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私は常日頃から動物病院を経営する獣医師である以上、飼い主さんにも院内のスタッフにも自信を持って意見を伝えなければならないと考えています。たとえそれが時として人を傷つけてしまうものであったとしても、言わなければならないことはきっぱりと伝えるようにしています。それが飼い主さんやスタッフ、出入り業者など、全方位からの信頼の獲得につながると信じているからです。

しかし、自由に意見や主張をすることに、まったくためらいがないわけではありません。「こんなことを言ってしまって、本当に良いのだろうか」と、内心感じることもあります。今、「自分の意見を思うように言えていない」と感じている人の多くは、おそらく私と同じ気持ちを抱いているのではないでしょうか。謙虚が美徳とされる日本で円滑な人間関係を築くためには、無難な発言にまとめるのが確実だからです。

それでは、人を不用意に傷つけることなく自分の意見を主張するためには、どのような姿勢を心がけたら良いのでしょうか。今回は意見の効果的な発信方法について考えてみたいと思います。

経営者としてあるべき姿については、以下の記事でも触れていますのでぜひ参考にしてください。

関連記事:ブレない経営者になるための3つの方法

八方美人な人はファンを増やせない

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周りに敵をつくるのを恐れ、誰にでも良い顔をしてしまう「八方美人」な振る舞いは、かえって周囲の信頼を損なう可能性があります。「いつも当たり障りのないことしか言わない」「誰にでも都合の良いことばかり言う」といった印象は、「この人は本音で話してくれていないのではないか」という疑念を生み出します。

特に、いつも同じこと、相手にとって耳障りの良いことしか言わない獣医師に対して、飼い主さんは「結局、誰にでも同じことを言うのだろう」と感じてしまうかもしれません。これは、信用を失墜させるまではいかなくとも、「この先生だから信頼できる!」と心酔してくれるファンを遠ざける要因となります。一貫性のない態度は、相手に「何を信じれば良いのか分からない」という不安感を与えてしまうのです。

もちろん、無理に厳しい言葉を並べる必要はありません。しかし、自分の意見を主張すべき場面では、相手の顔色を窺うことなく、毅然と伝えることが大切です。動物の命を預かる獣医師という責任ある立場だからこそ、時には厳しい意見や専門的な見解も、自信を持って伝える必要があるのです。

自分の意見を主張することで感じられるメリット

自分の意見を強く主張することで、人を怒らせたり、傷つけたりする可能性は否定できません。それは自己主張のデメリットのひとつです。しかし、自己主張をするメリットとデメリットを比較した場合、メリットのほうが多いことに気づきます。

例えば、治療方針について曖昧な伝え方をすると、後で飼い主さんとの認識のずれが生じ、余計な時間や労力がかかることがあります。それも、あなたの意見をはっきりと伝えることで、そのようなトラブルを避けられます。婉曲的に伝えるよりも、よほど効果的かつ効率的ですし、業務効率の改善にもつながります。さらに自分の意思を伝えることで、相手はあなたのキャラクターを理解し、それに合った対応をしてくれるようになるでしょう。こうなれば意見のぶつかり合いでギスギスすることなく、円滑な人間関係を築けます。

日頃から堂々とした態度で、きっぱり意見を伝えられるようになると自信がつき、失敗を恐れなくなります。これは大きなメリットと言えるでしょう。飼い主さんも大切なペットは、信頼できる獣医師に診てもらいたいと思っているものです。自分に自信を持つことで、飼い主さんに安心感を与えられる獣医師へと成長できるでしょう。

不快感を与えることなく自分の意見・主張を伝える方法

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自分の意見をきっぱりと伝えることも重要ですが、その際に極力相手を傷つけないようにしたいものです。特に男性獣医師が女性と接する際、毅然とした態度を威圧感と捉えられ、怖がられてしまうおそれがあります。こうなると飼い主さんの離反を招いてしまうこともあるでしょう。ここでは良好な人間関係を築きつつ、相手に自分の気持ちを届ける方法を紹介します。

①相手に合わせた話し方をする

例えば相手が女性であれば、柔らかい話し方を心がけましょう。荒々しい言葉を避け、「~ですね」「~ますよね」「~という選択肢もありますね」など、文末に「ね」をつけるように意識すると、同じ内容でも印象は随分と変わってきます。また、「~と思いますがいかがでしょうか?」という言い方も、コミュニケーションが取りやすくなる言い回しです。難しい専門用語や敬語の多用は無機的な印象を与えるため、専門知識がなくても理解できる、平易な言葉を使いましょう。

②断定的な言葉を避ける

「絶対に」など、断定的な言葉は相手に威圧感を与えます。「意見を押し付けられている」と感じる人もいるでしょう。それも、「~だと考えられます」「私の経験では~という傾向があります」「あくまでこの意見は私個人のものであり、考え方は人によって違います」などと言い換えをすると、いくぶん穏やかな印象になります。

③話す姿勢にも気を配る

言葉は穏やかでも、足や腕を組んで話をする人には偉そうなイメージがあります。癖でつい足組みをしてしまう人もいますが、意見を主張するときには控えて、態度を改めましょう。また、人の目を見て話さない人は不信感を与えます。相手にまっすぐ向き合い、気持ちを込めつつ落ち着いたトーンで話をしましょう。早口や必要以上に大きい(小さい)声は落ち着きがなく、決して良いものではありません。相手の目を優しく見つめる、落ち着いたトーンで話すことを意識するといった姿勢も効果的です。

飼い主さんとのコミュニケーションの取り方については、以下の記事をぜひ参考にしてください。

関連記事:ペーシングで気持ちの良いコミュニケーションを図ろう

意見や主張を発信することは決して悪いことではありませんが、多少なりとも姿勢や話し方に気を配る必要があります。今回お伝えした内容をぜひ実践してみてください。

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