私たち獣医師は、動物や飼い主さんと向き合う時につい専門用語を使ってしまうことがあります。
基本的には飼い主さんにも伝わるような、平易な言葉に直していますが、病状や治療方法を正しく理解していただくためにやむを得ずに専門用語を用いているのです。
しかし、大勢の人の目に触れる広告を打ち出すときには、専門用語や難解な言葉は極力使用しないようにしたいものです。
今回は広告を打ち出すときのポイントや選ぶべき言葉についてご説明したいと思います。
なぜ難しい言葉は広告に不向きなのか
私が知っている獣医師や医師のなかには、「病状を重く受けてもらうために、診察時にはあえて専門用語を使用している」という方がいます。確かに難しい言葉には深刻なイメージがあり、ペットの病気やケガを軽んじている飼い主さんにインパクトを与えられるかもしれません。
それでもこれが広告となるとどうでしょう。動物病院に来院する飼い主さんのほとんどはペットを飼っていますが、広告を見ている人はそうとは限りません。ペットの飼育を考えている人もいれば、まったく動物に興味がない人もいるでしょう。大人だけではなく、子どもも見ています。
動物病院の客層ではない方にも興味を持っていただくためには、誰にでも伝わるやさしいフレーズを取り入れることをおすすめします。今はペットを飼っていなくても、あなたの動物病院の存在を認知するきっかけとなり、後々ペットを飼い始めたときに思い出してくれたり、知人に紹介してくれたりするかもしれません。
目につきやすい広告のフレーズは、誰にでも伝わる言葉を使うことで、より多くの人の心に刺さるようになります。
わかりやすさ=ビジュアルとは限らない
わかりやすい広告を意識したときに意外と多いのは、ビジュアル頼みになってしまうことです。ペットの画像をアップで写せば、それでインパクトのある広告を出せたと判断してしまうのですね。しかし、ビジュアルに振り切った広告の出稿はあまりおすすめできません。
理由はいくつかあります。まず、ビジュアル頼みの広告はマネされやすく、良い構図の写真が撮れたと思っても、他の動物病院に模倣されてしまうおそれがあります。パッと見が同じ写真であれば他院との差別化を図れず、集客効果が薄れてしまうでしょう。また、画像だけではメッセージが伝わりにくく、あなたの動物病院の魅力を十分にアピールすることができません。
わかりやすいはずのビジュアルが、かえって広告を複雑化しています。広告を出す際には確かにビジュアルのインパクトは必要ですが、それだけではなくキャッチフレーズやテキストにも気を配るようにしましょう。
中学校一年生を意識した言葉選びを
「誰にでもわかる言葉」と言っても、あまりに幼稚な言葉は稚拙な印象を与えるため、信頼度が問われる動物病院の広告には不向きです。わからない人が一定数存在し、時代の流れとともに死語となり得る流行語の使用も避けましょう。
難しすぎず、簡単すぎない言い回しを考えるときには、中学校一年生の姿をイメージしてみてください。大人すぎず、子ども過ぎない中学一年生の平均的な語彙力に合わせてフレーズを考えましょう。漢字を用いるときにも同様で、あまりに難解であったり、常用漢字表に載っていなかったりする漢字は読みづらく、敬遠される傾向にあります。
ひらがな・漢字・カタカナはバランス良く
文章で表記される広告は、パッと見たときの読みやすさも重要です。言葉自体はわかりやすいものであっても、通常漢字で表記する言葉をひらがなで表記していたり、その逆であったりすると読みづらさを感じます。
また、ひらがなばかり、漢字ばかりの文章にも読みづらさを感じます。丸いイメージがあるひらがなばかりのフレーズは幼稚な印象となり、反対に硬いイメージがある漢字ばかりの文章は読者を疲れさせてしまいます。
理想的な文章のバランスは、漢字3割に対してひらがな7割と言われています。キャッチフレーズや動物病院の説明文を考える際には、このバランスを考慮して作成しましょう。漢字とひらがなだけで単調なイメージになるのであれば、アクセントとしてカタカナを取り入れるのもおすすめです。
幅広い人に見られる広告だからこそ、言葉選びは重要です。今回はわかりやすさをテーマにした言葉選びのコツを紹介しましたが、差別表現や批判的なフレーズ、蔑称の使用は言うまでもなくNGです。最近はちょっとした言い回しが炎上につながってしまう事例が多いので、誰が読んでも気持ちの良い言葉選びを意識するようにしてください。
読んでいて気持ちが高揚する、「この動物病院に行ってみたい」と思える広告を制作することで、集客力は大きく変わっていくはずです。広告の出稿を検討している方は、ぜひ今回の記事を参考にしてください。