突然ですが、あなたはこんなふうに言われたらどちらの行動をとりますか?
- 「この予防薬を飲めば、大切なペットの健康を90%の確率で守れます」
- 「この予防薬を飲まないと、将来、10%の確率で深刻な病気になるリスクがあります」
同じことを伝えているにもかかわらず、ほとんどの人は後者の言葉に強く心を揺さぶられ、行動しようと考えるはずです。
このように、提示の仕方(フレーム)を変えることで、相手の判断や行動に影響を与える心理効果を「フレーミング効果」と呼びます。特に、ペットの健康や命を守るという性質上、予防や推進が欠かせない動物病院のサービスや商品には、このフレーミング効果が非常に有効です。
今回は、このフレーミング効果をどう活用して、飼い主さんに商品やサービスの価値をより効果的に伝えるか、具体的な事例を交えながら解説していきます。
また、以下の記事でも似た心理について解説していますので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:プロスペクト理論を活用して動物病院の経営を活性化させよう
フレーミング効果を狙った動物病院の事例
動物病院で栄養食品を販売する際には、
・カルシウム2g配合
というよりも
・カルシウム2,000mg配合
と書いたほうが、栄養価が高い気がしませんか?また、ペット用のシャンプー・トリートメントにおいても、「このシャンプーで60%のワンちゃんの毛質が改善されました」と書いたほうが、「このシャンプーで40%のワンちゃんは毛質が改善されませんでした」と書くよりも良い印象を受けますよね。
しかし、フレーミング効果は必ずしもポジティブな言い回しにする必要はありません。ネガティブな言い回しをしたほうが、相手に訴求できることもあるのです。宣伝文句を考えるときには、同じ商品でも言い回しを変えてみて、どちらのほうがインパクトを与えられそうか、じっくり考えてみると良いでしょう。
高額商品こそフレーミング効果を活かした販促を
フレーミング効果を活かした販促の成功事例としては、オリジン弁当がよくあげられます。 オリジン弁当では、以前450円の幕の内弁当を1種類限定で販売していました。しかし、新たに490円と690円の弁当を追加したところ、490円の弁当が一番売れた発表しています。1種類だと比較対象がなく、それが当たり前になってしまいます。それも少しだけ価格の高い物を置くことで、「もう少し良いものが欲しい」と感じる人から手を取ってもらいやすくなったのです。
2種類だとどうしても価格の安いほうに目がいきがちですが、いくつかのランクを設定しておくことで、「最低ランクはちょっとな」という心理が働き、質の高いものを選ぶようになる人が増えます。さらには、お金に余裕のある人からは、最上級の物を取ってもらいやすくなるというのです。
複数のランクを設定する方法については、以下の記事でも説明していますので、ぜひ参考にしてください。
動物病院でも高額商品を取り扱う機会が多々あるかと思います。しかし、それも他の対象商品を置くことで、手に取ってもらいやすくなるはずです。1万円の商品単品だと高いと思われるかもしれませんが、同時に5,000円や7,000円の商品も打ち出すことで違いを明確化し、1万円の商品の魅力をアピールしやすくなるでしょう。
動物病院における価格フレーミングの具体例
私たち動物病院では、単純に価格を下げるのではなく、見せ方や選択肢を工夫することで、高額な商品やサービスでも納得して購入してもらいやすくなります。代表的な例をふたつ紹介します。
プレミアムフードの販売
複数の価格帯のフードを並べて展示することで、飼い主さんの選択肢を広げられます。スタンダードな商品に加え、少し高価なプレミアムフード、そして最高級の療法食などを一緒に提示してみましょう。「一番安いものではなく、少しでも良いものを与えたい」と考える飼い主さんが、真ん中の価格帯、あるいは最上級のフードを手に取りやすくなります。
健康診断・予防接種のプラン
単純に1回の料金を提示するのではなく、複数のプランを用意するのも効果的です。「基本プラン(必須項目のみ)」と「推奨プラン(オプション検査含む)」、「安心プラン(オプション検査と予防薬を含む)」のように、複数のプランを設定することで、飼い主さんは「どのプランにしようか」という視点で検討できます。こうすることで、「一番安い基本プランでは少し不安だ」と感じ、より手厚いケアを受けられるプランを選択するケースが増えるでしょう。
単位のフレーミング
高額商品だからといって気合いを入れすぎず、わかりやすさを取り入れることも意識しましょう。そのために有効なのが、単位のフレーミングです。これは、高額な商品を日割りや回数で割った小さな単位で提示することで、価格の心理的なハードルを下げる手法です。
例えば、「1ヶ月分のサプリメントで8,000円」と提示するよりも、「1日たったの266円」と伝えたほうが、ずっと手軽に感じられますよね。また、定期的なケアが必要な歯磨きガムであれば、「1本たったの50円」のように表現するのも良いでしょう。
このように、見せ方を工夫することで、高額な商品でもお客様は「これなら続けられそう」「この金額なら試してみてもいいかな」と前向きに検討しやすくなります。
フレーミング効果と合わせて使いたいリフレーミング効果
フレーミング効果と非常によく似たものとして、リフレーミング効果という言葉があります。 この言葉自体は聞いたことがなくても、「コップ内の半分の水を見て、『まだ半分ある』と考えるのか、それとも『もう半分しかない』と考えるのか」という例えを聞いたことがある方は多いでしょう。
このように、リフレーミング効果とはある状態のものをマイナスからプラスに転化して物事を考えたり、捉えさせたりする効果をいいます。例えば高額商品を打ち出す場合、どうしても価格の高さがハードルになってきます。しかし、それも「機能性や品質が良いから値段も高いのだ」と、言い換えることができます。あえて金額には触れずに、「機能性ナンバーワン」「圧倒的支持率」など、良いところを全面に打ち出していくことを考えましょう。こうすることによって、さらに高額商品を手に取ってもらいやすくなります。
重々しさを大切にしながらもわかりやすさは忘れない
フレーミング効果を使って高額商品を販売するとなると、どうしても重々しくなりがちです。「圧倒的ナンバーワン」「99%のワンちゃんは満足」など、景気のいい言葉を並べたてて、宣伝することもあるでしょう。それ自体は悪いことではありませんが、あまりにも謳い文句の存在感が強いと、かえって魅力が伝わりにくくなります。例えば「99%のワンちゃんが満足している商品を、20%引きで販売します」といってアピールすると、「結局いくらになるの?」と思われてしまうことも。高額商品だからといって気合いを入れすぎず、わかりやすさを取り入れることも意識しましょう。
わかりやすい広告の作り方については、以下の記事でも触れています。ぜひ一度読んでみてください。
関連記事:動物病院の広告にはわかりやすさがマスト!気を配りたいポイントとは
最初は低価格で打ち出すのもあり
高額商品を打ち出す場合、最初はリーズナブルに設定して、徐々に上げていくというのもよくある手法です。以前紹介したディアゴスティーニの事例がこれにあたります。初回500円などといった、人を惹きつけやすいフレームを用意してから購入してもらい、徐々に価格を上げていくと、高額商品も購入してもらいやすくなります。これも立派なフレーミング効果を活かした販促活動です。
高額商品をいきなり紹介すると、どうしてもお客様は身構えてしまいがちです。それも立派で魅力的なフレームを用意してあげることで、お客様を購入へと導きやすくなります。今回紹介した事例をぜひ活かしてみてください。
価格を設定する際の方法については、以下の記事で詳しく説明しています。きっと参考になるので、ぜひ読んでみてください。