動物の診療サービスやペットアイテム販売を行う動物病院を経営していくなかでは、価格設定に悩まされることがあるでしょう。
高く設定しすぎると飼い主さんは離れてしまいますし、極端に安くしても利益が生まれにくくなります。
また、飼い主さんから交渉されて、値引きすべきかどうかで迷った経験がある方もいるかと思います。
結論から言えば、値引きの決行は状況によって変わるもので、良いものとも悪いものとも言えません。
そのなかで損をしたり、飼い主さんから反感を買ってしまったりしないように、上手な価格設定の方法と交渉について今回は考えてみたいと思います。
安易な値引きは絶対にNG
すでに決まっている定価や料金から、安易に値引きをする行為はおすすめできません。その理由はさまざまですが、第一には収益が下がってしまうことにあります。収益が下がれば当然のことながら経営状態も厳しくなり、スタッフのモチベーションも上がりません。
また、一度でも値下げ交渉に応じてしまうと、その飼い主さんは次回以降も値下げを求めてくる可能性大です。値下げが常習化してしまえば、さらに経営は苦しくなります。そして値下げをしなかった飼い主さんに、値下げした飼い主さんの存在を知られてしまうと、評判は一気に下がるでしょう。すべての飼い主さんにフェアに接していないと捉えられるためです。そのため、値引き交渉は極力避けるようにしましょう。
値引きしても良いタイミング
特定の飼い主さんに対してのみ値引きをしたり、頻繁に値引きキャンペーンを開催したりするのはおすすめできません。しかし、タイミングによっては値引きが功を奏して、動物病院の経営が改善される可能性があります。
例えば季節が変わるタイミングで予防接種キャンペーンを打ち出し、お得な料金設定をすると、飼い主さんは足を運びやすくなるのでおすすめです。多少値引きをしても経営に差し支えないどころか、かえって売上が上がる可能性があります。
また、次回の来院につなげるために、初回の診療費を安く設定したり、お得な回数券を販売したりする方法も有効です。私が経営する動物病院でも予防接種のキャンペーンを実施していて、回数券を購入した飼い主さんには2回目以降の予防接種料金を何割かオフにしています。この回数券制度は非常に評判がよく、当院の看板キャンペーンとなっているほどです。よろしければ、ぜひ参考にしてください。
ペットフードなど、賞味期限が近づいているものや、棚の上でホコリをかぶって劣化したアイテムをディスカウント価格で販売するのも良いでしょう。新商品が出るタイミングで旧商品の価格を下げると手に取ってもらいやすくなります。飼い主さんがその商品を気に入ってくだされば、新商品も次回以降に購入してもらえるかもしれません。「良い商品を取り扱っている」と、動物病院自体の良い宣伝にもなるでしょう。
決めておきたい値引きのルール
ここまででお話しした通り、値引きの実行はケースバイケースです。「ここは値引きすべき」と思ったタイミングで実行するのがベストですが、売上の低調ぶりが気になると、経営者は安易な値引きに走りがちです。そのようなことがないように、値引きのルールを院内で決めておくようにしましょう。
まず、値引きは必ず飼い主さんが購入を決める前にしておくこと。飼い主さんが購入を決めた後で、値引きをするのは原則NGです。値引きを求められたケースを想定して、限度額を決めておきましょう。飼い主さんに言われるまま値引きをしないようにしてください。
また、予防接種以外で、ペットたちの生命に関わるような大きな診療や施術に対しては、値引きをしないほうがベターです。まとまったお金をいただいているからこそ、より慎重に治療をしなければならないという責任感を持つことができます。飼い主さんとしても、お金をきちんと払っていることで、安心することができます。
そしてもうひとつ大切な点は、飼い主さんによって値引き交渉の態度を変えないこと。たとえ常連の飼い主さんであっても、基本的には新規の飼い主さんと同じ価格を請求するようにしてください。
値引き交渉のかわし方
事あるごとに値引きをお願いしてくる飼い主さんもいますが、応じていては他の飼い主さんへの心証が悪くなります。決して安易に応じるのではなく、なぜその料金を設定しているのか、内訳を細かく説明して断るようにしましょう。
また、どうしても値引きをしなければならない場合は、提供するサービス内容を削って納得していただく手もあります。ぜひ提案してみてください。
値引きされた飼い主さんは喜ぶものですが、動物病院や値引きをしてもらえなかった飼い主さんは決して良い気持ちになりません。みんなが気持ちよくなるように、料金の設定と交渉術を身につけましょう。