このブログでもしばしば紹介しているマーケティング用語に、「限定商品」という言葉があります。
通常の商品やサービス以外にも、限定的な商品やサービスを用意して、特定のターゲットに提供するという手法です。
動物病院に限らず、ほとんどすべての業界が取り入れている「限定商品手法」ですが、あまりにも一般的になりすぎて、「限定」という言葉が軽くなってきている印象を受けます。
どのように限定商品を打ち出すと、真にターゲットの心をとらえることができるのでしょうか。
今回は改めて限定商品を使った効果的なセールス方法について紹介したいと思います。
限定商品=限定商品ではない?
限定商品と言っても、「限定」の定義はさまざまです。
飼い主さんなど、「人」に対象を絞っているケースもあれば、期間限定・エリア限定、また数量限定といったものもあります。
ここで重要なのは、対象範囲が狭ければ狭いほど希少価値が高くなるという法則です。希少性が高いとわかれば、飼い主さんは優越感を覚えるために、多少高かったり、期間が短かったりしても、手に取ってくれる傾向にあります。対象範囲が広いとプレミア感が失われ、もはや限定商品が限定に感じられなくなってしまうのです。キャンペーンのなかには誰でもわかるクイズを設けて、「正解者全員にプレゼント!」などとうたうものがありますが、これはかえって逆効果になることも。注目を集めたいキャンペーンであればあるほど対象者を絞って、特別感を出しましょう。
ただし、あまりにターゲットの範囲が狭すぎると、今度は対象者の絶対数自体が限られてしまいますので、過去のキャンペーンを参考にして限定対象を絞りましょう。
数量限定は複製不可のものを対象にしよう
限定商品と、必ずしも同じ意味ではありませんが、限定商法のなかには「完全受注生産」というものがあります。受注生産ではその名の通り、注文を受けて初めて商品が生産される過程を踏みます。そのため、数量限定ではなくても、「今注文しなければ手に入らないものが自分のものになった」「自分のためだけに作ってもらえた」という満足感を得られるでしょう。
反対に数量限定とうたっていても、簡単に複製できるものにプレミア感はありませんよね。最近は限定で動画を公開したり、PDFでプレゼントをしたりするケースがあるようですが、こういったものは簡単に複製できてしまうため、数量限定品としては弱い印象です。
数量限定にするのであれば、そう簡単に複製できないものを選ぶと良いでしょう。とは言っても、モノの場合、簡単に複製されてしまう可能性がありますので、「予防接種一回無料」や「トリミングサービス半額」など、サービスを数量限定にすることをおすすめします。決して複製することができず、飼い主さんはお得感を覚えるはずです。
数量限定プレゼント商品は高額なものを選ぶとよし
期間限定の商品プレゼントキャンペーンは一般的な限定商法です。しかし、期間中にどれほどの飼い主さんが訪れるかわからず、余裕を持って商品を多めに用意しておかなければなりません。当然のことながら在庫数が多いほどコストがかさみますし、余ってしまっても無駄な出費に終わってしまいます。
その点、数量限定商品はあらかじめ配布する商品の数が決まっているため、キャンペーンにかかるコストをある程度予測できます。予算の範囲内でプレゼントの内容を決めることも可能です。それであれば、いっそのこと数を絞り込んで、高額な商品だけで揃えてみるのはいかがでしょうか。
商品が大きなものであるほど目立ちますし、自分の動物病院のリピーターではない飼い主さんにも、存在を知ってもらえるかもしれません。プレミア感が出て、飼い主さんにもきっと喜んでいただけるでしょう。小さな商品をたくさん用意するよりも、数少ない高額商品を用意したほうが、結果的には広告効果も高いと考えられます。
限定商法で知っておきたいスナッブ効果とヴェブレン効果
人間が限定商法に惹かれるときには、さまざまな心理が働いている状態と考えられます。例えば、「希少性のあるものが欲しい」と思う心理はスノッブ効果と呼ばれるもので、マーケティング界隈ではよく知られています。「自分だけが持っている」と思うことで、所有欲が満たされ、それを提供してくれた企業や施設への満足度が高まるというものです。
一方のヴェブレン効果とは、人よりも高価な物を持っていることで満足感を得られる心理のことです。限定商品も高額な商品であればあるほどお得感を感じられて、幸せな気持ちになってもらえます。限定商品を用意する時には、このような人間心理を理解して、どのような商品やサービスを設定したら、飼い主さんから本当に喜ばれるのか、一度じっくり考えてみることをおすすめします。複製できるものを用意したり、不特定多数の飼い主さんが手に取れるものをプレゼントにしたりすると、必要以上にがっかりされてしまうことがあるので要注意です。