動物病院の経営者ともなると、多くの仕事を抱える機会が少なくありません。日常的な診療サービスの提供をはじめ、スタッフの教育や経営管理、また取引業者との打ち合わせなど、獣医師一人にのしかかる業務量は重く、気づけば毎日深夜まで仕事をしているという人も多いでしょう。
しかし、このような状態が日常化していると体も心も疲弊し、提供するサービスの質も低下します。それがもとで飼い主さんが離反してしまっては、頑張っている意味がありませんよね。
あなたの健康と、病院の未来のため、今こそ働き方を変えてみませんか?より良い動物病院を築くためには、自分の仕事量を一度見直してみると良いでしょう。
今回は仕事が多くて手が回らない時の対処法の第2弾として、巻き込み力の大切さを説明します。
仕事を一人で抱え込む人にありがちな心理
獣医師にかかわらず、仕事を他のスタッフに割り振らずに一人で抱え込んでしまう人は少なくありません。一体なぜこのような事態を引き起こしてしまうのでしょうか。考えてみると、以下の5つの心理が考えられます。
- 自分が優秀だと周りに思われたい
- 周りのスタッフを信頼できず、自分が取り組んだほうが早いと思ってしまう
- そもそも自分のキャパシティを把握できていない
- 周りから頼まれたことを断れない
- 仕事は自分でこなして当たり前だと思っている
仕事をきっちりこなしたいと考える責任感の強さは素晴らしいものです。しかし、結果的に仕事全体が雑になったり、ストレスが溜まって感情的になったりしていると、かえって周りに迷惑をかけてしまいます。ここで挙げた5つの項目の中で、もしひとつでも思い当たる節がある人は、一度仕事の裁量を見直してみましょう。
仕事を抱え込みすぎるあなたには、以下の記事もおすすめです。ぜひ合わせて読んでみてください。
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仕事ができる人が身につけている巻き込み力とは
ここ数年、ビジネスパーソンの間で注目されている「巻き込み力」という言葉をご存知でしょうか。これは相手を自分の仕事に引き込んでサポートを得る力のことを言います。どんなに優秀な人でも、たった一人でできることはそう多くはありません。それも多くの人を巻き込んで一緒に仕事を進めることで、一人ではできない、スケールの大きな仕事が実現されます。
また、仕事を任せるだけでなく、その業務のノウハウをチーム全体で共有する仕組みを作っておくと、業務が属人化するリスクを減らせるというメリットも感じられます。これは、「スタッフが仕事をきっちり仕上げてくれるかどうかが不安」という獣医師の悩みを解消する方法のひとつでもあるのです。
仕事の仕組み化の大切さについては、以下の記事でも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:動物病院の経営成功は「仕組み化」と「属人化」の最適なバランスから生まれる
動物病院の経営者であり、リーダーであるあなたが巻き込み力を身につけてスタッフからの協力を獲得し、自分の欠点や不足を補えるようにしてみましょう。
上手に仕事を割り振る方法①良好な人間関係を築く
たとえ仕事であっても、好意を持っていない獣医師からの頼みを快く引き受ける人はいません。渋々引き受けた仕事はやはりそれなりの出来になりますし、コミュニケーション不足で引継ぎのトラブルが生じるおそれもあります。
そのようなことがないように、普段からスタッフや取引業者とはこまめに会話をして相手の考えに理解を示しましょう。信頼関係を構築することであなたも仕事を頼みやすくなりますし、頼んだ相手も気を利かせて丁寧に仕事を仕上げてくれます。
人間関係の構築方法については、以下の記事でも説明しています。
関連記事:風通しの良い動物病院づくりで良好な人間関係を目指そう
上手に仕事を割り振る方法②仕事の重要性を伝える
一人で仕事を抱え込んでしまう獣医師の多くは、「スタッフが仕事をきっちり仕上げてくれるか不安だから」と口にします。不安に思う気持ちは理解しますが、自分一人で抱え込んでしまうといつまで経っても忙しさから解放されません。
まずは重要な仕事を順位付けし、下位の業務は信頼できるスタッフに頼むことから始めましょう。指示を出すときには業務内容だけではなく、その仕事の重要性も必ず伝えるようにしてください。「君だから頼んでいるんだよ」と念押しをすると、スタッフも仕事の重要性を理解して、責任を持って取り組んでくれるはずです。
上手に仕事を割り振る方法③定例会議で仕事全体を整理する
獣医師の中にも、仕事の整理が苦手な人が少なくありません。もしかしたら、あなた自身が周りから「一人で仕事を抱え込みすぎ」と思われている可能性があります。自分自身がキャパシティを超えていることに気づかなければ、いつまで経っても仕事は整理されません。
自分の仕事の割り振り方は本当に最適であるのか、一度スタッフ全員と話し合ってみてはいかがでしょうか。周りからの客観的な意見を仰ぐことで、問題を可視化できるでしょう。割り振りをするときには、どのような仕事を誰に任せるべきか、無駄な仕事は本当にないのか、確認しながら整理していきましょう。そのようにすることで、仕事の整理がかなり進むはずです。
会議の進め方については、いくつかの記事で触れています。以下の記事をぜひ参考にしてください。
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属人化する業務は機械に任せるのもひとつの手
現代では、人と仕事の両方をサポートするDX化が進んでいます。単に仕事を人に任せるだけでなく、業務の一部を機械に任せることで、より効率的で質の高いサービスを提供できます。ここでは、動物病院が導入を検討すべき具体的なシステムと、そのメリットを説明します。
①予約・オンライン問診システム
飼い主さんからの予約電話の対応や、来院前の問診票記入には多くの時間と手間を要します。それも予約管理システムを導入すれば、電話対応の時間が大幅に減り、スタッフは診察やペットのケアといったコア業務に集中できます。
また、オンライン問診システムを活用すれば、飼い主さんは事前に自宅でペットの状態や症状を入力できるため、来院時の情報収集が効率化し、診察時間を短縮できるはずです。これらのシステムで、飼い主さんにとって「いつでも・どこでも」手続きができる利便性を提供すれば、病院の評価向上につながるでしょう。
②電子カルテシステム
紙のカルテは保管場所に困るだけでなく、必要な情報を探すのにも時間がかかります。それも、電子カルテシステムを導入することで、過去の診療記録や検査結果、画像データなどを一元管理し、瞬時に確認できるようになります。これにより、診察がスムーズになるだけでなく、複数人が同時に情報を参照できるため、スタッフ間の情報共有も円滑になります。また、カルテの紛失リスクもなくなり、セキュリティ面でも安心です。
ワークライフバランスが叫ばれる昨今、仕事もプライベートも充実させるためには、人に頼るところは頼って、過度なストレスをため込まないように意識したいものですね。