コミュニケーションを取るときには、誰しもが自分と気が合い、話しやすい相手が理想的と思いますよね。友人関係など、プライベートではそれで良いかと思います。気の合わない人との交流はストレスの元です。
しかし、ビジネスシーンにおいては、時として一緒にいると居心地が悪いと感じる、緊張感のある人と関ってみるのも良いかと思います。自分とは異なる価値観を持つ人や、厳しい言葉で指導をしてくれる人は、自分をステップアップさせてくれます。今回はビジネスシーンで自分を成長させてくれる人について考えたいと思います。
なぜ緊張感のある人は自分を成長させてくれるのか?
例えば動物病院に訪れる飼い主さんのなかには穏やかな人もいれば、何かと注文をつけてくる人もいるかと思います。診療方針について細かく突っ込まれたり、鋭い質問をしてきたりする飼い主さんには緊張することもありますよね。しかし、そのような飼い主さんは獣医師としての自分を成長させてくれる、ありがたい存在だと私は感じています。
その飼い主さんが来院するとわかっていれば、「今日はあのことを突っ込まれるかもしれない」と思い、事前に情報を集めたり、カルテを確認したりして、入念な準備を行うことができます。事前準備が万全であればあるほど、飼い主さんやペットに対する知識も深まり、結果的に成長できたと感じます。
あまりコミュニケーションを取らない飼い主さんや、何でも「YES」で答えてくれる飼い主さんばかりだと、どうしても「今日もいつも通りの診療で大丈夫だろう」と、気が緩みがちになってしまいます。そこへ、定期的に緊張感のある飼い主さんがいらっしゃることで、都度気を引き締めることができるのです。つい周りに甘くなってしまうというあなたは、ぜひ以下の記事を読んでみてください。
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緊張感のあるスタッフや出入り業者との付き合い方
飼い主さんだけではなく、細かいところにまで気がつくスタッフや出入り業者は少なくありません。私もうっかり約束の期日を忘れていた時に、スタッフから即座に「まだですか?」と指摘され、肝を冷やしたものです。緊張感こそありますが、こうしたスタッフや業者さんがいるからこそ、大きなトラブルがなく動物病院を経営できていると感じています。仲間内でなれ合いになってしまっていては、きっと今のように安定した経営はできていなかったはずです。ほどよい緊張感を持って仕事に取り組める環境を作ってくれているスタッフや業者さんには感謝しかありません。
なじみの出入り業者との付き合いには緊張感が重要
付き合いが長くなってくると、取引先の業者も身内のような感覚になり、つい商談の詰めが甘くなりがちです。こうした雰囲気は外部の業者にも伝わっているもので、あなたとの商談で適当な企画書を出してきたり、相場よりもかなり高い金額の見積りを提示したりする人が少なくありません。
相手を信頼することも大切ですが、ビジネスである以上、時には厳しい目を持って接することも重要です。しばらくなじみの業者からしか見積りを取っていないのであれば相見積りを取ってみたり、話を聞いてみたりしましょう。ライバルの存在を知ることで、取引業者も緊張感を持って接してくるようになるはずです。
時には目上の人とコミュニケーションを取る
動物病院を個人経営していると、いつも同じスタッフや業者さん、また飼い主さんとしか関わらないようになり、どうしても視野が狭くなりがちです。顔なじみとしか接しなければ、その分緊張感も失われがちで、「毎日ルーティンワークの繰り返しだ」と感じている人も少なくないかと思います。
緊張感が失われてしまうと、どうしても仕事への取り組みや飼い主さんへの対応、また身だしなみがルーズになりがちです。そこで私が意識しているのが、定期的に獣医師の会合やセミナー、勉強会に参加して、さまざまな人と関わることです。普段接し慣れていない人であれば、コミュニケーションを取るときにも多少は緊張しますし、それだけ気持ちに張りが出るようになります。多くの人と関わることで新しい情報が手に入り、獣医師としての仕事に活かせそうだと感じています。特に、話をする相手の社会的地位が高かったり、少しとっつきにくい受け答えをする人であったりすると、その分緊張感が増します。長時間一緒に過ごすのは厳しいかもしれませんが、ひとときの時間を共にしつつ気を張ることで、緊張感の大切さを思い出せます。
自分自身が緊張感のある人になることも重要
緊張感のある人と接して自身を律することも重要ですが、自分自身が人に緊張を与える人間になることも時として重要です。多くのスタッフを抱え、業者さんや飼主さんなど外部の人間とも関わる獣医師であれば、なおさら大切と考えます。経営や接客をなあなあにして、「何でもいいよ」と言ってしまうような獣医師であれば、動物病院の雰囲気もだらんとなりがちです。表情を引き締め、ミスがあれば多少厳しく指摘することも忘れないようにしてください。動物病院は動物の命を預かる、非常に責任のある仕事です。ちょっとした気の緩みが、取り返しのつかないトラブルを招くおそれもあります。常にそのことを意識し、自分だけではなく周りのスタッフにも、厳しい態度を取ることが時として重要です。
緊張感を保つためには確認作業が重要
緊張感のある職場づくりは、簡単そうに見えて難しいものです。厳しく叱責しすぎるとパワハラとみなされたり、スタッフが固くなりすぎたりしてかえってミスを生み出しやすくなるでしょう。
ほどよい緊張感のある職場づくりの第一歩は確認作業の徹底です。作業者本人ではなく、他のスタッフによる目視や指差し確認は基本的なことですが、絶大な効果を期待できます。
目で見て、耳で聞き、声に出して行う確認作業を取り入れることで、業務に集中できて、なおかつ緊張感が保たれる動物病院になっていくでしょう。
院内の緊張感の保ち方については、こちらの記事も参考になるので、ぜひ一読ください。
ハラスメントが社会問題化している現在ですが、厳しく指導することとハラスメントは別物だと私は考えています。責任のある社会人だからこそ、緊張感を意識することが大切です。「いつも同じ人としか付き合っていない」「なんとなく病院の雰囲気がだらけている」と感じている方は、一度メリハリを意識してみてはいかがでしょうか。
あなたは経営者であり、お客さまである飼い主さんに対してはもちろん、スタッフや売り上げなどの数字にも責任を持たなければならない存在です。そのことを自覚し、ほどよい緊張感のある経営を努めましょう。こちらの記事で取り上げている「アカウンタビリティ」は今回のテーマのヒントになるものですので、ぜひ参考にしてください。