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真面目と言われる日本人の気質ゆえでしょうか。私たちは新しい商品を打ち出す時にはついつい完璧を目指し、自分たちが満足できるまで何度も作り直してしまいます。

しかし、満を持してリリースしたものが必ずしもヒットするわけではありませんよね。期待はずれに終わってしまうもののほうが、むしろ多いのではないかと思うくらいです。その商品にかけた手間とコスト、そして期待が大きければ大きいほど、がっかりしてしまいますよね。新商品が当たるかどうかは、実際にお客様の反応を見てみないことにはわかりません。自分たちが客観的な視点を失っている可能性も十分に考えられます。

それであれば、まずは60%程度の完成度で一度リリースし、飼い主さんからのフィードバックを受けながら、改良していったほうが効率が良いと思いませんか。今回はたたき台の時点でスタートを切ることの大切さをお話します。

なぜ「たたき台」でのスタートが動物病院経営を加速させるのか?

新しい商品やサービスを完璧な状態にしてから世に出そうとすると、開発コストと時間が際限なく膨らんでしまうことがあります。デザインの細部、機能の追加、それに伴う価格の見直しなど、まるで足し算のように工程が増え、リリースがどんどん遅れてしまうのです。

しかし、「この程度で大丈夫」と思える60%程度の完成度で一度リリースし、飼い主さんからの意見をもとにマイナーチェンジしていくことで、仕事は格段に効率化されるようになります。これは、単にコストや時間を最適化するだけでなく、市場の変化や飼い主さんのリアルなニーズに迅速に対応できるという大きなメリットをもたらします。

一方、完璧を目指すあまりにリリースが遅れると、見えない形で多くの損失を生み出します。その期間中に市場のトレンドが変わってしまったり、競合他社に先を越されてしまったりと、ビジネスチャンスを逃す「機会損失」は計り知れません。また、ひとつの新商品開発に多大なリソースを費やすことで、他の重要な施策や日々の診療業務への資源配分が滞ってしまう可能性もあります。

まずは「たたき台」を出すことで、限られた時間や資金といった貴重な経営資源を有効活用し、失敗のリスクを最小限に抑えながら、次のステップへと迅速に進むことができるのです。このアプローチこそが、動物病院の経営を加速させ、持続的な成長へとつながる鍵となるでしょう。

フィードバックをもらうことが飼い主さんとの信頼関係づくりになる

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フィードバックをクレームのように捉えて恐れている方がいますが、必ずしもこのふたつは同じではありません。 動物病院のためになるフィードバックは、非常にありがたいものです。

そのため、新商品を打ち出す時にはまだ製作段階であること、また「飼い主さんの意見をもとに、これから改善していきたい」と、自身の考えをはっきり伝えても問題はないでしょう。むしろ飼い主さんも、自分たちの意見が商品に反映されることをうれしく思ってくれるかもしれません。動物病院と飼い主さんが一緒になって商品を完成に近づけていくことで絆が生まれ、信頼関係で結ばれるようになります。こうなると飼い主さんもあなたの動物病院へと足を向けてくれるようになり、新商品によって得られる利益以上の恩恵を感じられます。ぜひ一度試してみてください。 

飼い主さんからのフィードバックの受け方については、ぜひこちらの記事を参考にしてください。

関連記事:アンケートを取って飼い主さんのニーズ&ウォンツを知ろう

新商品を60%の状態で留めておくためには

頭の中では「60%の完成度合いで大丈夫」と思っていても、ついつい力が入りすぎて結局100%を目指してしまうことも。いわゆる「たたき台」の段階で商品を打ち出すためには、計画にもルールを設けて商品を完成させます。

一度決めた予算とスケジュールは絶対に守る

「〇の△月にリリースする」と決めたものの、なかなか自分の思う通りの作品が出来上がらず、延ばし延ばしになっている企業は少なくありません。これではいくら経っても、新商品のリリースは見込めず、コストと手間がかかるだけです。予算以上の費用を追加することになり、結果的に赤字になった事例も知っています。このようなことがないように、新商品リリースのスケジュールと予算を決めておき、それを絶対に守るようにしましょう。あらかじめ飼い主さんに「〇年×月△日にリリース!」と銘打っておくと、スケジュールをより意識できるはずです。

スケジュールを意識すると、仕事のパフォーマンスも上がりますよ。ぜひこの記事を参考にしてください。

関連記事:すべてのタスクに締め切りを設けてパフォーマンスを上げよう

MVPの概念とリスクヘッジを押さえておく

新商品を「たたき台」の状態でリリースする考え方は、ビジネスの世界で「MVP(Minimum Viable Product:最小限の実行可能な製品)」という言葉で広く知られています。これは、あなたの思い描く商品の機能をすべて盛り込むのではなく、「必要最低限の機能」でまずは製品やサービスをリリースし、実際に飼い主さんの反応を見るというアプローチです。

例えば、新しいペットフードを開発する際、いきなり多種多様なフレーバーや複雑な栄養バランスを追求するのではなく、まずは基本的な機能と安全性を持つ一種類を少量だけ生産し、モニター飼い主さんの意見を聞くことから始めるイメージです。

このMVPの考え方を導入することで、「60%の完成度」でのリリースが可能になります。これにより、開発にかかる時間やコストを大幅に抑えられ、万が一市場のニーズとズレがあった場合でも、損失を最小限に抑える(リスクヘッジ)ことができるようになるのです。

さらに、飼い主さんからの具体的なフィードバックを参考にして改良を重ねることで、本当に求められる商品へと効率的に進化させられるでしょう。

60%の完成度でも厳守すべきポイント

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新商品を完璧な状態にする必要はありません。しかし、商品を打ち出すにあたって絶対に守っておきたい、またクリアしておきたい項目はあります。

例えば法律違反をしていないものであるかどうか。そして、飼い主さんやペットに危険や損失を与えないものであること、最後に新商品のコンセプトがそれにあたります。これらを無視してリリースすると、事件に発展しかねませんし、失敗した時には60%どころかすべてが無に帰して、またゼロからのスタートとなってしまいます。住宅に例えれば、基礎の部分はしっかりと強固なものにして、外装や内装などのデザインはあとで変えられるようにしておくイメージです。

獣医師であるあなたが法律を守ることの重要性は、以下の記事を読むとよくわかります。

関連記事:動物病院の広告では品質表示に注意!法律違反を回避するためには

そのため、最初のコンセプトはしっかりと決めておきましょう。価格設定に関しては、最初は高く設定し、後から安くしていくのはありですが、逆はあまりおすすめできません。どうしても「高くなってしまった」という印象を与えてしまうからです。そのため、最初はやや高めに価格設定をしておくと良いでしょう。

 

極論ですが、100点満点の商品はほとんど存在しません。ある人から見たら完璧でも、ある人から見れば70点程度の出来、というのはよくある話です。それは口コミサイトを見ていてもわかります。それであればまずはたたき台の状態で打ち出し、自分の動物病院を懇意にしてくれる飼い主さんに満足してもらえるものを、一緒に作り上げていくのが効率的です。飼い主さんはもちろん、スタッフや取引業者など、さまざまな人から意見をもらうことで、より商品の精度は上がっていくでしょう。 

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