今回のブログも前回に引き続き、目標の設定方法についてお話ししたいと思います。
前回は、スタッフ自身が「達成したい」と思える目標を設定することが大切である一方、大きすぎる目標は挫折につながりやすいとお伝えしました。
しかし、あまりに簡単な目標では達成感を得にくく、スキルアップや業務改善につながらないこともあります。
そこで考えたいのが、現在より一段高い水準を目指す「ストレッチ目標」です。
ストレッチ目標は、ただ高い数字を掲げるものではありません。現在のスキルや業務状況を踏まえながら、努力や工夫によって成長を目指すための目標です。
今回は、動物病院の生産性向上やスタッフ育成に役立つ、ストレッチ目標の考え方について紹介します。
なお、目標の設定方法については以下の記事でも説明していますので、ぜひ参考にしてください。
目標は簡単すぎても難しすぎても続かない
目標を設定するときは、難易度のバランスが重要です。
簡単すぎる目標では、達成できても大きな成長にはつながりにくいでしょう。一方、現実とかけ離れた目標を設定すると、「どうせ達成できない」と感じ、モチベーションを失ってしまうこともあります。
心理学では、達成したいという気持ちと、失敗を避けたいという気持ちの両方が行動に影響すると考えられています。
そのため、「成功確率は○%が理想」と一律に決めるのではなく、本人の経験やスキルを踏まえ、少し努力や工夫が必要な目標を設定することが大切です。
最初から高い目標に挑戦することが難しいスタッフであれば、達成しやすい目標から始め、成功体験を積みながら少しずつ難易度を上げていく方法もあります。
ストレッチ目標をスタッフと考えてみよう
ストレッチ目標とは、現在の仕事をそのまま続けるだけでは簡単に達成できない、少し挑戦的な目標を指します。重要なのは、経営者が一方的に高い数字を設定することではありません。
例えば、「診察件数を今より30%増やす」といった目標だけを掲げると、スタッフの負担が増えたり、説明時間が短くなったりする可能性があります。
動物病院であれば、
- 会計までの待ち時間を短縮する
- 受付から診察までの流れを改善する
- 情報共有の漏れを減らす
- 新人スタッフが担当できる業務を増やす
- 電話対応や予約業務を効率化する
なども、生産性向上につながる立派な目標です。生産性とは、単に診察件数を増やすことではありません。限られた時間や人員の中で、診療の質を保ちながら業務をより円滑に進めることと考えるとよいでしょう。
まずは一人ひとりのスキルを見極める
このストレッチ目標を立てるためには、スタッフ一人ひとりのスキルを明確化し、それにそった目標を設定しなければなりません。高すぎる目標はモチベーションを失わせてしまいますし、すでに達成している目標を設定するのもおかしなものです。
そのため、動物病院でも定期的にスタッフとの1on1ミーティングを行い、都度目標と進捗を確認しましょう。そのスタッフが自分の強み・弱みを理解していないようであれば一緒に洗い出し、お互いが納得できる目標を決めるようにしてください。
フォローを忘れないこと
ミーティングでそのスタッフに合う目標を設定できたとしても、必ず達成するとは限りません。成功確率50%前後の目標を設定しているのであれば、失敗に終わってしまう可能性も十分に考えられます。もしスタッフが壁に突き当たって伸び悩んでいるのであれば、一緒に改善案を考えてあげるようにしてください。成功確率が低めな目標であればあるほど、まわりのサポートは必須です。
大切なのは、目標そのものを守り抜くことではなく、目標を通して業務改善やスタッフの成長につなげることです。
なお、目標の見直し方については以下の記事がきっと参考になるでしょう。
数字だけを追わない目標設定も大切
目標設定というと、売上や診察件数など数字で表しやすいものに目が向きがちです。
もちろん数値目標は進捗を確認しやすいというメリットがありますが、数字だけを追うと本来大切にしたいものを見失う可能性があります。
例えば、診察件数を増やせても、待ち時間が長くなったり、説明不足が増えたりすれば、病院全体として良い結果とは言えません。
そのため、
- 待ち時間
- ミスや確認漏れの件数
- スタッフが習得した業務
- 院内での情報共有
- 飼い主さんへの説明やフォロー
など、複数の視点から目標を考えてみましょう。
目標を達成する過程で診療の質や働きやすさが損なわれていないかを確認することも重要です。
HARDゴールを設定する

目標設定を考える際には、「HARDゴール」というフレームワークも参考になります。
HARDとは、以下の頭文字を取ったものです。
H(Heartfelt):心から達成したいと思える目標か
A(Animated):達成した状態を具体的にイメージできるか
R(Required):その目標が自分や組織にとって必要なものか
D(Difficult):簡単ではなく、成長につながる挑戦的な目標か
単に「数字を達成する」だけではなく、なぜその目標に取り組むのかを考えることで、スタッフ本人も目的を理解しやすくなります。
すべての目標に当てはめる必要はありませんが、モチベーションを保ちながら挑戦するための考え方の一つとして活用できるでしょう。
フレームワークについては、以下の記事でもいくつか紹介していますので、あわせてお読みください。
関連記事:動物病院経営者が最優先事項を見極めるための4つの方法
目標は成長を支えるためのもの
目標の設定方法によって、動物病院の業務効率やスタッフのモチベーションは変わります。
しかし、高い目標を掲げれば必ず生産性が向上するわけではありません。
まず現在の状況を把握し、スタッフ本人と話し合いながら少し挑戦的な目標を決め、必要な支援を行いましょう。さらに、進捗や負担を確認しながら必要に応じて調整することも大切です。
ストレッチ目標は、スタッフを追い込むためのものではなく、一人ひとりの成長と動物病院全体の業務改善を後押しするためのものです。
診療の質や働きやすさを守りながら、それぞれが一歩成長できる目標を考えてみてはいかがでしょうか。
最後に、スタッフの教育で役に立つと思われる記事をひとつご紹介いたします。是非参考にしてください。
