるかもしれません。
コースを設定する際には、ぜひ下記の記事も参考にしてください。
まずはリーズナブルなコース設定で集客力を高める
動物病院の経営を改善していくのであれば、できるだけ高いコースを積極的に販売したいものですよね。そのほうが確実に売上高も収益も上がるはずです。しかし、初めて購入する人は、まずはお試し感覚でリーズナブルなコースを選ぶ傾向にあります。それはそれでごく自然な感情かと思います。
リーズナブルなコースでも、その質に満足いただければ次回はワンランクまたは2ランク上のサービスを選ぼうという気持ちになってくれるでしょう。そのため、リーズナブルなコースだからといってサービスに手を抜くのではなく、最大限満足してもらえるような商品やサービスを提供する心構えが必要です。最安値のコースをつくるときには、必要最低限のサービスに絞って徹底的に価格を抑えるのもひとつの手ですし、採算度外視で極力安く設定しても良いかもしれません。
最上級のコースには他の病院にはあまり見られないサービスをつける
よほど経済的に余裕がある人でない限り、リーズナブルなコース、またはそれより少しだけ質の高いコースで満足してしまう人がほとんどです。しかし、収益性をあげるためには、デラックスコースに申し込んでもらえるような工夫を考えておくことをおすすめします。
デラックスコースを考えるときには、わかりやすく、プレミアム感のあるサービスをつけるように心がけてください。たとえば高価なシャンプーを販売する場合、「このシャンプーには○○の成分が含まれていて…」と説明しても、すぐにその効果を実感できないため、「今使っているもので十分だから」と断られてしまう可能性があります。
それであれば「デラックスシャンプーを使ったトリミングでマッサージ1回無料」など、他の動物病院ではあまり見られない、特別なサービスをつけると良いでしょう。「ちょっと高いけれど、ここの動物病院でしか受けられないサービスだから」と言って、申し込んでくれるかもしれません。また、期間限定、本数限定などのうたい文句は定番ですが、プレミア感を演出できて有効です。
このときにひとつ気を付けて欲しいのが、特別扱いしている飼い主さんにきちんと「特別扱いしてもらっている」と自覚していただくことです。せっかくプレミア感を出しても、気づいてもらえなければ、努力も水泡に帰してしまうためです。
大切なあなたの飼い主さんを特別待遇していることに気づいてもらうためには、下記の記事が参考になります。
関連記事:優良顧客の飼い主さんにはVIP待遇と気づかせるようにしよう
スタンダードコースとエコノミーコースの違いを明確にする
デラックスコースは明らかにサービスが充実していて分かりやすいものですが、スタンダードコースとエコノミーコースはさほど差が感じられないということも。「それならエコノミーコースでいいや」と飼い主さんに思わせてしまうと、売上が伸びず、収益が上がっていきません。
そのようなことがないように、スタンダードコースとエコノミーコースには決定的な差をつけましょう。先ほどのペットホテルの例でいうと、エコノミーコースには「犬の散歩は1日5分」と、明らかに短い散歩時間を設定しています。「こんなに短時間であれば、もう少しランクを上げたい」と、飼い主さんに考えてもらうことを目的としています。エコノミーコースは「安いけど、明らかに物足りない」と思われるような内容に設定し、スタンダードコースは「これくらいなら大丈夫かな」と思われる内容にしてください。
飼い主さんに購入していただきたい一心で、ついメリットばかりを強調したくなりますが、マイナス面を伝えることも重要です。安かろう悪かろうは決して褒められたことではありませんが、安さゆえのデメリットはきちんと伝えて、上のランクにさりげなく誘導しましょう。下記の記事をぜひ参考にしてください。
コースメニューは3段階のみならず、複雑なものになると5段階や7段階のなかから選ばなければならないということも。動物病院の場合、ペットの大きさによってサービスの料金が変わるため、内容を分かりやすくしておく必要があります。比較表や図表を作って、飼い主さんに違いを理解してもらうように心がけてください。エコノミープランとデラックスプランの違いを明確にするとデラックスプランの良さが強調され、申し込みに誘導しやすくなります。