現、京セラ株式会社の創立者である稲盛和夫氏の思想のひとつに「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」というものがあります。
まずは「こうなりたい、こうありたい」と気軽に夢を描き、「絶対に失敗してはならない」という意志を持って悲観的に構想を描きます。
そして、いざ実行の段階になったら「必ず自分ならできる」と自信を持ってあたることが成功への道につながるという考えです。
実はこの稲盛氏の言葉と同様の内容が、中国春秋時代に生まれた中国の兵法書の古典「孫子」のなかでも説かれているのです。
2500年前から現在に至るまで、なぜこの考え方は支持されているのでしょうか。
一度考えてみたいと思います。
悲観的な思考がもたらす良い効果
まずは思考を悲観的にしたほうが良い理由について見ていきたいと思います。ネガティブシンキングに陥るのは危険ですが、慎重なスタンスを保つことによって、かえってビジネスの視野が広がっていくでしょう。
冷静な分析ができるようになる
悲観的な思考を習慣化することによって、さまざまな課題に対して客観的で現実的な判断を下せるようになります。過去の経験や情報を基にするときに、潜在的なリスクや問題点を考慮することで、冷静に状況を分析できるでしょう。
慎重に計画を練ることができる
悲観的な思考は、将来起こりうる困難への備えや計画を練るきっかけになります。想定しうる課題や障害を予測して万全の対策を講じておくことで、問題が発生したときにも落ち着いて対処できるようになるでしょう。
リスク回避につながる
悲観的な思考を習慣にすれば、ビジネスにおける潜在的なリスクにも敏感になれます。すると、計画を立てるときには、リスク回避を念頭に置いた戦略を立てられるようになります。堅実な計画を立てることができれば、失敗を最小限に抑えられるでしょう。
慎重な意思決定ができるようになる
悲観的な思考をもとに立案したビジネス計画であれば、意思決定をする際にも慎重になれるはずです。楽観主義が行き過ぎると、その場のノリや直感で決定してしまうことがあります。それでうまくいけば良いのですが、そうならなかった場合には、負債を抱えることになります。あなたの医院を守るためにも、やはりある程度の悲観的な思考は必要です。
過去の失敗から学習できるようになる
楽観的な思考でいると、失敗しても反省をせずに、また新しいことへと飛び込みがちです。前向きで行動的な姿勢も大切ですが、失敗したときには一度立ち止まって見直す機会を大切にしましょう。悲観的な視点で失敗の原因を分析することで、次に取るべき行動が見えてくるはずです。
このように悲観的な思想を身に付けることで、さまざまな効果を感じられるようになります。一方で過度な悲観主義はビジネスのタイミングを逃したり、スタッフにストレスを与えたりするおそれもあります。バランスを取り、必要に応じてポジティブな言動も取り入れましょう。
楽観的な行動を取ることによる効果
悲観的な思考とは反対に、楽観的な行動を取ることで、どのような効果を感じられるのでしょうか。ここからは5つのポイントを紹介します。
モチベーションが向上する
楽観的な人は、総じてフットワークが軽いものです。仕事にもすぐに取り組むことで、何らかの変化を期待できるでしょう。そしてその変化が大きければ大きいほど、次の仕事へのモチベーションが上がります。困難なことであっても、楽観的に行動できる人であれば「やってみれば何かが変わるだろう」と前向きな姿勢を保つことができるのです。
ストレスが軽減する
ストレス社会と言われる昨今、少しでも心の負担を軽くして仕事に取り組みたいものです。頭の中でいろいろ考えてはいるものの、実行に移せないでいるとストレスが溜まっていくばかりです。それも「とにかくやってみよう」という気持ちで楽観的な行動ができる人は、ストレスを最小限に抑えられます。仕事に必要な安定したメンタルを保つことができるでしょう。
ビジネスチャンスにも敏感に反応できる
アクティブに動き回ることで、ビジネスチャンスを見つけやすくなります。そのビジネスチャンスに対して、悲観的な思考をもって慎重にアプローチすることで、ものにできる可能性が高まるでしょう。どんなにすぐれた計画も、チャンスがなければ始まりません。良いと思ったことにはどんどん手を付けていきましょう。
チームワークを向上させる
ポジティブでアクティブな行動は、他のスタッフに対して好影響を与えることがあります。一人ひとりが積極的に行動しようとすることで院内にポジティブな雰囲気が生まれ、組織としてのまとまりが生まれるかもしれません。まずは院長であるあなたが率先して動くことから始めてみてはいかがでしょうか。
ビジネスの創造性が高める
積極的に動いて見つけたビジネスチャンスから、新しいアイデアやアプローチが生まれる可能性は十分にあります。それによって仕事の幅が広がり、柔軟性も養われるようになるでしょう。
悲観的な思考と楽観的な行動は一見相反するものに思えますが、うまく使い分けることによって、どの角度から見ても抜け目のないビジネスパフォーマンスが実現されます。今回紹介したメリットを参考に、仕事での考え方や動き方を見直してみてはいかがでしょうか。