今回のブログも前回に引き続き、目標の設定方法についてお話ししたいと思います。
前回はワクワクする目標を設定することが大切とお伝えすると同時に、大きすぎる目標は挫折しやすいからNGと説明しました。
しかし、あまりに小さな目標だと簡単に達成できてしまい、それはそれで仕事へのモチベーションが上がっていかないものです。
高すぎず、低すぎない、達成率50%程度の目標の設定がベストだと私は考えます。
では、そのような目標はどのように見つけたらよいのでしょうか。
今回はビジネスシーンでも役立つ「ストレッチ目標」の設定方法について考えたいと思います。
知っておきたい「達成動機理論」という考え方
達成動機理論という言葉を聞いたことがある人は、おそらくそんなには多くないはずです。知らないあなたのために説明すると、これはアメリカの心理学者、ジョン・アトキンソン教授が提唱した理論のこと。人は「目標を達成したい」という動機を持っている生き物ですが、一方で「失敗したくない」という「失敗回避動機」も持っているとされています。
達成動機と失敗回避動機のバランスは人によって大きく異なりますが、ある程度達成動機が高い人であれば、50%程度の成功が見込まれる目標の設定がベストです。チャレンジのし甲斐もありますし、達成したときには満足感を得られて自信につながっていくでしょう。
反対に失敗回避動機が極端に高かったり低かったりする人には、達成率50%の目標はやや不向きです。努力を要する達成率50%の目標は「努力をしなかったこと」を未達の言い訳にしてしまうからです。そのため、最初は達成率が50%よりも高い目標を設定して成功を積み重ね、自己肯定感を高めていきましょう。そうすることで少しずつ失敗を恐れないメンタルになっていけるはずです。
ストレッチ目標をスタッフと考えてみよう
達成動機理論でお話した通り、目標の設定の仕方は人によって異なるものです。一般的には達成率50%程度の目標が理想的とされていますが、一人一人に合わせた目標の設定がベストと言えます。
ここまで考えたときに取り入れたいのが、ちょっと努力をすれば達成できる「ストレッチ目標」という考え方です。例えば現状月に100人の飼い主さんを診察しているのであれば、次は月130件を目標とするなど、無理のない範囲で設定するのがストレッチ目標の基本です。
ストレッチ目標では、目標設定者が持っているスキルを最大限に引き出し、ステップアップすることを目的としています。目標の達成だけではなく、人材の育成にも効果を期待できますので、自分だけではなく、動物病院のスタッフ全員のスキルアップを目指すときにはぜひ取り入れてみてください。
まずは一人ひとりのスキルを見極める
このストレッチ目標を立てるためには、スタッフ一人ひとりのスキルを明確化し、それにそった目標を設定しなければなりません。高すぎる目標はモチベーションを失わせてしまいますし、すでに達成している目標を設定するのもおかしなものです。
そのため、動物病院でも定期的にスタッフとの1on1ミーティングを行い、都度目標と進捗を確認しましょう。そのスタッフが自分の強み・弱みを理解していないようであれば一緒に洗い出し、お互いが納得できる目標を決めるようにしてください。
フォローを忘れないこと
ミーティングでそのスタッフに合う目標を設定できたとしても、必ず達成するとは限りません。成功確率50%前後の目標を設定しているのであれば、失敗に終わってしまう可能性も十分に考えられます。もしスタッフが壁に突き当たって伸び悩んでいるのであれば、一緒に改善案を考えてあげるようにしてください。成功確率が低めな目標であればあるほど、まわりのサポートは必須です。
HARDゴールを設定する
HARDゴールとは、感情に焦点をあてたゴールの設定方法です。前回のブログでもお話したように、モチベーションが上がる目標を設定することによって、人はより頑張れるようになります。HARDとは以下の頭文字を取ったものです。
H(Heartfelt):心から達成したいと思える目標か
A(Animated):目標達成後に見えるものは何か
R(Required):目標達成に必要な能力やスキルがわかっているか
D(Difficult):設定した目標達成に向けてどのような困難と解決策があるのか理解しているか
この4つを意識したうえで目標を設定すると失敗がないでしょう。スタッフのモチベーションもあがり、経営者のひとりよがりにならない目標を立てられます。
目標の設定方法によって動物病院の経営もスタッフのモチベーションも変わってくるものです。「いつもと同じでいいだろう」と思うことなく、スタッフ全員に最適な目標を与えられるように、経営者であるあなた自身が真剣に考えてみてください。