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前回の記事では、既存の飼い主さんとの関係を維持し、必要な受診や健康管理につなげるリテンションマーケティングについて紹介しました。

継続して来院してもらうために大切なのは、一部の飼い主さんを特別扱いすることではありません。日頃の診療や情報提供を通じて、「自分と動物のことを理解してくれている」「困ったときに相談できる」と感じてもらうことです。

動物病院への信頼や愛着が高く、今後もかかりつけとして利用したいと考えてくれる飼い主さんは、マーケティングの分野ではロイヤルカスタマーと呼ばれます。今回は、飼い主さんとの信頼関係を深め、長く選ばれる動物病院になるための取り組みを紹介します。

動物病院のロイヤルカスタマーとは

ホワイトステージ

ロイヤルカスタマーとは、商品やサービスを繰り返し利用するだけでなく、企業や店舗そのものに信頼や愛着を持っている顧客を指します。

動物病院の場合、単に来院回数や診療費が多い飼い主さんが、必ずしもロイヤルカスタマーであるとは限りません。慢性疾患の治療など、必要に迫られて頻繁に通院していることもあるためです。

一方、来院頻度が高くなくても、動物の健康に不安を感じたときに相談したり、家族や知人に病院を紹介したりする飼い主さんもいます。

そのため、利用金額や来院回数だけで飼い主さんを評価するのではなく、「今後も相談したいと思っているか」「自院の診療方針を信頼しているか」という関係性を見ることが大切です。

大切にされていると感じてもらうことが重要

飼い主さんに信頼してもらうために必要なのは、「ほかの人より優遇されている」と感じてもらうことではありません。

大切なのは、一頭一頭の状態やこれまでの経過を理解し、その飼い主さんに必要な情報や支援を提供することです。

例えば、前回相談された悩みを覚えている、以前の検査結果と比較して説明する、動物の性格に合わせて診療方法を工夫するといった対応が挙げられます。

「前回気にされていた症状は、その後いかがですか」「以前より体重が安定してきましたね」など、過去の診療を踏まえた声かけをすることで、飼い主さんは自分と動物のことを大切に考えてもらえていると感じやすくなります。

こうした小さな体験の積み重ねが、病院への信頼や安心感につながります。飼い主さんと接するときの姿勢については以下で触れていますので、一緒にご確認ください。

関連記事:飼い主さんから信頼される獣医師になるためには話し方が重要!

飼い主さんとの信頼を深める3つの方法

ソファに横たわっている茶色の犬の選択的焦点

それでは、実際に飼い主さんとの距離はどのように縮めていけばよいのでしょうか。おすすめの方法を3つ紹介しますので、以下の記事と合わせて参考にしてください。

関連記事:ペーシングで気持ちの良いコミュニケーションを図ろう

過去の診療内容や相談を踏まえて対応する

継続して来院している飼い主さんに対しては、これまでの診療内容や相談を確認したうえで対応しましょう。

飼い主さんが毎回同じ説明をしなくてもよい環境を整えることで、「自分のことを理解してくれている」という安心感を持ってもらえます。

ただし、獣医師や一部のスタッフだけが情報を把握している状態では、担当者によって対応に差が出てしまいます。電子カルテや申し送りを活用し、診療上重要な情報や飼い主さんの希望を院内で共有することが大切です。

動物の状態に合った情報を届ける

飼い主さんごとに必要な情報は異なります。子犬や子猫を迎えたばかりの人には予防やしつけに関する情報、シニア期の動物を飼っている人には健康診断や日常生活で注意したい変化を案内するとよいでしょう。

慢性疾患の治療を続けている場合は、再診時期や投薬中に確認したい症状を伝えることで、治療の中断を防ぎやすくなります。

一律に同じ内容を配信するのではなく、動物の年齢や健康状態、受診履歴に合わせて必要な情報を届けることが、信頼関係の維持につながります。

感謝の気持ちを言葉で伝える

長く通ってくださる飼い主さんには、感謝の気持ちを言葉で伝えることも大切です。

特別なサービスや割引を用意しなくても、「いつも大切なご家族をお任せいただき、ありがとうございます」と伝えるだけで、病院の姿勢は十分に伝わります。

ただし、「長く通っているから特別です」「利用額が多いので優遇します」といった伝え方は避けましょう。飼い主さんが求めているのは、金額や回数による評価ではなく、自分と動物に誠実に向き合ってもらえることです。

一人ひとりに合わせても診療の公平性は守る

飼い主さんに合わせた対応と、特定の人へのえこひいきは異なります。

診療の質や説明の丁寧さ、緊急時の対応は、来院回数や利用金額にかかわらず公平に提供しなければなりません。診察の順番も、常連かどうかではなく、予約状況や動物の緊急性に基づいて判断する必要があります。

一方で、慢性疾患がある、手術後である、定期検査が必要であるといったケースには、状態に応じた個別のフォローが必要です。誰にどのような連絡や支援を行うのか、診療上の必要性に基づいた基準を院内で決めておけば、スタッフによる対応のばらつきも防げます。

VIP待遇ではなく信頼されるかかりつけを目指そう

動物病院のロイヤルカスタマーを増やすために、一部の飼い主さんをVIPとして扱う必要はありません。大切なのは、これまでの診療経過を理解し、動物の状態に合った情報を届け、日頃の感謝を丁寧に伝えることです。

飼い主さんに「自分は特別扱いされている」と思ってもらうのではなく、「この病院なら自分と動物のことを理解してくれる」と感じてもらうことを目指しましょう。

一頭一頭に誠実に向き合う姿勢を積み重ねることが、かかりつけとして選ばれ続ける動物病院づくりにつながっていくはずです。

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