「セールスを展開する以上、顧客となる飼い主さんに気に入ってもらいたい」と感じるのは、動物病院に関わらず、すべての業界において言えることです。

しかし、ありきたりなセールストークでは飼い主さんの印象に残らず、商品を購入してもらうことはできません。飼い主さんの心を揺さぶるためには、インパクトのあるセールストークを意識するようにしてください。

今回は、自分のセールストークをワンランク上げるテクニックについて紹介したいと思います。

セールスの「振り子の法則」を知っていますか?

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「振り子」については、みなさん理科の授業で習っていて、ご存知かと思います。糸を垂らしたおもりを、定点にあるおもりに向かって放つと、移動した距離と同じ分だけ定点のおもりが動くという法則があったかと思います。つまり、高い位置からおもりを振り下ろしたときほど、定点のおもりを大きく動かすことができるのです。

この法則は、しばしばセールスにも応用されることがあります。私たちの感情は大きく、「快」と「不快」の2つに分けられますが、セールスで飼い主さんと会話をするときには、ただ単に「快」と感じる部分だけを伝えるのではなく、悪い部分も同時に伝えて、大きく相手の心を揺り動かします。多少セールストークテクニックが求められますが、相手の感情に揺さぶりをかけたほうが、振り子同様に振り幅が大きくなり、印象に残りやすいものです。上手くいけば、売り上げがぐんと伸びるきっかけになるかもしれません。

動物病院のセールスで取り入れたい最高&最悪のシナリオ

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仕事でもスポーツでも、うまくいかない期間が長いほど、うまくいった時の喜びは大きく、思い出として残りますよね。このときの人間の心理を、セールスにも応用してみましょう。

たとえば、トリミングサービス。最近動物病院で取り扱うことも多いトリミングサービスを飼い主さんに提案する際、まずは今のペットが抱える問題点や、買わなかった場合に起こりうる最悪のケースを伝えてみてください。

  • 「トリミングサービスをやらなければ、ペットはノミだらけになってしまう」
  • 「ペットが皮膚病になってしまうかもしれない」
  • 「血行が悪くなって、病気にかかりやすくなる」
  • 「毛玉だらけで、見栄えが良くない」

などです。ここまで伝えられても、まったく心が動かない飼い主さんは、そうはいないはずです。

この時のセールストークで大切なのは、自身の「声」と「表情」です。おもしろがっているような表情は論外ですが、やたら大仰な話し方をすると芝居がかったように見え、胡散臭い印象を与えます。日頃から大病を持つ動物にも、冷静に向き合っている獣医師の立ち位置を考えれば、平常心で淡々と事実を伝えるくらいがちょうど良いのではないでしょうか。

ひと通りの説明を終え、飼い主さんの動揺や不安を感じ取ったら、次にトリミングサービスのメリットを伝えていきましょう。

  • 「おどろくほどきれいになりますよ」
  • 「毛玉が取れるとかわいくなって、インスタのフォロワーが増えるかもしれませんね」
  • 「清潔で、どこに連れて行っても恥ずかしくありませんよ」
  • 「身なりがさっぱりしていると、健康で長生きできそうです」

などと伝えると、飼い主さんの気持ちが「快」の方向に振れ、「買いたい」という気持ちが強くなるはずです。「感動」といってもいいかもしれません。

ここで注意したいのは、メリットばかりを取り上げること。大げさにアピールをし過ぎると、誇大広告に取られかねません。また、購入後に「説明していたほど良くはなかった」と落胆されるおそれもあります。そのようなことがないように、メリットだけではなく、費用感やデメリットも伝えて、バランスを取りましょう。実際に購入された飼い主さんの口コミを紹介して、「こんなに良いものですよ」と根拠を示すと、これまた好印象です。

「振り子の法則」に基づいたセールスは、飼い主さんとの人間関係ができあがっている獣医師にこそおすすめです。この営業方法は、飼い主さんの感情を揺さぶることで購入導線を作っているため、ひとつさじ加減を誤ると失敗してしまうことも。

心配性の飼い主さんに、「最悪」のシナリオを伝えすぎてしまうと、かえって落ち込ませてしまうおそれがありますし、猜疑心の強い飼い主さんに「最高」のシナリオ推しをすると、「良いことしか伝えてこない」と思われてしまうことも。

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大げさな表現にいきがちな営業方法だからこそ、どの位置から振り子を落とすのか、的確に判断をしなければならないのです。そのためには、普段から積極的に飼い主さんとコミュニケーションを取り、相手のキャラクターを理解しておきましょう。もちろん飼い主さんだけではなく、ペットの状態や飼い主さんとの関係性についてもよく見ておく必要があります。そして、その飼い主さんに本当に必要と思われる商品やサービスだけを紹介するようにしてください。動物の命を預かる私たち獣医師が利益を最優先にして、ペットに合わないものを無理やり販売すると、本当に取り返しのつかない事態に発展する可能性もあるのです。絶対にそのようなことがないように、しっかりとペットには向き合いましょう。

 

良いことも悪いことも、両方包み隠さず言ってくれる獣医師は、飼い主さんからも信頼される傾向にあります。飼い主さんの個性と悩みを把握したうえで、最高&最悪のシナリオを描いてセールステクニックに活かしましょう。

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