ロジカルコミュニケーションの原則シリーズ、今回は第3弾です。
前回、前々回はロジカルシンキングの組み立て方についてお話しましたが、そこで「前提情報の共有」が大切とありました。
「自分はきちんと前提をスタッフに共有しているから大丈夫」と安心していませんか?
あなたが「前提」と思っているものは、必ずしもスタッフの前提になるとは限らないのです。
そこで今回はロジカルコミュニケーションの肝となる「前提」の共有について考えていきたいと思います。
まずは「前提」を見直してみよう
自分はきちんとスタッフに共有したつもりなのに伝わっておらず、「そういうことは早く言ってください」と言われたことはありませんか?また、あなた自身が他の人に対してそのように感じたことはありませんか?もし心当たりがあった場合、あなたの動物病院のロジカルコミュニケーションはうまくいっていない可能性があります。
このようなトラブルが発生した場合、かなりの確率で前提の共有が行きわたっておらず、行き違いが発生しているといえます。そもそも前提とは「ある物事が成り立つために、あらかじめ満たされていなければならない条件」のことを言いますが、この条件が不明確であれば物事が成立するわけはありません。そのため、まずは「自分たちはきちんと共通の前提を認識したうえで会話や議論ができているのだろうか?」と確認していく必要があります。この時に確認しておきたいポイントについては次の章で説明します。
確認すべき前提条件①言葉の定義
例えば「診療サービスにおける飼い主さんの顧客満足度」を目標に掲げて、スタッフ全員で議論したとします。しかし、この「顧客満足度」という言葉の定義はスタッフによって異なる可能性が高い言葉です。ある人は「リーズナブルな料金設定」と考えるかもしれませんし、ある人は「スタッフの飼い主さんへの対応」と捉えるかもしれません。こうなってくると議論の方向性が定まらず、効果的な施策の設定が難しくなります。そのため、議論を開始する前にはまず「何を顧客満足と捉えるのか?」とスタッフに問いかけ、前提を共有することから始めましょう。
また、言葉の定義があいまいになりやすいものとして「形容詞」と「副詞」には注意をしてください。
「多くの商品を販売する」
「だいたい上手くいっている」
といった言葉は、それぞれが自分に都合の良い数値に変換してしまう可能性があるため、明確な言葉を設定するようにしましょう。
確認すべき前提条件②主語
例えば「素晴らしい動物病院づくり」について議論を始めるとき、主語を必ず明確にしましょう。これが「スタッフにとって素晴らしい動物病院づくり」であれば、
- 給与や福利厚生
- 人間関係
- 勤務形態
などが、論点となってきますよね。しかし、それが「飼い主さんにとって素晴らしい動物病院づくり」となれば、
- 動物病院の外観や内装
- 獣医師や看護師の対応
- メニューの充実度
- 料金設定
に着目することになります。ここの前提共有ができていなければ、議論が進むはずはありません。前提を共有する際には主語を明確にして、それをもとにロジカルコミュニケーションを図りましょう。
確認すべき前提条件③判断の基準
動物病院の売上が一時的に下がっている場合、多くの経営者は「なんとかして売上を上げなければならない」と考えるものです。一見、この考えは常識的なものに思えますが、果たしてスタッフ全員の前提となりうるものでしょうか?なかには、「今は目先の売上を上げるよりも、新しいキャンペーンを実施して飼い主さんに動物病院の存在を知ってもらう方が得策なのではないか」と考えるスタッフもいるかもしれません。そうなれば、あなたの常識は揺らいでしまいますよね。
近年のコロナ禍やそれに伴うライフスタイルや働き方の変化によって、これまでの常識が常識でなくなりつつあります。もしかしたらあなたの前提のなかに、すでに時代遅れとなっているものがあるかもしれません。一度スタッフからの意見を仰ぎつつ、これまでの判断基準をブラッシュアップしてみてはいかがでしょうか。
まずはスタッフ同士で話し合う時間を設けてみよう
言葉の定義を明確にせず、自分の判断基準だけで話を展開しているだけの状態は、ロジカルコミュニケーションが取れていると言えません。そうかといって、あなた一人だけで前提を決めるのはかなり難しいもの。自分が前提と思っているものが、第三者の目から見て前提であるとは限らないためです。
スムーズなコミュニケーションを実現するためには、まずスタッフをできる限り多く集めて、前提の見直しと共有をするところから始めてみてはいかがでしょうか。これまでに気づかなかった価値観に気づける可能性があります。ロジカルシンキングのテクニックがイマイチ周りに通用していないとお考えのあなたには特におすすめです。