動物病院の経営改善の考え方

「頑張っているのになぜか動物病院の経営がうまくいかない…」と見直しを図るときに、なぜかゼロベースで経営の見直しをすることを勧めてくるコンサルタントが多いような印象を受けます。

ゼロベースとは、これまでの実績や基底概念を一切ないものとして、経営方針を根幹から見直す方法のことです。明らかに病院の方針と世の中の流れが違っていれば、一度これまでの方針をなかったことにして、根本から見直したほうがいいかもしれません。
しかし、ゼロベースの経営戦略というのは諸刃の剣で、私は決しておすすめできるものではないと考えています。

なぜなら前提を無視して動物病院を経営することなど、ほとんどできないからです。医療機関である動物病院を経営していくうえでは「獣医療法」などの法律に則って経営しなければなりません。
たとえば一般企業が普通に行っている広告も動物病院が打つ場合 アピールできる経歴や 技能療法については決まりがあります。そういった点も考慮すると、ゼロベースで経営戦略を練るのはかなり至難の技と言えるでしょう。

動物病院の経営を見直すときには、自院、他院にかかわらず失敗例を参考に改善していくことがベストと考えます。
どんなところに着目して、どのような改善策を取っていけばいいのか。今回はそれをお伝えしたいと思います。

1.動物病院の経営あるある

日本で飼育されているペットの数は2009年をピークに減り続け、2018年はピーク時よりも400万頭も少ない900万頭が飼育されているのが現状です。 ペットの数の減少は今後も予想され、動物病院同士で今後飼い主の奪い合いが始まることが予想されます。そういった時にも安定した経営を続けられるよう、あるある事例を参考にしてください。

① 高度医療機器を充実させすぎる

現在ペットを家族のようにかわいがる飼い主が増えてきたことで、病気になった時にも高度医療を希望する家族が増えてきています。だからといって、動物病院設立時から高額な医療器具を完備するのは、かなりリスキーと言えるのではないでしょうか。
考えてみてください、通常動物病院開業時には2,000万円もの医療設備が発生すると言われていて、リースでその金額を返済していきます。それも利用してくれる飼い主がたくさんいればいずれは返済できるでしょうが、そうでなかった場合リースの返済が苦しくなるばかりです。これでは意味がありませんよね。開業時に一式をばっちりそろえて最新の病院であることをアピールしたい気持ちは分かりますが、集客度合いを見てから調整していったほうがリスクは少なくなります。

② 広告戦略が弱すぎる問題

今はネット広告が一般に浸透していて、誰でも気軽に広告を打てる時代になりました。わざわざ広告や新聞社に頼まなくても自分でFacebookなりInstagramなりアカウントを開設して動物病院の存在をアピールすることができるのです。しかし、実際に有効な広告を打てている動物病院はそう多くない印象を受けます。そういう動物病院には何年間も更新していなかったり、アピール文が弱かったりするところが多いようです。
「病院が広告を打つ必要なんてない」と考える人なのかもしれませんが、今の時代、広告を打たなければ、派手に打っている動物病院の方に注目が集まるばかりで、差がどんどん開いていきます。「これまで広告活動を行っていなかった」「最初にビラをまいて配っただけ」などという人は、一度広告戦略を考え直してみると良いでしょう。

③ 新規ばかりでリピーターが増えない問題

患者の登録数自体は多いけれどリピーターが少ないという場合、その動物病院自体に問題がある可能性が高いものです。治療費が高かったとしても、イメージの良い動物病院にはだいたいリピーターがつきます。病院内を清潔にする、受付も含めたスタッフ全体の対応に問題はなかったかどうかを確認しましょう。また、動物病院が増えるなか、こちらからアピールしなければ、ちょっとしたタイミングですぐに他院に取られてしまいます。 定期的にダイレクトメールやハガキを送ったり、来院時には次回の予約を促したりするなど、積極的に次回の来院を促すようにしたいものです。

④ 飼い主に寄り添った提案をできていない

診療をしている時に飼い主から怪訝な顔をされたことはありませんか。飼い主は獣医師の想定を超えて、動物に無知なことがあります。ちょっとした専門用語や知識などにも「?」となってしまう人って意外と多いものです。なんとなくコミュニケーションがうまくいっていないと思ったら説明の仕方を優しくしたり、分かりやすいイラストを用意したりして少しだけ飼い主に寄り添ってみてはいかがでしょうか。

⑤ 他院と交流をはかって違いを見つける

経営の改善点と言っても、なかなか自分では見つからないということもあります。これまで、人の意見に耳を傾けてこなかったというのであれば、他院の獣医師と交流をしたり、懇親会に参加したりして、意見を聞いてみるのもひとつの手です。成功している動物病院の経営者の話を聞いて、参考にできそうなところはいくつでも、ひとまず自分の動物病院に取り入れてみることで、なんらかの変化が訪れるかもしれません。

2、ゼロベースではない改善なら始めやすい

立地や、一度契約を結んでしまった医療機器のリースなど、取り返しがつかないものもあるなかで、動物病院経営の改善をゼロベースにして考えるのは難しいもの。ならば過去の結果や失敗から改善点を見つけていけば、着手すべき点がクリアになるはずです。
「最近動物病院の経営に行き詰まりを感じている」「近くにできた動物病院に利用者を取られている」と感じている院長先生は、一度見直してみてはいかがでしょうか。

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