みなさんはディアゴスティーニという分冊百科シリーズを知っていますか。
さまざまなテーマを取り上げた本を定期刊行して、購入者にお届けするというものです。
初回分を1,000円程度の安価で購入できるシステムに惹かれて、購入した経験があるという人も少なくないでしょう。
このディアゴスティーニは、一度購入したものを最後まで購入しなければ気が済まないという、人間の心理を巧みに利用していると言われています。
収集癖がある人も、このような心理を少なからず持っていると言えるのではないでしょうか。
今回は一度購入したら最後まで買いたくなってしまう人間心理と、それを動物病院に応用する方法を紹介します。
知っておきたい「一貫性の原理」
一度やると決めたことや購入したものは、最後まで一貫性を持って続ける(買う)べきだという、人間の考えの傾向を「一貫性の原理」または「一貫性の法則」と呼びます。これは多くの人が共通して持っている心理と言えます。確かに、どの分野でも最後までやり遂げた人はかっこいいと感じますし、反対に三日坊主で終わってしまった人は残念だと感じますよね。これは一貫性の原理が働いてる証と言えます。
そしてこの原理は収集癖がある人ほど強いものです。途中で止めるのが悔しいからさほど欲しくないものや、興味を失ってしまったものを惰性で購入し続ける人は少なくありません。一貫性の原理は良く言えば完璧主義ですが、悪く言えば諦めが悪い、依存心が強いとも捉えられます。
しかし、この心理をビジネスやマーケティングに活かしている人は少なくありません。ぜひあなたの動物病院にも取り入れてみてはいかがでしょうか。私も試したことがありますが、一定の効果を期待できますよ。
動物病院のサービスに応用できる一貫性の原理とは
それでは動物病院のサービスでは、どのように一貫性の原理を活かすことができるのでしょうか。まずあなたの動物病院の診療サービスや商品に、コレクション要素を取り入れてみましょう。ペットフードを同じブランドの同じラインでそろえてみたり、トリミングサービスもシャンプーとカット、トリートメントのセットプランを提案したりしてみてください。
「せっかくひとつ購入したのだから、最終的には全部購入してみたい」「全部のサービスを受ければ、ペットがもっと良い状態になれるかも」と、飼い主さんに期待を持たせられます。
他にもポイントカード制度を取り入れて、「〇回購入したら〇円オフ」などのサービスを取り入れるのもおすすめです。「何回も通って、カードを満タンにしよう」という気持ちにさせられます。まずはコレクション方式の商品が存在しないかどうかを、取引業者に相談してみてください。
フット・イン・ザ・ドア・テクニック(段階的要請法)
たとえシリーズものを勧めたとしても、すぐに飼い主さんが購入してくれるとは限りません。「値段が高い」「今使っているもので満足している」など、さまざまな理由で断られる可能性があります。そんな時に使いたいのが、フット・イン・ザ・ドア・テクニックです。これは段階的要請法とも呼ばれるもので、難しい要求を相手に承諾してもらうために、まずは小さな要求を提示して承諾してもらう商談方法です。
例えばいきなり1万円の商品を購入してもらうのはハードルが高いものですが、「初回は50%オフの5,000円」とすれば、より手に取ってもらいやすくなります。まさに、ディアゴスティーニの商法ですよね。今後シリーズものを定期的に購入してもらえると考えれば、はじめは収益が低くても、十分に値下げする意味があります。ぜひこの方法を取り入れてみてください。
サブスクリプション商法
サブスクリプションは、さまざまな分野で一般的になりましたよね。定額で購入していただき、毎月一定のサービスを提供するサブスクリプションサービス。これはコレクションと好相性で、動物病院側は安定した収益を期待できますし、飼い主さんは漏れなくコレクションを集められます。双方にとってのメリットが大きい方法と言えるでしょう。
一貫性の原理があるとはいえ、途中で商品のコレクション収集から離脱してしまう人は少なくありません。それもサブスクサービスを用いることによって、安定した継続を期待できます。
品薄商法
これもすっかりおなじみの商法ですよね。生産体制や在庫をあえて絞り、消費者の飢餓感を煽るというものです。収集癖がある人は、たいていレアものやプレミア商品に目がないものです。
コレクションアイテムに希少価値を与えることによって、より購入してもらいやすくなるでしょう。「限定〇個」といったフレーズを使って勧めてみてはいかがでしょうか。
選択肢があふれているものの中から、自分に合うものを選ぶ行為は意外と労力を要するものです。その中で、安定したクオリティを期待できるサービスや商品を継続したいと考える人は少なくありません。そのような飼い主さんにとって、コレクションは大変魅力的なものです。ぜひ動物病院のサービスや商品として取り入れてみてください。