昼間の中国の紫禁城の人々

あなたは知行合一(ちごうどういつ)という言葉を知っていますか?

この言葉は王陽明が唱えた陽明学の学説であり、本当の知は実践を伴わなければならないという考えに基づいています。

これは経営においても同じことが言えます。

ビジネス本を読んだり、セミナーに参加したりすることが悪いとは言いませんが、インプットばかりでアウトプットがおろそかになっていると、あなたもあなたの周りのスタッフも成長を期待できません。

 

しかし、闇雲に経験を積み重ねればよいかというと、それも少し違います。経験をもとに確実にスキルを高めていくためには、経験学習を取り入れて学びを得る流れが効果的です。

今回はこの経験学習のメリットや動物病院への取り入れ方について解説します。

現時点で実践をうまく学びに落とし込めていない方や、インプットが優先になってしまっている方はぜひ参考にしてください。

経験学習の定義とメリット

経験学習とはその名の通り、みずからが経験を通じて学んだ内容を次の経験に活かしていこうとするプロセスを意味しています。ビジネスの現場で役立つ能力を獲得するためには、現場での実務経験が欠かせません。実務経験を積むことによってビジネスの応用力が備わり、さまざまなシーンにも対応できるようになります。

ビジネスに必要な「気づき」を得られる点は経験学習の大きなメリットですが、意識しなければその気づきも得られず、忘れられていってしまいます。そのようなことがないように、仕事をする際には経験学習のメソッドを取り入れて実践していくべきだと考えます。

それではこの経験学習とはどのように進めていけばよいのでしょうか。

経験学習のメソッド

白い陶器のマグカップの近くの茶色の木製のテーブルに書いている人

アメリカの組織行動学者であるデイビット・コルブ氏は「経験学習モデル」の提唱者であり、経験学習は以下の4つのステップを回して達成するものであると説いています。

1.具体的経験

具体的経験とは、あなたやスタッフが主体性を持って行動し、仕事の経験を積むことです。自主的に行動することによって、確実に自分自身の糧にしていくことができるでしょう。この時に取り組んだ仕事の難易度が高ければ高いほど、大きな学びを得られるようになります。

2.内省的観察

内省的観察とは、自分が具体的経験のなかでとった言動や結果を振り返る行為です。実際の結果から気づきを得ることもあれば、プロセスから学びとることもあるでしょう。さまざまな角度から振り返ることによって、第3のステップにつなげることができます。このときには客観的な視点を忘れることなく、観察をするようにしてください。

3.抽象的概念化

2のステップであなたが導きだした内省を、概念化・ルール化していくのが第3のステップです。例えば新しいペットアイテムの販促キャンペーンを行った際には、どのような広告を出したのか、それによってどの程度商品が売れたのか、どのような飼い主さんが購入してくれたのか、キャンペーンの時期はどうだったかなどを振り返ってみましょう。もし売れ行きが芳しくなかったのであれば、その原因がどこにあったのかを突き止め、「キャンペーンをこの時期に実施するのはやめる」「広告はもっと早い時期に出稿する」など、ルールを決めておくことをおすすめします。それによって、次回のキャンペーンの際には改善策を打ち出せるようになるはずです。

4.能動的実験

最後のステップは、ステップ3で得た学びをもとに再び実践をすることです。この際にはステップ1の具体的経験のときよりも、手法を変えて取り組む必要があります。一度の能動的実験で必ずしも改善されるとは限りませんが、少しでも変えてみることで、また違う成果が得られるはずです。トライ&エラーを繰り返すことが、経験学習には必須と言えるでしょう。

経験学習を成功させるためのポイント

赤と茶色の本

経験学習は経営者のあなた一人が実践するのではなく、院内のスタッフ全員で取り組むべき学習だと言えます。なぜなら経験学習に必須とされる内省的観察はどうしても主観に走りやすいものであり、客観的な視点で誤りを指摘してくれる存在が必要であるためです。そのため、経験学習は同じ施策に対して複数人で取り組み、全員で振り返りを行うようにしましょう。

内省だけではなく、能動的実験においてはこれまでの経験をきちんと活かせているのかどうかを確認することも重要です。自分では学びを得たと思っていても、はた目から見たら全く変わっていないということがよくあります。そのときには上下関係なく、お互いが指摘できるようなコミュニケーションの場を用意しましょう。コミュニケーションが活性化することで、院内の信頼関係が強固なものとなり、業務が円滑に進むようになるはずです。

 

どれだけ素晴らしい座学を受けたとしても、実践の場で活かせなければ意味はありません。現場対応力を高めるためには、経験学習の習得が必須と言えます。今回紹介した4つのステップをぜひ動物病院内でも意識してみてください。

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