「締め切り効果」という言葉を聞いた覚えがある方は多いのではないでしょうか。
これは締め切りがあると集中力を発揮し、なんとかそれを守ろうと頑張る心理のことです。
夏休みの宿題を始業式直前に集中してこなす子どもや、試験直前にまとめて勉強する学生にはこの締め切り効果が見られます。
締め切り効果を発揮するのは何も若者だけではありません。
社会人でも締め切りを設けることで集中力が格段にアップし、納期をきちんと守ろうと動けるようになります。
今回はタスクに締め切りを設けることの大切さについて考えてみたいと思います。
パーキンソンの法則に見る締め切りの重要性
イギリスの海軍歴史学者であるシリル・ノースコート・パーキンソンは、1957年に刊行した著書「パーキンソンの法則:進歩の追求」のなかで、次のふたつの法則を紹介しています。
- 仕事は自由に使える時間を全て満たすように拡大していくもの
- 支出の額は、収入額に達するまで膨張するもの
すなわち、納期に余裕があったとしても、人間はその納期までの時間を目いっぱいかけるように行動を拡大させてしまう生き物であるということです。本気で取り組めば1時間で終わる仕事を、納期ぎりぎりまでかけて終わらせた経験がある人は多いのではないでしょうか。これは仕事だけではなく、お金についてもまったく同じことが言えるとパーキンソン氏は唱えています。
逆に言えば、締め切りを設けることによって、人は少々複雑な仕事でもタイムリミットを意識して動けるようになるのです。このことは「締め切り効果」からもわかりますね。
「なかなか思い通りに仕事を進められない」「後回しにしてしまう仕事が多い」という方は、一度タスクに締め切りを設けることから始めてみてはいかがでしょうか。
締め切りを設定するメリット
締め切りを守れたときには、すっきりした気持ちになれませんか。相手との約束を守れたという事実によって、自己肯定感を高められるのです。それ以外にも締め切りを設定するメリットはいくつかあります。代表的なものを紹介しましょう。
相手からの信頼を得られる
締め切りを守る最大のメリットは、この点にあると私は考えます。信頼は知識や技術で得られるものでなく、相手に誠意を示すことでしか得られません。
締め切りを毎回きちんと守っていれば、相手からは「仕事を安心して任せられる人」と認識されるようになり、新しい仕事も任せてもらえる可能性があります。スタッフに対しても締め切りを守っていれば、「有言実行の誠実な上司」と捉えられ、院内の結束がより強固なものとなるでしょう。
やるべき仕事を見える化できる
締め切りが決まっていないタスクは、つい「手が空いたときに始めたらいいや」と思い、後回しにしてしまいがちです。「いつかやろう」と思ったものの、いまだに手を付けていないタスクが誰にでもひとつやふたつあるのではないでしょうか。
それもすべてのタスクに締め切りを決めておくことで、期日が近いものから手を付けていけるようになります。あなたがやるべき仕事が見える化されることで、スムーズに業務が進むようになるでしょう。
効率よく仕事ができる
タスクに締め切りを設け、やるべき仕事を見える化することによって、仕事の全体像を把握できるようになり、作業の抜け漏れを予防できるようになります。
タスクをこなす順番を決めれば仕事の効率化を図れ、期日内に業務をこなそうとする意識も高まるでしょう。
締め切りを守るためのポイント
「締め切りを設けても、守れるかどうかが不安」という方がいるかもしれません。確かに自分自身が決めた締め切りはどうしても甘くなりがちで、延長をしたくなることもあるでしょう。そのようなことがないように、締め切りを必ず守る人が意識しているポイントを紹介します。
締め切りの数日前の完成を目指す
締め切りぎりぎりで仕事をこなす人は、いつも直前に手を付ける傾向があります。しかし、慌ててこなす仕事にはミスがつきものです。また、体調不良や家庭の事情といったトラブルが締め切り直前に発生してしまう可能性もあります。そうした事態を避けるために、タスクには締め切りの直前ではなく、数日前までに着手するようにしましょう。気持ちにも余裕が生まれ、ミスが少なくなるはずです。
タスクを細かく分散して管理する
想定以上にタスクをこなすのに時間がかかってしまう人は、締め切りの設定が甘い可能性があります。適切な締め切り日を設定するためには、まずタスクを細かく分散して、どの工程にどれくらいの時間がかかりそうなのか、じっくりと考えてみましょう。例えば「新商品の企画をひとつ考える」というタスクには、マーケティングやデザインの考案、発注先の選定など、いくつかのプロセスがあるはずです。それぞれの工程にどの程度の時間を要しそうなのかを考えて締め切りを設定しましょう。
締め切り厳守は非常に大切ですが、締め切りがあることで急ぎではない仕事も早く終わらせようとしてしまう「単純緊急性効果」には注意する必要があります。締め切りを決める際には、タスクの難易度を確認したうえで適切に設定するようにしましょう。