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あなたは試食や試着を積極的にするほうですか。私はどちらかと言うと好きではありません。「店員さんとの会話が煩わしい」「服の脱ぎ着をするのが面倒くさい」など、いくつか理由がありますが、最も大きいのは「食べたり、着たりしてしまった以上、購入しなければ店員さんにバツが悪い」という気持ちになってしまうからです。おそらく同じ気持ちになったことがある人は、多いのではないでしょうか。

 

この心理は、人間としてまったく珍しいものではありません。他者から施しを受けた以上、自分も何らかのお返しをしないといけないと思う心理は「返報性の原理」と呼ばれています。少々厄介な人間心理ですが、これをうまく応用している経営者も少なくありません。返報性の原理はどのようにして、動物病院経営に活かすことができるのでしょうか。今回は真似したくなるテクニックを紹介していきたいと思います。

動物病院で返報性の原理を応用するには

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飼い主さんに、「何かしらのサービスを受けたり、購入したりしなければ申し訳ない」という気持ちになってもらうためには、先に何かしらのサービスをお渡しするのがもっとも手っ取り早い方法です。たとえば無料サンプルを配布したり、いつもの診療にプラスアルファをしてサービスを提供したりしてみましょう。この時には、一度採算を度外視することを心がけてください。「見返りが欲しいから、無料にしてあげている」という下心が透けて見えると、飼い主さんを逃してしまうことになります。あくまでさりげなく、恩着せがましくないように渡すのがコツです。

先にサービスを施すことで、飼い主さんはあなたの動物病院を「良心的な動物病院」と判断してくれるかもしれません。リピーターの獲得にもつながっていくでしょう。無料サンプルや無料オファーの質が良ければ良いほど飼い主さんのリピーター化を期待できます。しかし、あまりに高額なサンプルを用意すると、かえって敬遠させてしまうので、この辺りのバランスには気を配りましょう。

無料サンプル以外でおすすめの方法

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無料サンプルや無料オファーを用意するとなると、少なからず初期費用が発生します。極力イニシャルコストを抑えたいということであれば、全額返金保証など、無料でできるサービスを採用してみてはいかがでしょうか。エステサロンでよく見かける全額返金保証ですが、実際のところ、良質なサービスを提供してさえいれば、返金保証を求められることはほとんどないと聞いたことがあります。イニシャルコストをかけずに、お客さんに恩を売ることができる手段といえます。

経営戦略については、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:売上よりも利益に注目して経営戦略を練ろう

ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックの応用を

返報性の原理の発生には、いくつかのシチュエーションが考えられます。例えば相手から好意を向けられたら、こちらも好意で返そうとしますし、反対に敵意を向けられたら、こちらも敵意を返したくなるものです。そして、相手が譲歩してくれたのであれば、こちらも譲歩しなければならないと思う気持ちも自然といえます。この心理を利用したのが、ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックと呼ばれる交渉方法です。

 

例えば相手が最初1万円で販売していたものを7,000円に値下げしてくれたら、「せっかく値下げしてくれたのだから、ちょっと高いけれど買おうかな」という気持ちになることがありますよね。これが典型的なドア・イン・ザ・フェイス・テクニックです。動物病院でサービスを提供する場合、「定価3,000円のペットフードを1,000円に値下げしました」などと告知しておくと、「せっかく下げてくれたのだから、この機会に買ってみよう」と思った飼い主さんが購入してくれるかもしれません 。

心理効果を利用した施策については、以下の記事でも触れています。ぜひ参考にしてください。

関連記事:さまざまな心理効果を駆使して飼い主さんの購買意欲をそそろう

返報性の原理と一貫性の法則を併用しよう

返報性の原理としばしば比較されるものとして、一貫性の法則があることをご存知でしょうか。一貫性の法則とは、一度購入してしまったからには、最後まで付き合わないといけないと感じてしまう心理のことです。

つまらないと思っているドラマでも、「1話から見ているから」と、最後まで見てしまった経験はありませんか。また、好きな歌手の新曲を良いと思わなくても、「これまで新曲が出るたびに買っていたから、今回も買おう」と思うこともありますよね。これらは一貫性の法則が働いていることになります。この心理をうまく利用し、返報性の原理がうまくいったら次に一貫性の法則を利用して、リピーターの獲得に努めましょう。ペットアイテムをシリーズ化して、定期的にアピールしていくと、飼い主さんも毎回購入するのが当たり前と感じるようになり、継続的に購入してもらえるかもしれません。

返報性の原理の悪用には要注意

顧客との良好な関係を築くために有効な一方で、この心理を悪用すると、顧客からの信頼を失い、長期的な関係をも台無しにしてしまう危険性があることを強く認識しておく必要があります。「無料」や「おまけ」といった言葉は魅力的ですが、その提供の仕方によっては、飼い主さんに不快感を与えたり、不信感を抱かせたりする可能性があります。ここでは、返報性の原理を悪用する際に陥りやすい落とし穴と、その注意点について解説します。

①過度な期待を抱かせない

無料サンプルやサービスを提供する際に、その価値を誇大に伝えすぎると、飼い主さんは過度な期待を抱いてしまいます。もし、実際に提供されたものが期待を下回る品質だった場合、「結局は購入させるための手口だったのか」と感じ、強い失望感を覚えるでしょう。これは、一時的な売上にはつながったとしても、長期的な信頼関係を大きく損なう原因となります。

無料提供は、あくまで「お試し」や「ちょっとしたおまけ」という位置づけに留め、診療サービスそのもので勝負する姿勢が重要です。

②見返りを求める露骨な姿勢にも注意

「こんなに無料でサービスしてあげたのだから、次は必ず購入してくださいね」といった露骨に見返りを求める態度は、飼い主さんに非常に不快感を与えます。「親切心からの提供ではなく、あくまで購入を誘導するための手段だったのか」と感じられ、返報性の原理が持つポジティブな効果を打ち消してしまうでしょう。無料提供は、恩着せがましい態度を避け、さりげなく行うことが肝心です。

③無料の質の低さとプロ意識の欠如

無料サンプルやサービスがあまりにも低品質である場合、動物病院全体の質の低さを疑われる可能性があります。「無料だからこんなものか」と思われてしまっては、本命の診療や商品に対する信頼も揺らいでしまいます。無料提供であっても、一定の品質を保ち、動物病院としての質の高さを示すものであるべきです。

返報性の原理は、先に与えることで感謝や好意を引き出し、動物病院経営に応用できる心理テクニックです。無料サンプルや付加サービスは有効ですが、過度な期待、見返りの強要、低品質な提供は信頼を損ねます。さりげない提供とサービスの質を重視し、長期的な視点で飼い主さんとの良好な関係を築くことが重要です。悪用を避け、倫理的な活用を心がけましょう。

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