今回は、仕事が多くて手が回らない時の対処方法についてお話をしていきたいと思います。
仕事が多すぎて手が回らないという悩みは、獣医師だけではなくすべての社会人に共通しているといっても過言ではありません。
仕事がないよりも幸せな悩みと思われがちですが、あまりに忙しすぎると体調を崩したり、精神的に余裕がなくなったりして、周りへの対応がおろそかになってしまうなど、さまざまな弊害があります。
そのようなことがないように、適切な仕事量を日々持続できるように業務を効率化していきましょう。
今回は仕事の効率化について考えていきたいと思います。
獣医師にとって理想的な仕事量とは?
獣医師の仕事の幅は広く、
- 日々の診療サービスの提供
- 取引業者との打合せ
- スタッフとの打合せ
- 経営管理
- 経営戦略の策定(キャンペーンの施策・広告出稿など)
などがあります。この他にも院内の清掃や備品の管理、獣医師同士の会合、新しい設備の勉強など、細かい業務を取り上げたらキリがありません。すべてあなた一人で担うのは非常に無理のある話ですが、責任感が強いあまりについ自分で引き受けてしまうという人も少なくありません。
「オーバータスクであることはわかっている。でもどの仕事を減らしたら良いのかわからない」という方は、まず業務全体に優先順位をつけてみましょう。
私が考えるに、獣医師にとっての優先業務のトップはやはり動物の診療サービス。ここがおそろかになっていると動物病院全体の評判を落とすことになりますし、誤診や病気の見落としによって大問題につながる可能性があります。たとえ忙しくても、この業務だけは自分の目できっちりと遂行しましょう。
次点の優先事項としては、取引業者やスタッフといった自分を取り巻く相手との打合せが挙げられます。ここを疎かにしていると相手からの信頼が失われ、気が付いたときには離反や退職を招いてしまうことも。最終的な決定権は経営者である獣医師にあるため、現場任せにしておくのではなく、定期的な打合せ時間を確保しましょう。
反対に比較的人に任せやすい業務としては、院内の備品管理や清掃が挙げられます。スタッフに役割分担をするのも良いですし、掃除が煩わしい箇所には外注業者を呼んでピカピカにしてもらうと良いでしょう。整理整頓や清掃はつい後回しになってしまいがちですが、動物病院の印象を左右する重要な作業です。それもプロにアウトソーシングすることで、素人が掃除をするよりも衛生的になります。
意外と人に任せやすい業務であるのが、経営管理や経営戦略の策定。プロのコンサルタントに依頼することで新たな戦略を提案してもらえるようになり、自分で頭をひねる必要がありません。経営管理にしても、中途半端に自分でこなすよりも税理士や行政書士に一任してしまったほうが心に余裕が生まれます。
今多くの業務を抱えていると感じる方は、ぜひ他の人を頼ることを検討してみてください。
仕事そのものを見直す
「スタッフに役割分担をしたり、アウトソーシングサービスを頼んでいたりするのに、全然余裕が生まれない」という方は、一度そもそもの仕事内容を見直してみてください。そしてそのなかに「別にわざわざ獣医師がする必要がない」「やってもやらなくても経営に影響はない」と思えるタスクがないか、よく考えてみましょう。もし、ひとつでも不要と思える業務があれば、思い切ってその仕事を切りましょう。意外となくしても問題なく、動物病院の運営を継続できるかもしれません。
「やっぱり必要な仕事だ」と感じたら、その際に復活したら良いだけの話です。最初は思いきりが必要ですが、仕事そのものを減らすことで新しい気づきを得られたら、きっと清々しい気持ちになれるでしょう。
ECRSの4原則で仕事の無駄を発見しよう
工場などの生産管理の工程でよく使われる考え方に「ECRSの4原則」があります。
これは
- E:Eliminate/排除(=不要な業務を捨ててみる)
- C:Combine/結合(=複数の業務をくっつけてみる)
- R:Rearrange/入れ替え(=作業や場所の順序を変えてみる)
- S:Simplify/単純化(=もっと簡単にしてみる)
の4つのステップを踏んで、仕事のスリム化を図る方法です。
今回紹介した「仕事そのものをなくす」考え方は「E」に分類されるものですが、この際にはまず業務を
- 主体業務
- 付随業務
- ムダ作業
に分別することから始めます。③は言うまでもなく不要な作業ですが、②のなかにも不要なタスクが含まれているものです。それでも仕事が多くて手が回らないようであればC→R→Sの順番で、少しずつ業務の効率化を目指しましょう。
掃除をすると気持ちがすっきりするように、仕事が効率化されると晴れ晴れしい気持ちになります。仕事に余裕が生まれると心にも余裕が生まれ、良い雰囲気が動物病院全体に漂います。仕事の整理だけでも、ぜひ今日から実践してみてください。