突然ですが、あなたが経営する動物病院に、企業理念や経営理念はありますか?
「そもそも動物病院は企業ではないし…」「スタッフ数名の小さな動物病院だから必要ないでしょう」とおっしゃる院長は少なくありません。
しかし、企業理念は経営者の考えを従業員に周知させ、モチベーションを上げるために非常に重要な要素であると考えます。
たとえ個人病院であっても経営者である以上、企業理念や経営理念の策定は欠かせません。
今回は企業理念が大切な理由と決め方、そして注意点についてお話ししていきたいと思います。
企業理念について考えてたことがなかったあなたも、この機会にぜひ一度考えてみてはいかがでしょうか。
企業理念が重要とされる理由とは
企業理念とは、経営者の信念に基づいて、その企業の活動方針を明文化したものです。よく似た言葉に、「経営理念」という言葉がありますが、こちらは企業が事業を拡大するための方針や目標を明文化したものです。松下電器の創業者である松下幸之助は、「企業経営の成否の50%は経営理念の浸透度で決まる」と言っていたほど、経営理念も企業理念同様に重要な考えです。
企業理念と同じ意味を持つ言葉としては社是、社訓、行動指針、そしてミッションなどがあります。企業理念を明文化することによって、あなたの企業が何のために、誰のために存在しているのか、自社ならではの強み、そして目指すべき姿について理解することができます。しっかりとした企業理念を策定できていれば、診療サービスやスタッフの教育、人材採用など、さまざまなシーンであなたの動物病院らしい方針を打ち出せるようになるのです。
また、企業理念を策定しておくことで、スタッフも自分が働いている動物病院の方針を理解できるようになり、業務のスピードアップや精度アップを期待できます。例えば新商品をスタッフに考えてもらうとなったとき、「お値打ちだけど質はそれなりのもの」と「高品質だけど少し値段が張るもの」のふたつがあったとしましょう。もしあなたの動物病院が価格よりも品質を重要視していることを企業理念として示しておけば、スタッフも「値段よりも質を重視して新商品を決めよう」と判断できるのです。
このように企業理念の策定はあなただけではなく、周りのスタッフにも良い影響を与えます。動物病院の理想像が明確にされていれば、スタッフのするべきことが可視化されていきいきと働けるようになり、動物病院全体の士気も上げていけます。企業理念を用いて、あなたの動物病院の価値観を採用活動時に示していけば、採用のミスマッチの予防にもつながるはずです。
企業理念の理想的な決め方
企業理念の大切さを理解したところで、ここからは実際に企業理念を決める方法についてお話ししていきます。企業理念はスタッフに相談するのではなく、まずは経営者であるあなたが一人で考えてみましょう。複数人に相談すると軸がぶれやすくなりますし、あなたの経営へのモチベーションも上がっていきません。「自分の動物病院だから」と、責任をもって決めることで、より自分の動物病院への思い入れと責任感が増します。
企業理念を決める時には、まず自分たちが何のために、誰のために経営しているのかをじっくり考えるようにしてください。それと合わせて、将来的に目指す姿についても考えていきましょう。そして最後に、自分たちの動物病院ならではの強みをアウトプットします。他院とかぶらない強みがあればあるほど、あなたの動物病院の個性が強調されます。
これらをまとめたら紙に文字起こしして、文言をコンパクトにまとめていきましょう。言葉がうまくまとまらないようであれば、他企業の企業理念を参考にすると書き方のコツがわかってきます。理想像と方向性、そして強みの3つをつなぎ合わせて決めていけば、おのずと企業理念が完成するはずです。なかなか理念を決められないという方であれば、「第一主義」「幸せのために」など、多くの企業で使われているフレーズを用いると良いでしょう。最初は他院のマネだと思っても、方向性がきちんと合っていれば次第になじんでいくはずです。
企業理念を決めるときの注意点
企業理念を決めるときに一番注意したいのは、誰も企業理念を理解していない、そもそも存在さえ知らないという状態になることです。これでは苦労して理念を決めた意味がありません。理念を正確に理解してもらうためには、定期的に企業理念に関する報告会を開いたり、人事評価に取り入れたりする手段が有効です。経営者であるあなた自身が、理念を話す場を設けるのも良いでしょう。企業理念に対する理解を動物病院全体で深めることは、経営改善にもつながっていくはずです。これまであまり意識していなかった方も、この機会にぜひ企業理念を策定してみてはいかがでしょうか。