昼間に灰色のコンクリートの床を歩く人々

突然ですが、あなたは「不易流行(ふえきりゅうこう)」という言葉を知っていますか?

この言葉は「おくの細道」で有名な俳人・松尾芭蕉が示した俳諧の理念です。

さまざまな解釈が存在するようですが、「変わらないものを理解しないで基礎は成り立たないが、変わるものも理解しなければ進展は見込めない」という解釈が一般的です。

この俳諧の理念は、ビジネスの世界でも共通するものだと私は考えています。

動物病院にも毎年何かしらのブームは起こるものですが、それらを核にしていると経営の方針が安定しません。

しかし、いつまでも同じことばかり続けていても、それはそれで時代に取り残されてしまいます。

今回はビジネスの基礎を理解すること、またブームやトレンドを取り入れること、両方の重要性についてお話したいと思います。

なぜブームをビジネスの柱にすべきではないのか?

昼間に市場を歩く人々

このブログでも何度もお話していますが、ビジネスの世界では信頼性が何よりも重要です。動物たちの命を預かる動物病院であれば、なおさらと言えるでしょう。飼い主さんや取引業者からの信頼を獲得するためには、事業の方向性や経営理念を明確にすることがまず重要です。

 

反対に言えば、経営理念やビジョンがブレている動物病院は、まず信頼を得られません。特にビジョンを考えるときに、世の中の動向ばかりを気にして方向性を決めていると、世間の風向きが変わったときに、ブレてしまうのではないでしょうか。「流行物は廃り物」という言葉があるように、ブームに影響を受けすぎていると、トレンドが終わったときに、一気に古臭い印象になってしまうおそれもあります。また、流行り物は人にマネされやすく、他院との差別化ができなくなってしまうのです。

 

そのため、ビジネスの柱にトレンドを取り入れるのはできるだけ避けましょう。時代が変わっても世の中から求められるサービスや精神を考えたうえで、ビジョンを決めるようにしてください。

動物病院に取り入れるべきブームとは

大人のゴールデンレトリバー

ブレないことの大切さをお伝えしましたが、同時に流行を取り入れる柔軟性もこれからの動物病院には必要と考えます。事実、ここ何年かでペットホテルやトリミングサービスを採用し、メニューの充実化をはかっている動物病院は少なくありません。1万軒を超える動物病院が存在する今の日本にあって、単なる診療サービスを提供するだけの医院は影が薄くなってしまう可能性が高いでしょう。

 

他院と差別化するためには、まず最新の動物病院のメニューをチェックし、ブームとなりそうな商品やサービスを積極的に取り入れていくのもひとつの手です。特にCMなどで紹介されているトレンドのペットアイテムは飼い主さんからの反応がよく、手に取ってもらいやすい可能性大です。現役の獣医師が推奨している商品ということで、オンラインショップよりも院内にモノを置いて販売したほうが売上も上がりやすいと考えます。その際には、ただ商品を陳列するのではなく、「○○で紹介されました!」「話題沸騰中」などのフレーズを添えると、飼い主さんの購買意欲を刺激できるでしょう。

 

たとえあなたの動物病院が多少老朽化していたとしても、新しい商品を積極的に取り入れることで、最先端の動物病院と認識してもらえるかもしれません。ブームに振り回されてばかりはよくありませんが、トレンドに弱い飼い主さんは一定存在するということを考えて、世の中の流れにも柔軟な姿勢を示しましょう。

ビジョンとブームを一体化させた戦術が理想的

「不易流行」の理念を上手に取り入れた企業としては、アウトドアブランドのPatagonia(パタゴニア)が挙げられます。同社は「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。」を企業理念に抱えていて、元からシンプルで機能性の高い商品の開発に力を入れてきました。

 

そのうえで、ここ何年かの間話題となっているSDGsを意識し、環境にやさしいサステナブルアイテムや耐久性が高く、リサイクルできる商品を多数リリースしています。これは企業理念とブームがマッチしている、珍しい事例と言えるでしょう。

 

最近はオーガニックなペット用シートや天然由来成分で作られたペット用シャンプーなど、ペット業界にもサステナブルの波が来ています。こういったアイテムをひとつふたつ揃えてみるのもいいかもしれませんね。トレンドに敏感な点をアピールできるだけではなく、クリーンな動物病院のイメージを演出することが可能です。

 

複雑な経営戦略を軌道にのせるためには、経営者にはフレキシブルな対応が求められます。今回ご紹介した不易流行の考えをもとに、経営理念や商品展開を一度見直してみてはいかがでしょうか。新しい戦略が見つかるかもしれません。また、流行ものにすぐに心奪われてしまうというあなたは、この機会に一度本当に取り入れるべきものとそうでないものの取捨選択を行ってみてください。

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