かつて動画広告と言えば、テレビのCMが一般的でした。とは言っても、テレビCMを打ち出す際には制作費を広告代理店に、さらに放映費を放送局に支払う必要があるため、わずか15秒のCMにも100万円以上の費用が必要でした。この出費は、中小企業や動物病院などの個人事業主にはなかなかハードルが高いものです。
それも現在ではYouTubeやFacebook、InstagramなどのSNSにも気軽に動画広告を出せるようになりました。広告の種類やターゲット設定にもよりますが、テレビCMに比べてはるかに低予算から始められるため、積極的に取り入れている企業が少なくありません。私たち動物病院のなかにも、YouTubeチャンネルを開設している動物病院が存在するほどです。
新しい広告の出稿を検討している方は、ぜひ動画広告にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。今回は動画広告初心者のあなたでも始められる、動物病院におすすめの動画広告の打ち出し方を紹介します。
なぜ動物病院の動画広告が求められるのか?
単純に動物の動画は人気があります。かわいい犬や猫が遊びまわっているだけの動画の再生回数が数百万を超えているというのだから驚きです。ペットを飼っている人からはもちろん、動物好きでも諸事情でなかなか飼えない人、育てる自信はないけれど動物に癒やされる人など、さまざまな人からの需要があります。
数百万回再生まではいかなくとも、動物病院の動画も一定の層から需要があります。とある動物病院の公式YouTubeチャンネルでは、再生回数が10万回を超えているものもあり、動画広告として成功しているといえます。エリアや対象者を限定して出稿しているチラシやDMよりも、よほど幅広い層の目に留まっているためです。
動画は、獣医師やスタッフの人柄、病院の清潔感、診療の様子などを視覚的に伝えられる強力なツールです。テキストや静止画では伝わりにくい「安心感」や「信頼感」を、動画を通して飼い主さんに届けられるため、来院前の飼い主さんの不安を軽減し、初診のハードルを下げる効果を期待できます。
YouTubeが難しければSNS広告もあり
YouTubeにアップされている動画の多くは10分程度のものです。実際に制作してみるとわかりますが、まったく知識のない人が長編動画を制作をするのはかなり大変で、たくさん撮影したつもりでもわずか数分にしか満たなかったということも。また、たくさん撮れても、ダラダラとサービスを説明しているだけの広告動画は、最後まで見てもらえずに途中終了されてしまいます。当然視聴者数も伸びません。
それでも広告代理店には頼らずに、自分たちだけで動画制作をするということであれば、テレビCMと同様に15秒のものが主流の、InstagramやTikTokのSNS広告動画がおすすめ。短い動画でも、病院の雰囲気を切り取った映像や、診察の様子の一部を早送りで見せるなど、工夫次第で高いエンゲージメントを獲得できます。特にInstagramのリール動画は、発見タブを通じてターゲット外の潜在的な顧客にもリーチできるため、集客効果を期待できます。
動画広告の制作時に押さえておきたいポイント3つ
広告を出稿する媒体が決まっても、視聴者に訴求できなければ意味がありません。効果的な動画広告は一体どのように作られているのでしょうか。ここでは3つのポイントを紹介します。
①伝えたい動物病院の情報を十分に盛り込む
非常に基本的なことではありますが、広告には伝えるべき動物病院の情報をすべて詰め込みましょう。ときどき、まったく商品を紹介していないCMがありますが、あれは認知度の高い企業や商品だからできることであり、個人の動物病院広告の参考対象としては不向きと考えます。
ただし、サービス内容を説明するだけでは視聴者は飽きてしまうので、訴求ポイントを絞ってメッセージを考えましょう。あなたの動物病院の強みは何ですか?「土日も診療している」「夜間救急に対応している」「専門的な外科手術が可能」など、さまざまかと思います。
強みを自覚したら、なぜそれを強みにしているのか、その強みがあることで飼い主さんやペットはどのような効果を感じられるのか、他の動物病院と何が違うのかを明確化して、動画の構成を練り込みましょう。
②動画の構成を練りこむ
前述のとおり、初めて動画広告を制作する人が長尺を取ると冗長になって失敗します。まずはテレビCMと同じ15秒間の長さを目安に、メッセージをすべて盛り込みましょう。
一般的な流れとしては、まず「ペットの体調不良、でも仕事で病院に行けない…」などと問題提起し、「当院は土日も診療」などと解決策を提示。さらに、「ベテラン獣医師が丁寧に対応します」といった文言で信頼性を伝え、「まずはお気軽にお電話ください」と行動を喚起しましょう。
構成を練り込んだら、使用するフレーズやイメージ映像を決めてみてください。何度も試してみると不要な言葉や絵に気づくことができ、次第にすっきりとまとめられるようになります。
動画の構成については、以下の記事もぜひ参考にしてみてください。動画広告制作時に知っておきたい「メリコの法則」について解説しています。
関連記事:「メリコの法則」を動物病院の広告運用に役立てよう!
③配信するターゲットを絞り込む
動物病院の広告だから、当然動物を飼っている人が対象と思い込みがちですが、大雑把なくくりではなく、さらにペルソナを絞り込む必要があります。どのようなペットを飼っているのか、どこに住んでいるのか、他にも視聴者の性別や年代などを想定することで、効果的な動画広告を制作しやすくなります。女性向きであればやさしい雰囲気のもの、男性向きであれば端的でわかりやすい広告、といった具合に広告の方向性を決められます。
誰もが気軽に動画広告へチャレンジできるような時代だからこそ、本当に視聴者の心に訴えかけられる広告が必要だと感じています。今回紹介したポイントをもとに、まずはあなたの動物病院の特長を整理して、伝えたいメッセージを洗い出してみましょう。
最後に、ターゲットの考え方について解説している記事を紹介します。ぜひこちらも合わせて参考にしてください。