例えば、あなたが何らかの機会で5万円をもらったとしましょう。
当然うれしい気持ちになりますよね。
反対に5万円を落としてしまったとします。
悲しい気持ちになるでしょう。
では、前者の喜びと後者の悲しみを比べたときに、どちらのほうが大きいと思いますか。
おそらく多くの人は、悲しみのほうが大きいと感じるはずです。
もうひとつ例を紹介しましょう。
あなたはコインゲームに誘われています。
コインを投げて出るのが表か裏か当たればあなたは200万円もらえます。
ただし、外れたら1円ももらえません。
そして、もし参加しなければ無条件で100万円をもらえるとします。
いかがでしょう。
おそらく「ゲームに参加せずに100万円を確実にもらいたい」と考える人が多いのではないでしょうか。
例えゲームに参加しても外れたら1円ももらえませんが、後者は何もしなくても100万円は手に入りますものね。
リスクよりも安全を取りたいと考えるのは自然な感情と言えるでしょう。
このように、人は何かを得たときよりも、失ったときのほうが感情を大きく揺さぶられると言われています。
この心理は行動経済学における「プロスペクト理論」と呼ばれるものです。
非常に有名なこの理論は、実はビジネスの世界でも幅広く活用されていることをご存知でしょうか。
せっかくであれば、動物病院の経営にも取り入れたいものですよね。
そこで今回はプロスペクト理論を活用したセールステクニックを紹介します。
キャンペーンを打ち出すときや、広告を出稿する時、また現在セールス活動の効果を感じられないという方は、ぜひ参考にしてください。
プロスペクト理論を用いたセールステクニック
ここまでで説明したプロスペクト理論を用いるセールステクニックを3つ紹介します。「理論」と言うと堅い印象がありますが、どれもビジネスの世界ではよく使われているテクニックです。ぜひ参考にしてください。
フィア・アピール
「フィア=fear=恐れ」のこと。どんなにメンタルが強靭な方でも「この商品を買わないと失敗するかもしれませんよ」「今買わなければ損するかもしれませんよ」と言われれば、多少は気になるものですよね。このときにも「失敗して、運を逃したくない」というプロスペクト理論が働いていると言えるでしょう。
この心理を利用して、動物病院の商品やサービスを販促する際には、
- 「偏った食事はワンちゃんの体をボロボロにします」
- 「大切なペットを健康な食事で守りたいと思いませんか」
- 「その食生活がワンちゃんの寿命を縮めているのかもしれません」
など、飼い主さんの恐怖心を多少煽る文言を入れてみてはいかがでしょうか。何もセールスフレーズを入れていない商品より、よほど反応を感じられるはずです。
また、フィア・アピールでよく使われる表現として
- 「個数限定」
- 「期間限定」
などもあります。「今買わなければ機会を失って、後悔することになるかも」という気持ちを喚起させてしまうのですね。人の恐怖心を煽るのは好きではないというあなたも、このフレーズであればかなり使いやすいと言えるでしょう。
ただし、過度なフィアアピールはNGです。このブログでも何度も説明しているように、過度に恐怖心をあおる広告は誇大広告にあたり、景品表示法や薬機法などに引っかかってくるおそれがあります。
また、人間は過度に恐ろしい記憶は、後に消してしまおうとする心理を持っていると言われています。そのため「死のリスクが5倍高まる」といったショッキングな文言の使用はほどほどにしましょう。動物病院にはよく飼い主さんに考えてもらって購入してもらう商品も多いため、記憶が薄れやすい過激なフレーズの使用はほどほどにしましょう。
リスクリバーサル
飼い主さんの不安を取り除いてあげることで購入障壁が低くなることを、リスクリバーサルと言います。あまり耳なじみのない言葉ですが、セールスの世界ではよく使われているテクニックです。例えば
- 返金保証
- 分割手数料無料
- 修理費無料
- カスタマーサポート
といった文言がそれにあたります。アフターサポートがあるとわかれば、購入後の後悔のリスクが低いと考えて、手に取りやすくなるでしょう。動物病院の診療サービスやトリミングでは、アフターサポートをつけやすいものですので、ぜひ取り入れてみてください。
フレーミング効果
フレーミング効果とは、同じ内容でも伝え方によって受け手の印象が変わるというものです。たとえば
「購入者の95%が満足している商品」
と
「購入者の5%が不満を覚えている商品」
は同じことを言っているようですが、印象はかなり変わりますよね。
後者のように飼い主さんに不安を与える言い回しは避け、安心感を与えられるフレーズを考えましょう。
どのテクニックもシンプルなように思えますが、さまざまな業界で活用されている効果的なテクニックです。キャッチフレーズやセールストークに今一つパンチがないと感じている方は、ぜひ今回紹介したフレーズを取り入れてみてください。