このブログでもしばしばご紹介しているように、自分の動物病院の広告を打ったり、キャンペーンを実施したりする際には、ターゲットの設定が極めて重要です。多くの動物病院が「ペットを飼っている近隣住民」を基本的なターゲットとしていますが、これからの時代、競合との差別化を図るためには、一歩踏み込んだターゲット設定が不可欠です。
今回は、競合他社を分析し、「選ばれる動物病院」になるための新しいターゲット設定のポイントについて、具体的な施策と合わせて深掘りしていきましょう。
競合他社にはない視点でターゲットを設定しよう
動物病院集客のターゲットの傾向としては、ペットを飼っていることはもちろん、
- 自院の近所に住んでいる人
- 経済的に余裕のある人
- 専業主婦や自営業で比較的動物病院に足を運びやすい人
- ペットを可愛くトリミングして欲しいと考える若い女性
といった人物像が挙げられます。
しかし、これらの層は多くの動物病院が狙うため、競争が激化しがちです。限られた飼い主さんを奪い合う結果、価格競争に陥ったり、サービスの質を維持するのが難しくなったりすることも。これでは、動物病院業界全体のイメージダウンにも繋がりかねません。
そこで、一度固定観念を捨てて、あなたの動物病院でこれまであまり注目されてこなかった飼い主さんに目を向けてみましょう。また、競合他社ではあまり見られないニッチな商品やサービスを取り入れ、それらを求める飼い主さんを一気に絞り込むのも一つの手です。「珍しいサービスを提供している動物病院」として注目されれば、遠方からでも足を運んでくれる飼い主さんが現れる可能性も高まります。そうなれば、もはや近隣の飼い主さんだけにターゲットを絞り込む必要はありません。ターゲット設定のヒントは以下の3つです。
- ライフスタイル: 共働き世帯、高齢者世帯、単身世帯など
- ペットの種類: 特定の犬種・猫種、エキゾチックアニマルなど(専門性が高まる)
- 特定の悩み: 持病を持つペットの飼い主、食に強いこだわりを持つ飼い主など
こうした新しい視点を持つことで、激しい競争から抜け出し、独自のポジションを確立できるでしょう。
また、ペルソナの設定については以下の記事が参考になりますので、ぜひ一度読んでみてください。
関連記事:ペルソナづくりはマーケティングの基本!作り方を徹底解説
新しいターゲットを定めたら何をすべき?
少し違う視点から新しいターゲットを定めたら、そのターゲットに合わせた広告やキャンペーンを打ち出しましょう。単に施策を行うだけでなく、ターゲットが「何を求めているか」「どこで情報を収集しているか」を深く理解することが重要です。
その際には、広告やダイレクトメールのデザインにもターゲットを意識しましょう。動物病院では温かみや清潔さを感じられる広告が多いですが、あえて男性寄りのシンプルなデザインにすると受けがいいかもしれません。
広告の作り方については、以下の記事で説明しています。ぜひ一度目を通してみてください。
関連記事:広告と広報の違いとは?説得力のある広告をつくるコツを紹介
利便性の向上とサービス改善で新しいターゲット層を惹きつけよう
新しいターゲット層の獲得には、彼らが来院しやすい環境を整備することが不可欠です。どんなに魅力的なサービスを打ち出しても、物理的・時間的な障壁があれば、なかなか足を運んでもらえません。
まず、遠方からの来院を促すのであれば、十分な駐車スペースの確保は必須です。これは単なる駐車場の有無だけでなく、停めやすさや台数も考慮に入れる必要があります。
次に、多忙な層や電話でのやり取りを好まない層にとっては、オンライン予約・問診システムの導入が大きなメリットとなります。24時間いつでも予約・問診が可能になることで、飼い主さんの利便性は飛躍的に向上し、来院へのハードルが下がります。
さらに、ターゲット層のライフスタイルに合わせた診察時間や休診日の見直しも重要です。例えば、共働き世帯が多いエリアであれば、夜間診療や週末診療の充実が求められるでしょう。それぞれのターゲットが「いつ、どのように」動物病院を利用したいと考えているかを深く理解し、それに合わせた柔軟な対応を検討してください。
新しいターゲット層へのベネフィットの考え方
新しいターゲット層を開拓したとしても、そこで何かしらのベネフィットを感じてもらえなければリピーターにはなっていただけません。これまで自分の動物病院の強みだと思っていたものも、ターゲット層が変わればそうではないことも。
例えば女性に好まれる傾向が強いかわいいデザインの商品を売りにしている動物病院が、その商品を男性の新規飼い主さんに訴求できるとは限りませんよね。新しいターゲットを獲得する流れであれば、それに合わせて新しいベネフィットを考えなければなりません。
新しく男性向けの商品を販売したり、既存の商品よりもワンランク上の高所得者層向けの商品を設置したりすることで、高所得層など新しい層へのアプローチが可能になります。プライベートカウンセリングルームの設置やホームケア指導士派遣の導入はその一例です。新しいチャレンジをしたことで思わぬ商品に人気が出れば、経営のヒントが見つかるかもしれません。
新しいターゲットを考える時の注意点
新規の飼い主さんを獲得することは、動物病院の生き残りを考えたときに必要な要素ですが、注意点もないわけではありません。新しい飼い主さんにばかり注目していると、今足を運んでくださっている飼い主さんへの配慮がおざなりになってしまうことも。
「カラーがガラッと変わってしまい、通いにくくなった…」という話は、動物病院に限らず、どこの店舗や病院でもよく耳にします。新しいターゲット向きのサービス・商品に走りすぎて、懇意にしてくださっているリピーターを逃すことがないように、双方へのフォローを忘れないようにしてください。長期的に利用してくださる既存顧客向けの限定特典や、ポイントシステム、長期利用割引など、リピーターを大切にするための具体的なプログラムの導入がおすすめです。定期的なニュースレターや、個別のアドバイスを通じて、既存顧客との関係性を維持することも重要です。
なお、リピーターの大切さについては、以下の記事で触れています。
関連記事:動物病院のリピーターは新規顧客の獲得よりも低コスト
時代がめまぐるしく変わるなか、同じ飼い主さんがずっと変わらずに通い続けるということはほとんどありません。 飼い主さんの離反や減少を防ぐために、時にはターゲットを見直して新しい施策を打ち出すことをおすすめします。視点を変えることで、経営のヒントが見つかるかもしれません。