緑の花のつぼみを持っている人

今回はJV(ジョイントベンチャー)についてお話をしたいと思います。JVとは、複数の企業が共同で出資を行い、新規事業を立ち上げることで、建設業界や不動産業、エネルギー関連業でよく行われているものです。

動物病院の事例で言えば、2021年にペットのオンライン相談・診療システムのプラットフォームサービスを提供する株式会社みるペットと、動物医療やペット市場での事業支援・提携を支援する株式会社QAL startupsが業務提携し、動物病院の業務効率化支援に注力しています。

また、動物病院ではありませんが、ベンチャー投資ファンドのWorld Innovation Lab Fund II, L.P.と博報堂DYメディアパートナーズが共同出資して誕生した株式会社stepdaysは、2019年以降、動物病院と飼い主を結ぶプラットフォーム「ペット手帳」を提供しています。これにより、動物病院はLINEで友だち登録をしてくれた飼い主さんにお知らせやアドバイスを配信できるようになりました。

複数の企業や組織が手を組むことによってリソースに余裕が生まれ、これまでチャレンジできなかった分野にも取り組めるようになります。しかし、JVをするときの注意点は少なくありません。

今回は動物病院が他の企業・組織とJVを始める際のメリットとデメリット、注意点をお話したいと思います。

動物病院でJVが求められる理由

ペット個体やフード・医薬品の販売などで構成されたペット産業の市場規模は、2019年度以降右肩上がりで、2023年度には1兆8,629億円にまで達しています。これは前年度比4.5%増の数字で、今後はさらに拡大すると予想されています。

しかし、動物医療の役割を担う、私たち動物病院はペット産業のなかでも後れを取っていると指摘される機会が少なくありません。ご存じの通り、動物病院はほとんどが個人が経営する小規模な事業体であり、それゆえにサービス内容や値段などが患者さんに伝わりにくいというデメリットがあります。

より気軽に動物病院を利用していただくためには、他の企業と連携をして、オンライン決済など、より便利なサービスを導入したり、広告を打ったりして、利用のハードルを下げるのが効果的です。

ペットビジネスの知見を持つ、私たち専門業者とブランディングノウハウや資本力のある企業が手を組めば、より事業を大きなものにしていけるでしょう。これが動物病院にJVが推奨される理由です。

JVのメリットとは

昼間にテーブルの前の椅子に座ってペンを持っている人

JVが動物病院で推奨される理由を理解したところで、具体的なメリットを3つ紹介しましょう。

リソース不足を補える

例外もありますが、基本的に動物病院は小さな組織です。複数人のスタッフと、最小限の機器で回しているという病院も少なくはないでしょう。リソースが限られていると、当然のことながら取り組める業務も限られてきます。あなたもチャレンジこそしてみたいものの、技術・知識や人手が足りずに、断念してしまった計画があったのではないでしょうか。それも JVを行い、リソースを増やすことによって、これまでチャレンジできなかった施策に取り組めるようになります。人手やモノがすでに揃っていれば、即効性のある施策を考えられるでしょう。

リソース不足解消を考えているあなたは、以下の記事にも目を通してみてください。

関連記事:リソース不足を感じたら今ある経営資源を見直してみよう

初期費用を抑えられる

新しい施策を始める時には初期費用、すなわちイニシャルコストが発生するものです。それもJVを行うことによって、費用を折半できる可能性が高くなり、気軽に施策をスタートすることができます。資金不足でなかなか施策を打ち出せないという動物病院には、大きなメリットと言えるでしょう。

できる限り資金力のある企業とタッグを組みたいものですが、そのためにはあなたの動物病院をより魅力的なものにして、アピールをする必要があります。大手企業とのJVを希望している人ほど、体制の見直しをしっかりと行いましょう。

相手組織のノウハウを身に付けられる

一か所の動物病院でずっと働いていると、どうしても視野が狭くなりがちです。それも他の動物病院と提携し、他院の様子を見ることによって、刺激を受けることができます。良いと思う点を自分の動物病院に取り入れてみると、経営改善のヒントにつながっていくかもしれません。また、さまざまな人と関わることによってコミュニケーション能力も高まっていくでしょう。

視野を広げる大切さについては、以下の記事でも触れています。ぜひ一度読んでみてください。

関連記事:業界外の人の目線も持って視野を広げよう

JVのデメリット

メリットが多いように思えるJVですが、デメリットも少なからず存在します。私が考えるJVのデメリットは主に以下のふたつです。

連絡や調整が煩雑になる

ひとつの動物病院内で収まっていた共有事項も複数の動物病院が関わることになれば、それだけ情報伝達が煩雑化します。他院との風土や文化の違いを感じて、やりづらさを感じることもあるかもしれません。これはJVのひとつのデメリットと言えます。

しかし、連絡などの基礎をおざなりにしていると、あなたの動物病院の評判を落としかねません。ひとを大切にするというビジネスの基本については、以下の記事を参考にしてください。

関連記事:基礎基本を大切にする人こそがビジネスでは成功する

業務負担に偏りが出ることも

もうひとつのデメリットは、業務負担の偏りです。業務提携をしたからといって、必ずしも業務負担がきれいに折半になるとは限りません。片方の病院に業務負担がかかりすぎてしまい、不穏な空気が流れてしまったという事例を聞いたことがあります。そのようなことがないように、提携する際には業務の役割分担を明確にし、お互いが納得できる利益の分割方法を考えましょう。 

JVを成功させるポイント

オフィスで会う 2 人の男性と 4 人の女性

JV を成功させている企業には、いくつかの共通点があります。そのポイントをここからは紹介していきます。

強みが被っていない組織と提携する

冒頭で紹介したふたつの企業のように、JVは強みが被っていない組織同士の提携がおすすめです。強みが被っていると、わざわざ提携する意義を見失ってしまいます。それよりもお互いにない良さを合わせて、大きなひとつのプロジェクトを成功させたほうが、得られる利益も大きいと思いませんか。もしあなたがJVを考えているのであれば、あなたの病院の弱みや不足しているスキルを洗い出し、それを補ってくれそうなパートナーを探すことから始めてみましょう。

自分たちの強みを十分に相手に提供できるか確認する

自分たちにメリットのある相手とJVをしたいと思うのは当然の心情です。そしてそれは提携相手も同じことを思っているものです。相手が与えてくれるメリット以上のメリットを、あなたの動物病院が与えられるかどうかを考えましょう。このバランスが取れていなければ、JVが失敗に終わってしまうおそれがあります。動物病院とJVするのであれば、あなたの動物病院と同規模程度の病院がおすすめです。

 

動物病院が増加する今の世の中、新しい取り組みを始めるためにはJVが有効と考えます。お互いの良さを引き出し合うことで、あなたの動物病院は確実に成長するはずです。今回紹介したポイントを押さえつつ、JVを検討してみてはいかがでしょうか。

 

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