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動物病院に限った話ではありませんが、定番の商品やコンスタントに売れる商品・サービスというのはどこの業界にも存在するものです。動物病院で言うと、定期的な予防接種がそれにあたります。また、ペット関連アイテムにしても、トリミングで使うシャンプーは人気商品です。それらを購入したり、サービスを受けてくださったりする飼主さんには、日々心から感謝をしています。しかし、定番商品ばかりでは売上の劇的な向上はなかなか見込めません。良くて現状維持の状態です。

「今のままでは経営が苦しい」「経営は安定しているけれど、もう少し伸びしろを感じたい」ということであれば、思い切って今あるサービスや商品の見直しを図り、高額商品サービスを導入してみてはいかがでしょうか。

今回は定番商品だけではなく、高額な商品を販売するときのコツを紹介します。

セットアイテムで売上高を上げる

私が経営している動物病院では、ワクチン一回あたりの料金を6,000~9,000円程度に設定しています。おそらく他の動物病院も、さほど大きな違いはないかと思います。ペットにとって必要不可欠な予防接種を積極的に受けてもらうために、ある時から私は「予防○○セットを発売しました。3枚つづりとなっているこのセットを購入することで、来院者様が次回以降の診察料が割引されます。

 

一見動物病院側が損しているような商品ですが、一回でまとまったお金の売上を確保することができるため、一回ずつお支払いいただくよりも確実に売上げを確保できるのです。 次回来てくれるのかどうかも分からないリピーターさんや、新規顧客にダイレクトメールやチラシを送ったりするよりも、このサービスを販売したほうが確実性があります。なぜなら、事前にお金を払っているからです。 高額商品の打ち出しは一見チャレンジのように思えますが、理にかなっていれば飼い主さんも納得して購入してくれることが多いものです。高額商品を仕入れるときのようにリスクもないため、ぜひ一度セット商品の販売を考えてみてください。

限定商品で売上げアップを狙おう

セット商品以外では、限定商品を考えてみるのもひとつの手です。人はプレミア感があるものに惹かれる傾向があります。お金に糸目をつけず、なんとしてでも欲しいと考える熱狂的なファンもいるほどです。 そのような人のために、少し高級な商品をそろえて限定発売してみてはいかがでしょうか。特に富裕層向けの商品を作ると手に取ってもらいやすく、売上のアップを期待できます。

ダイナミックプライシングで効率よく利益の確保を

近年注目されている「ダイナミックプライシング」も、効率的に売上高アップを期待できる手法です。ダイナミックプライシングとは、環境要因に応じて販売価格を変動させる手法で、代表的なものは時期によって料金が変わる旅行代金やライブのチケット代金などが挙げられます。

需要と供給に合わせて商品やサービスの価格を変動させることによって、狙ったの時期に一定の売上高を確保して、経営改善を図ることができるのです。

動物病院にこのダイナミックプライシングを採用するのであれば、ペットホテルの料金を繁忙期や閑散期に合わせて変えたり、時間帯によってトリミングサービス料金を変えたりすると良いでしょう。年末年始やお盆はペットを預けて家族旅行に行きたいと考える人も多いため、効率よく稼げるかもしれません。

商品やサービスの価格・料金の設定方法については、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:平均客単価を知ることは価格設定を行うために重要
関連記事:【動物病院の値引き戦術】全員が納得できる価格設定を心がけよう

サービスを充実させて、その分価格を引き上げる

adult golden retriever taking a bath

私の動物病院では、ペットホテルを展開しています。多くの飼い主さんに利用していただいていて、おかげで予約は好調です。このペットホテルも、最初はペットをお預かりするだけでしたが、その後お客様からリクエストをいただき、散歩のサービスや健康診断、定期的なお知らせメールの送信など、さまざまな付加価値をつけてメニューを充実化させました。当院のペットホテルのスタンダードコースとデラックスコースでは、かなりの差があります。このようなサービスを提供している場合、付加価値をプラスしてスタンダードプランとは差別化した、デラックスプランを作ってみることをおすすめします。物販であれば仕入れにお金がかかる分、売れ残りのリスクもありますが、サービスであれば基本的に仕入れ費用はかからないため、ローリスクです。

商品を仕入れるときには「長く愛用できるか」どうかがカギ

動物用シャンプーでもサプリメントでも、商品を仕入れるときについ「安ければ安いほど手に取ってもらいやすい」と考えて、安価な商品を選んでいませんか。そうだとしたら、その思考癖にこそ収益が上がらない理由が潜んでいる可能性があります。

例えばあなたがドラッグストアで髭剃りを購入するとき、100円程度で購入できるシンプルな剃刀と、1,000円以上するものの、滑り止め機能がついていて、安全性と耐久性が高い剃刀のどちらを選びますか?

おそらく多くの人が後者の剃刀を選ぶかと思います。例え10倍以上の差があっても、「長い目で見れば、1,000円の商品のほうが長く愛用できてコストパフォーマンスが良い」と無意識のうちに考えているのですね。

「コスパ」「タイパ」という言葉が流行するなかで、消費者は長い目で見て商品を選ぶ傾向が顕著になっている気がします。あなたが商品を仕入れるときにも、いかに長く使えそうか、愛用できる期間の中でどれだけのメリットを感じられそうかを考えて仕入れをするとよいでしょう。

「価格設定の方向性を見失っている」という方は、ぜひこちらの記事も参考にしてください。

関連記事:商品の価格設定をするときに知っておきたい「価格弾力性」とは?

高額商品を売るためには、まずは飼い主さんとのコミュニケーションを取ること

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たとえ質の良い商品だったとしても、高額商品となれば、なかなか飼い主さんの手は伸びません。「もっと安くていいものがあるかもしれない」「ここまでお金をかけなくても…」と、慎重になってしまう人がほとんどかと思います。その背中をそっと押してあげるのが動物病院のスタッフの役割です。「この商品は、確かに他の商品に比べたら高いかもしれない。でもそれだけの価値はある」と説明した時に、「先生が言うんだから、間違いない」「いつもお世話になっているトリマーさんがおすすめしているなら、試しに買ってみようかな」と思ってもらえるように、普段から良好な関係を築きましょう。

地道な努力に思えるかもしれませんが、実はこれは非常に有効な心構えです。ただ高額な商品の販売を打ち出すのではなく、日頃のちょっとした気配りの積み重ねが、良質な顧客の獲得につながると考えます。

 

動物病院を訪れる飼い主さんには、家計に余裕がある人が多いと感じています。定期的な治療や予防接種代がかかるペットを飼える経済力があるためです。そのような飼い主さんであれば、少し高額な商品をおすすめしたときも、比較的スムーズに受け入れてくれるかもしれません。「どうせこんなに高い商品を作ったって売れない」と最初から諦めるのではなく、今ある商品の10倍の価格を目指して、一度商品案・企画案を練ってみてはいかがでしょうか。

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