前回は動物病院のアンケート調査の方法をお伝えしましたが、今回はその第二弾です。
アンケート調査は定量分析にも定性分析にもなる有効なマーケティングと、前回はお伝えしました。
このアンケート方法のひとつに、一部の飼い主さんにターゲットを絞って質問をするユーザーインタビューがあります。
この手法を選ぶことによって、より質の高い定性分析ができるようになります。
このユーザーインタビューを行うにもいくつかのコツがあります。
今回はユーザーインタビュー調査をするときの方法についてお伝えしたいと思います。
ユーザーインタビューの必要性
回答用紙を手当たり次第に配って、1人でも多くの人に回答していただくアンケートとは異なり、ユーザーインタビューでは自分の動物病院を特によく利用してくださる飼い主さんを対象にアンケートを行います。こうすることによって、日ごろから感じている動物病院への想いだけではなく、飼い主さん自身が自覚していない要望や不満点を浮き彫りにすることができるのです。
ユーザーインタビューの方法は主に
- 構造化インタビュー
- 半構造化インタビュー
- 非構造化インタビュー
の3つです。構造化インタビューはあらかじめユーザーに尋ねる質問内容を決めて、それに則って質問する手法で、アドリブをする必要がありません。最も簡単な方法ではありますが、Q&Aが形式的になってしまう可能性もあります。
半構造化インタビューは、質問内容を決めておきつつも、そこから話が発展しそうであればアドリブで話を進める手法です。思わぬ意見を引き出せるところが、この方法のメリットですが、インタビューテクニックもある程度求められます。
非構造化インタビューは全く台本がなく、自由に話をしてもらう形式です。こちらも想定の枠に囚われない意見を期待できますが、話が脱線してしまいがちな点がデメリット。飼い主さん同士のグループディスカッション形式にすると、良い話が聞けるかもしれません。インタビュアーのテクニックレベルや、実際に話を伺う飼い主さんの性格に合わせてインタビュー形式を決めると良いでしょう。
ユーザーインタビューを行うときの注意点
ユーザーインタビューを行うときには方式だけではなく、いくつかのコツがあります。ここでは注意したいポイントを紹介します。
ユーザーインタビュー対象者は最大20人
不特定多数からアンケートを取る方式では、最低でも400人に頼みましょうと、前回のブログでお伝えしました。しかしこれがユーザーインタビューとなると、少し事情が変わってきます。人数が多すぎるとかえって意見の収拾がつきません。アメリカのヤコブ・ニールセン博士は、5人からアンケートを取れば、問題の85%を発見できると言います。ただし、5人では意見の偏りが出るおそれがありますので、10〜20人程度の飼い主さんを募って意見をまとめましょう。問題発見率が100%に近づきます。
質問内容は事前にスタッフ間で共有しておく
よほどインタビューに慣れている人でない限り、構造型もしくは半構造型のインタビュー形式を選びましょう。事前に質問を作成しておけば、会話が弾まずに意見を引き出せないということがありません。この時に大切なのは、インタビュー実施日までに質問項目を定めておくことです。
質問項目を作成するときには、専門用語など難解な言葉は使わず、シンプルにまとめてください。この点についてはアンケート調査と同様です。また、誘導尋問のような質問になっていないかどうかを確認しましょう。自分の動物病院をよく評価してもらいたいがあまり、私情を絡めた質問の設定はNGです。
質問がひと通り完成したら、スタッフに共有してわかりにくいところはないか、公平性が保たれているかをチェックしてもらいます。
ユーザーは公平性を保つ
インタビューに回答していただけるのであれば、誰でも良いというわけではありません。例えば30代のユーザーを増やしたいと考えているのであれば、同じ30代の飼い主さんに声をかけましょう。全体的な評価を知りたいのであれば、老若男女に満遍なく声をかけ、偏りのない人選をしてください。
他にも近所にお住まいの方や反対に遠方から来てくださる方、また特定の診療サービスを受診している方など、ターゲットを絞るのもひとつの手です。なぜユーザーインタビューを行うのか、どのようなことを知りたいのか、目的をはっきりさせたうえで声をかけるようにしてください。
飼い主さんにインタビューを行うことで、思わぬ本音を引き出せるかもしれません。最後にひとつアドバイスですが、忌憚のない意見を集めるのであれば、獣医師本人ではなく看護師やトリマーなどのスタッフにお願いすると良いかもしれません。獣医師本人の前では、なかなか本音を言いづらいと言う飼い主さんもいますのでインタビュアーの人選に配慮して、カジュアルに話せる環境を整えてくださいね。