自分で得た収入をもとに、商品やサービスを購入する。いわゆる、「消費行動」は決して悪いものではなく、生活に必要な行動です。それにも関わらず、少し高額な買い物をしただけで、罪悪感を覚えるという人は少なくありません。特にこの心理は女性に多いと言われています。
「もっと安いものがあったかもしれないのに」「そんなに必要はなかったかもしれない」という気持ちから、このような罪悪感が芽生えてしまうのだと考えています。動物病院に来る飼い主さんが消費への罪悪感を持っていると、せっかく診療サービスや商品を勧めてもなかなか購入にはいたりません。本当に必要だと思ったサービスや商品には購入導線を敷いて、セールストークで誘導してあげましょう。今回は購入に対して後ろ向きな飼い主さんの背中を押すセールストークについて紹介します。
飼い主さんが購入をためらいがちな理由
まずは、飼い主さんが購入をためらう理由を知るところから始めます。飼い主さんが買い物に罪悪感を覚えるとき、
- 「もっと安いものがあったかもしれない」
- 「自分の身の丈に合わない高価なものを選んでしまった」
- 「他の動物病院のほうが良かったかもしれない」
- 「その分、貯金に回せば良かった」
などと考えがちです。「消費=悪」という考えが意識の根底にあるようです。
個人の価値観はそう簡単に変えられるものではありません。飼い主さんの気持ちを無視して、「本当に良い商品です」「少し高いですが、買っても絶対に後悔はありません」
「今がチャンスです」などと強引に勧めたところで、売上アップは期待できないでしょう。後ろ向きになっている飼い主さんには、むしろ商品の魅力よりも、今購入すべき理由を与えてあげることが重要です。
建前の理由があれば誰でも購入しやすくなる
たとえば、少々高額で飼い主さんが購入をためらっている商品であれば、
「この商品を使えば、ペットがもっと元気になる」
「同じ犬種のワンちゃんがこの商品を使ったら、たちまち数値が良くなった」など、お勧めしたい理由をいくつか伝えます。そうすることで、「獣医師が勧めてくれるのだから、購入しても間違いはない」「ペットが将来的に良くなるなら、購入するしかない」などと、自分を納得させることができます。
また、他の人から「なぜこの商品を買おうと思ったの?」と聞かれたときでも、建前の理由があれば自分だけではなく周りの人も納得させられます。安心感に包まれて「あの商品を購入して良かった」と、改めて納得してもらえるでしょう。
高額商品や娯楽性の高い商品にも建前は有効
動物病院では、予防接種や病気の治療に対しては素直に受け入れてくれる患者さんも、高額商品や必ずしもペットに必要ではないサービスは敬遠することがあります。トリミングサービスや、シャンプー・トリートメントなどが、その代表的な商品です。「その商品は持っていなくても、何とかなるから」と考えてしまい、つい断ってしまうのです。その商品・サービスをもう一押しするために、プラスアルファの理由を伝えてあげると、飼い主さんの気持ちが変わります。
「今だけ限定で〇円にしています」「3回受ければ1回無料です」「トリミングサービスはワンちゃんがかわいくなるだけではなく、健康な体になれるものです」など、無駄ではなく、役に立つものだとわかれば飼い主さんも買いやすくなります。「自分のためではなく、ワンちゃんのためだから」と、飼い主さんは自分を納得させられるからです。これは有効な手段ですので、購入をためらっている飼い主さんに対して、ぜひ使ってみてください。
建前の理由を作るにはオリジナルサービスの提供が一番
建前となりうる購入理由といえば、限定商品です。「そのときでなければ買えない」「この動物病院以外では、どこにも売っていない」という理由は、多くの人にとって立派な購入理由につながります。特にその動物病院のオリジナル商品であれば、効果は絶大です。建前の理由につなげるためにも、オリジナルサービスや商品をひとつ打ち出してみてはいかがでしょうか。消費に対する罪悪感を強く持っている人であればあるほど、建前の理由に弱いものです。オリジナルサービスの企画・制作は、自分の動物病院のPR活動としても有効です。
飼い主さんが購入に至る心理は複雑で、診療サービスひとつ、商品ひとつにとっても、長時間迷う方が少なくありません。そのうちの多くは、「商品を良いとは思っているけど、無駄遣いになってしまうのではないか」と、自分をいさめているものです。そこから一歩踏み出してもらうために、さりげないセールストークを取り入れましょう。建前で購入する理由を作ってあげる、というちょっとした心配りが、売上げの改善につながっていきます。