獣医師をしていると、「日々勉強だ」と実感する機会が多々あります。ペット事情は年々変わっていきますし、治療方法や動物病院の経営方針も絶えず変化・進化を遂げています。時代に遅れを取ることがないように、私も定期的に獣医師関連の講座やセミナーに参加するようにしています。
しかし、参加しているセミナーに対してすべて「参加してよかった」と思えているかというと、決してそうではありません。なかには「これ聞いた意味があったのかな」と首をかしげるものもあります。それでも私は、その学びの中にひとつでも「自分の役に立つ」と思える要素を探すようにしているのです。
その姿勢こそが、どんなセミナーでも積極的に参加したいと思える、前向きな気持ちを持つための秘訣と考えています。
今回は意外と皆さんが知らない「学ぶ姿勢」について考えてみたいと思います。
研修やセミナーでは必ずひとつ学びを見つけよう
私が動物病院を開業して以来、20年以上の月日が経過しました。これだけ長く獣医師と経営者を務めていれば、ある程度の知識は備わっていると考えています。しかし、いまだに私は獣医師や経営者向けのセミナーや研修があれば顔を出すようにしています。
そのなかには、「もうそれは知っているよ」というセミナーもあれば、「何を言いたいのかよく分からなった」というセミナーに当たってしまうこともあります。ときには「時間が無駄だったな」と思うこともありますが、極力そのような感情を持たないようにして、前向きな姿勢を心がけています。
その理由は、着眼点を変えてみると学びがたくさんあることに気づいたからです。たとえば講師の話し方。話の中身は大したことがないのに、なんだかすごく聞き取りやすく、耳に入ってくる話し方をする講師がいますよね。たとえ会話の内容がひとつも自分の身にならなかったとしても、話し方には勉強になるヒントがあるはずです。
私はあまり大勢の人の前で話すのが得意でないため、そのような講師の身振りや話の組み立て方を参考にして、自分が飼い主さんやスタッフに説明するときにも意識しています。たくさんのセミナーに参加していると、人に聞いてもらえる話し方のコツがわかってきて、人にも教えやすくなります。これも、れっきとしたセミナーで得た学びのひとつです。
絶えずインプットできる人はビジネスで成長できる
「学び」を意識してセミナーに参加したり、本や雑誌から情報を得たりしようとする人は、インプットに積極的と言えます。この習慣を身に付けているだけでも、社会人としては立派だと私は考えます。
学びが得られないとがっかりすることもあるかもしれませんが、学びを得るために行動した自分自身を認めてあげることも大切です。一度思った成果が得られなかったからと言って、学ぶ姿勢を崩さないようにしましょう。
インプットをする際には、ぜひ以下の記事を参考にしてみてください。目的と期限を設定する大切さが伝わります。
学びを得られる人になるためには「応用力」が重要
どのような仕事でも、社会人には「応用力」が必要と言われています。例えば以前のキャンペーンで得た結果を次回に活かしたり、事務職で得たスキルを営業職で活かしたりできる人は、応用力が備わっていると言えるでしょう。
自分自身の体験をうまく利用してビジネスに活かせる人は、状況が違っていても難局を乗り越えやすく、さらに経験値を積むことができるのです。
そして、応用力が高い人は、どのような状況であってもプラスとして捉え、そこから何かを学ぼうとする姿勢を身に付けています。その結果、自分のためになるものを確実に見つけて、他の人に差をつけていっているのです。
一見、自分のためとは思えないことでも、何かに結びついてくるかもしれません。積極的に興味を持って、応用力を高めていきましょう。
ちょっとした雑談にこそヒントがある
たとえセミナーの内容に発見がなかったとしても、ちょっとした雑談やたとえのなかに話し方のヒントを見つけることができます。話し方がうまい人は、たとえ話や事例の紹介がうまいものです。また、雑談から経営のヒントを見つけたこともありました。これからも「些細な話の中にヒントがある」ということを忘れずにいたいと思います。
どうしても学びが見つからないなら質問してみよう
例えばセミナーに参加してみたけれど、どうしても今の自分に必要な学びに気づけないということもあるでしょう。そのようなときには、思い切って質問がおすすめです。どんなに些細なことでも構いませんので、少しでも気になったところがあったら積極的に尋ねてみましょう。その際に答えを聞いただけで、もうひとつの学びを得られているはずです。
「なにかひとつ質問をする」を目標にしてセミナーに臨むことで、集中力も高められます。
印象に残ったことをひとつでも実践する
セミナーに参加すると、かなりの高確率で「○○を明日から実践してみましょう」と、複数の案を講師から提案されます。それらすべてを実践するのはかなり難しいと思いますが、せめてひとつは試してみてはいかがでしょうか。私も動物病院の経営に取りいれられないものは無理にチャレンジをしませんが、「これならできるかもしれない」と思うペット商品の販売方法は取り入れるようにしています。ほかにも診療サービスの設定やセット商品の販売は、人から教えてもらって取り入れたものです。
正直最初は半信半疑のものもあります。しかし、地道に続けていったことで効果が見えてくることもあるのです。忙しい時間の合間を縫って参加したセミナーを、実りのあるものにするため、何かひとつ「これならリスクも少なく、チャレンジしやすそう」「印象に残ったからとりあえず試してみようかな」と思うものを取り入れてみてください。もしかしたらそれが、自分の動物病院を大きく変えるきっかけとなるかもしれません。
学ぶときには、常に実践を意識してみてください。こちらの記事でも、実践の大切さを解説しています。
関連記事:学習するときには必ず実践も意識をすること
複数人でセミナーに参加したら、一人ひとつ実践してみる
時には動物病院のスタッフ全員でセミナーに参加することもあるでしょう。その時にはただセミナーを受講して終わりにするのではなく、必ずレポートを書かせてフィードバックをしてあげるようにしてください。そうしなければ、次の日にセミナーの内容を忘れてしまう可能性があります。
フィードバックを行う際には、スタッフにとって大きなな学びは何だったのかを確認し、実践できそうなものをひとつ行うことを約束してください。そして、進捗状況を定期的に確認するようにしましょう。セミナーから得た学びを実践することが、スタッフとして大きく成長する機会になるかもしれません。それを見守ってあげることも、動物病院の経営者の役割だと考えています。
スタッフに声を掛けるときのポイントについては、以下の記事をぜひ参考にしてください。
今回はセミナーを受けたときに、積極的に学ぼうとする姿勢の大切さについて紹介しました。情報社会と言われる現代、わざわざセミナーを受けなくても情報は手に入りますし、参加したところで「実りがなかった」と感じることもあるでしょう。
しかし、学ぼうとする姿勢を大切にする人に成長の機会は巡ってくるものです。セミナーや研修後は「参加した意味がなかった」の一言で終わらせるのではなく、何かひとつでも学びを見つけて、実践してみてください。動物病院の経営改善のヒントが見つかるかもしれません。