あなたは「1対5の法則」というものをご存知でしょうか。これはマーケティングの世界では非常に有名な法則で、新規顧客を1件獲得するのは、既存顧客5件を復活させるのと同様の労力がかかるというものです。新規顧客の獲得は大変喜ばしいことですが、その分時間もコストもかかります。それであれば、一度来院していただいたものの、しばらく姿を見せていない飼い主さんにアプローチしたほうが効率的と言えます。今回は既存顧客に販売促進活動を行う「リテンションマーケティング」の大切さと、方法について紹介したいと思います。
マーケティングの大切さと方法については、以下の記事でも触れていますが、今回はリテンションマーケティングを中心に取り上げていきます。
パレートの法則の観点からもリピーターは重要
私のブログでも何回か紹介しているもののなかに、「パレートの法則」があります。これは売上の80%は20%の顧客が作り出しているという経験則です。働きアリのなかでも、本当にしっかりと働いているのはわずか2割という考え方と似ていますね。
中長期的に商品を購入してくださるリピーターは、2割の中に入る優良顧客の素質を備えているものであり、逃すのは大変惜しいものです。一人でも多くの優良顧客を育てられるように、定期的にフォローを入れていきましょう。
リテンションマーケティングとは
リテンションマーケティングとは、既存顧客との関係を維持していくためのマーケティング活動のことです。定期的にダイレクトメールを送信して来院を促したり、広告を出稿したりするのは、代表的なリテンションマーケティングの手法と言えます。
ここで重要なのは、すでに他の動物病院に通っている、いわゆる「離反顧客」ではなく、既存顧客と離反顧客のグレーゾーンにいる飼い主さんにアピールすることです。すでに自分の動物病院から離れ、他の動物病院を見つけてしまった離反顧客は、ちょっとやそっとの努力で取り戻せるものではありません。そのため、「最近姿を見ていないけど、どうしているのかわからない」という飼い主さんにアプローチをかけることが重要となってくるのです。
グレーゾーンにいる飼い主さんの見分け方は難しいものですが、ひとつの基準として1年以内に来院していないかどうかを基準に判断しましょう。1年前までは来てくれていた飼い主さんであれば、また自分の動物病院に来てもらえるようになるかもしれません。リテンションマーケティングについては、こちらの記事も参考になりますよ。ぜひ読んでみてください。
関連記事:優良顧客は特別扱いをしてリピーターになってもらおう
まずは離反しかけている理由を考える
1年以上音沙汰がない飼い主さんは、前回の来院時に何らかの理由があってあなたの動物病院に足を運ばなくなってしまった可能性が考えられます。また、他の要因で他院に移ってしまったという可能性も考えられます。
いずれにしても、闇雲に声をかけるだけでは、反応を得られないおそれがあるでしょう。飼い主さんの心に響くように、なぜ離反しているのか理由を考え、再度足を運んでくれそうな飼い主さんから声を掛けていくことをおすすめします。
あなたの動物病院の規模にもよりますが、1年以上来院がない飼い主さんは、決して少なくありません。すべての飼い主さんに手が回らない時には、優先順位を付けて効率的なアプローチを行いましょう。
1年以上取引のなかった飼い主さんへのセールス手法
1年以上取引がなかった飼い主さんは、もしかしたら動物病院に通うこと自体を忘れてしまっているかもしれません。予防接種を終え、飼っているペットに異常がなければ、動物病院には行かない、という飼い主さんは少なくないためです。しかし、獣医師の立場からすると、少なくとも1年に一度は定期検診を受けるなどして、ペットの健康状態に気を配るべきだと考えます。
ですので、定期検診の受診を勧めるダイレクトメールを送ると、親切に感じてもらえるかもしれません。セールスの方法ですが、最近は電話をかけても出ない方が増えています。そのため、電話よりもダイレクトメールやチラシを送ったほうが確実に見てもらえます。
離反期間が短いうちにアプローチするのが大切
離反期間は短いうちにアプローチしたほうが、飼い主さんの記憶にも残っていて、良いと言われています。1年以上はあくまでも目安であり、「この飼い主さん、最近見ないけどどうしているのかな?」と気になるようであれば、すぐにアプローチしてみましょう。
もし理由があってあなたの動物病院から離れているのであれば、その理由を聞けるかもしれません。それを知ることで改善策を立てられるようになります。
一度で諦めるのではなく何度か連絡を取ってみる
たった一度ダイレクトメール送っただけで、飼い主さんが気にかけてくれるとは限りません。何らかの事情で、しっかり中身を確認してもらっていないおそれもあります。そのため、しばらくは定期的にダイレクトメールを送り続けてみましょう。半年から1年程度続けることで、何かしらの変化があるかもしれません。セールスにはある程度の根気も必要です。
ただし、いつも同じ内容のダイレクトメールでは、インパクトがありません。ダイレクトメールを送る際には、その都度内容を変えるようにしましょう。新商品の紹介や季節ごとに必要な予防接種の案内、またお得なキャンペーンなど、都度中身をアレンジするようにしてください。
また、ダイレクトメールの送り方については、こちらの記事でも紹介しています。
関連記事:動物病院がDM(ダイレクトメール)を送るときには読んでもらえる工夫がマスト
リテンションマーケティングは顧客管理にも有効
リテンションマーケティングを実施して、既存顧客を掘り起こすことができれば成功ですが、必ずしもうまくいくと限りません。しかし、想定以上の成果を得られなくても、がっかりする必要はないと私は考えています。リテンションマーケティングをすることで、セールス先の飼い主さんが、動物病院自体を現在利用していない休眠顧客なのか、それとも他の動物病院を選んでしまった離反顧客なのかを判断できるようになるためです。また、ダイレクトメールを郵送したものの、住所不定で返って来ることがあれば、その飼い主さんの情報を最新のものに更新できます。顧客整理をする意味でも、是非リテンションマーケティングを実施してみてください。
休眠顧客にアプローチする大切さについては、こちらの記事でも触れています。具体的な方法を知ることができますよ。
関連記事:動物病院の休眠顧客はアプローチを変えて掘り起こそう
マーケティング会社を利用してより良いセールスを
ダイレクトメールを作成したり、顧客情報を更新したりするには、手間がかかります。普段からたくさんの飼い主さんが訪れている動物病院であれば、「とてもセールスをかけている余裕がない」ということもあるでしょう。その場合はマーケティング会社やセールス代行会社への依頼をおすすめします。プロの目線から、有効なアプローチを提案してもらえるでしょう。もちろん費用は発生しますが、セールスだけではなく顧客リストも更新してもらえるため、頼んで損はありません。顧客リストが刷新されればすっきりしますし、効率的なセールスが実現されます。ぜひ検討してみてください。