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時代の流れはめまぐるしく、もはや「10年ひと昔」というよりも、「2、3年ひと昔」だと感じています。

特にAIの活用、オンライン診療、SNSでの情報発信などは、私たち動物病院経営者のスタイルを大きく変えたといっても過言ではありません。今後はさらに進化していくことでしょう。

現在、動物病院の経営がうまくいっている方も、今が安定しているからこそ、未来への投資として現状把握が重要だと考えています。とはいってもなかなか客観視するのは難しいものです。

今回は動物病院における課題の見つけ方と、改善策の打ち出し方について考えていきます。

まずは自分の動物病院の課題を見つけよう

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動物病院の課題を考えるときには、マッキンゼー社が提唱している「企業の課題の見つけ方」が役立ちます。こちらでは、企業の主な課題は

  • 戦略(strategy
  • 組織(structure)
  • システム(system)
  • スキル(skill)
  • 人材(staff)
  • 社風(style)
  • 価値観(shared value)

の7つにあるとされています。これは企業だけではなく、動物病院の経営資源の根幹をなすものであり、課題もここに隠れていることが多いものです。この7つのうち、戦略・組織・システムの3つはハード面であり、比較的簡単に現状を把握できます。問題はスキル・人材・社風・価値観の4つのソフト面です。この4つは簡単に変更することができず、課題として認識できても解決に時間を要する傾向にあります。そのため前者は短期的な、後者は長期的な改善計画案を出していく必要があります。

課題の見つけ方については、以下の2記事もきっと参考になるはずです。ぜひ参考にしてください。

関連記事:課題設定力を高めることでビジネスはうまくいく
関連記事:課題発見力を高めて動物病院の経営を見直そう

ハード面の課題の見つけ方

経営資金や売上利益、また一般管理費などのコストにまつわる課題は、もっとも認識しやすいものです。まずは、数値データから客観的に現状を把握しましょう。

例えば、「売上は伸びているが、人件費や仕入れコストが大幅に増加している」といった状況は、利益率の低下という明確な課題を示唆しています。また、「来院数は増えているのに、患者さんの待ち時間が長い」という場合は、予約システムや受付業務の効率が悪く、業務フローに課題が潜んでいる可能性があります。

KPI(重要業績評価指標)やOKR(目標と主要な結果)といった指標を数値化し、過去と現在の数値を比較してみると、ご自身の動物病院の強みや弱みを即座に理解できるでしょう。どんなに人間関係が良好で飼い主さんからの評判が良くても、経営が苦しければ動物病院を維持していくことはできません。そのため、まずは経営状況から見直していくことをおすすめします。

ソフト面の課題の見つけ方

組織全体の経営状況を確認したら、次はスタッフ個人の評価や病院全体の雰囲気を考えてみましょう。ハード面とは異なり、数値化しにくいのがソフト面の課題です。

例えば、「スタッフの知識や技術にバラつきがあり、サービスの質が一定しない」場合は、スキルアップの仕組みや教育体制に課題があると考えられます。また、「スタッフの定着率が低く、常に人材募集をしている」状況であれば、職場の人間関係や待遇、キャリアパスなどに不満を抱えている可能性があります。

さらに、「院内に不満が溜まりやすく、スタッフ間のコミュニケーションが不足している」といったケースでは、情報共有がスムーズに行われず、業務効率の低下や医療ミスのリスクにもつながりかねません。

このようなソフト面の課題は、目に見えにくく、気づきにくいことも多いものです。しかし、これらの課題は、飼い主さんからの信頼やスタッフのモチベーションに直結するため、放置せずに定期的なヒアリングやアンケートなどを通じて、現状を把握することが大切です。

問題解決策①定期的な勉強会や研修を実施する

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「今は経営状況が安定しているから大丈夫」という雰囲気が動物病院全体に蔓延すると、スタッフの士気が下がってしまいます。ルーティンワークを惰性でこなすようになり、問題が起きても気づかないことが多いのです。「気づいたら時代から取り残され、他の動物病院と差がついてしまった」ということがないように、定期的にスタッフミーティングや勉強会を実施して、スタッフ全員からの意見を募りましょう。他の動物病院の成功事例を、自分の動物病院にも取り入れられないのかを話し合うことで、現状を打破し、マンネリ予防策にもつながります。

また、成功事例を共有したり、「どうすればもっと良くなるか?」という前向きな議論を取り入れたりすると、スタッフも積極的に参加しやすくなるでしょう。なお、会議を進める際のポイントについては、以下の記事をぜひ参考にしてください。

関連記事:【動物病院の会議の進め方】ファシリテーターのポイントを徹底解説

問題解決策②業務フローを見直す

数字やスタッフの人間関係に気を取られて、意外と見失いがちなのが業務フローの課題です。機械に任せて効率化できる部分をいつまでも属人化していたり、数十分で終わる作業に何時間もかけていたりすることはありませんか。業務フローも一度定着してしまうと、課題があっても気づきにくくなります。そのため、現場の意見を集約しながら、今のPDCAに問題はないかを一度見直してみましょう。

課題の見つけ方については、以下の記事が参考になりますので、ぜひ目を通してみてください。

関連記事:結果が出ない時こそプロセスから原因を探るべき

問題解決策③配置転換やミーティングで風通しの良い動物病院をつくる

退職率が増加したり、動物病院全体にギスギスした雰囲気が漂っていたりする時には、至急改善策を考えましょう。「経営自体には関係がないから」といって放置してはなりません。

なぜなら、スタッフ間のギスギスした雰囲気は、そのまま飼い主さんにも伝わってしまうからです。「居心地が悪いから行きたくない」と、結果的に客離れにつながります。また、職場の雰囲気が悪くなると、スタッフのモチベーション低下や情報共有の不足を引き起こし、ひいては医療ミスのリスクを高めることにもなりかねません。

このような人間関係のトラブルは、気づきにくい場合もあります。相性が良くないスタッフ同士は配置を変えたり、教育担当者を変えてみたりすることで、雰囲気が変わってくるはずです。

さらに、解決策として効果的であるのが、定期的な「1対1のミーティング(1on1)」です。これは、院長やリーダーがスタッフと個別に話し合う時間を設けるもので、単なる業務連絡ではなく、現状の悩みや不安、今後のキャリアパスや目標に対するフィードバックなどを話し合う場として活用します。

スタッフが抱える課題を早期に発見し、解決策を一緒に考えることで、信頼関係が深まり、風通しの良い動物病院をつくることができます。ミーティングの開き方については、以下の記事でも触れていますので、ぜひ参考にしてください。

関連記事:【プレゼンのルール】動物病院の会議は基本的に全員で行うこと

今だけではなく将来の課題も見据える

動物病院の課題を解決するためには、現状の把握が何よりも大切です。しかし、あまりにも短期スパンで見ると、数年後にはまた体制を変えなければならないことも。特に経営方針や理念はそう簡単に変えられるものではないため、長期スパンで見て、3年後や5年後はどのような動物病院になっていたいのかを想像しつつ、課題の解決策を考えていくことをおすすめします。また独りよがりにならないように、スタッフや飼い主さんからアンケートを募り、客観的な視点を取り入れるようにして下さい。 

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