動物病院を経営していく上では、時として新しい戦略を考えなければなりません。目まぐるしく時代が移り変わる昨今にあって、いつまでも同じ施策を打っていては目新しさがなく、顧客離れを起こしてしまうためです。しかし、流行に流されて次々と新しい施策を打ち出しては意味がないこともあります。
今回は施策を打ち出す時に押さえておきたい心構えと、自分の強みの確認方法についてお話ししたいと思います。
流行に流されない!動物病院が目指すべき「オンリーワン戦略」とは
かつては動物病院でも、ひとつの診療や商品が流行れば、こぞって他の動物病院もそれを取り入れ、飼い主さんの取り合いをしていました。しかし、今はその戦略自体が時代遅れであるような気がしてなりません。ご存知の通り、インターネット上に情報があふれている昨今、トレンドの移り変わりはどんどんスピード感を増しています。
今の時代、流行を後追いしようと思って新商品を打ち出しても、その時にはすでに流行遅れになってしまっているということも。また、流行にあわせて次から次へと戦略を変える動物病院は一貫性がなく、信頼性に欠けるところがあります。
「あの動物病院、前はこれがいいと言っていたのに、今度は全然違うこと言い出した」などと飼い主さんから指摘を受けることがないように、ブレない経営方針を打ち出すのが吉です。今はナンバーワンよりもオンリーワンの時代です。自分の動物病院にしかできない戦略を考えてみてはいかがでしょうか。
自院の「真の強み」を発見する3つの多角的なアプローチ
自分の動物病院であっても、意外と実態を見えていないことが多いものです。自分の動物病院だからこそ、距離が近すぎて見えなくなるのかもしれませんね。しかし、経営者本人が動物病院の実態を把握できていなければ、いずれ経営にも行き詰ります。これから動物病院の施策を打ち出す際には、まず自分の動物病院の強みから考えてみると良いでしょう。
また、強みの強化方法についてはこちらの記事でも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:SWOT分析を使って動物病院の強みを徹底的に磨こう
スタッフミーティングで内部からの情報を得る
最も手っ取り早いのは、自分の動物病院のスタッフから強みを教えてもらうところです。
内部のスタッフは、日常的に院内の奥深くにまで関わっているため、すぐに意見が出てくるでしょう。この時に大切なのは、強みだけではなく弱みや課題点も合わせて聞くことです。強みを活かした戦略や、反対に弱みをカバーする施策を思いつくかもしれません。
飼い主さんからアンケートをとる
これも非常に有効かつ簡単な施策です。自分たちスタッフが良いと思っていることが、患者さんの目から見れば欠点かもしれませんし、逆もありえます。自分の動物病院の思わぬ強みに気付けたら、それを強化していくと良いでしょう。Googleレビューなどで、評価を確認してみるのも有効な方法です。
アンケートの取り方については、こちらの記事で解説していますので、ぜひ読んでみてください。
関連記事:アンケートを取って飼い主さんのニーズ&ウォンツを知ろう
効果測定をしてチェックする
飼い主さんやスタッフからリアルな意見を聞くことも重要です。しかし、資金面の強みや弱み、また広告が生み出す効果などは、実際に数字にしなければ可視化できません。BLやPLをチェックして、利益率の高いサービスや、ニーズの高い商品を把握しましょう。
極端に売上が低い商品や、儲からないのにランニングコストばかりかかる設備があれば、思い切って切るのもありです。「せっかく時間をかけて開発したのに」と思われるかもしれませんが、ビジネスの新しい施策に痛みはつきものです。切り捨てたことで生まれた資金を新しい戦略に回すと、また新しいビジネスの創出につながります。
効果測定の方法については、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:ビラ・チラシを配って終わりにしない!おすすめの効果測定法
発見した強みを最大限に活かす戦略立案と実行のポイント
自院の強みが明確になったら、それを最大限に活かす戦略を実行しましょう。具体的な方法とポイントは以下の3つです。
強みを軸にした具体的なサービスとプロモーションを展開する
強みは単なる良い点ではなく、具体的なサービス展開やプロモーションの強力な武器です。例えば、オリジナルシャンプーが好評なら、その強みを訴求するプロモーションを強化しましょう。成分のこだわりや使用前後の変化を動画で紹介したり、キャンペーンで特別感を演出したりするのも効果的です。
接客の良さが強みなら、それを具体的な「おもてなし」としてスタッフ全員で共有し、より質の高い接遇を目指しましょう。飼い主さんの声を集めた感謝の動画や、親身なカウンセリングの様子をSNSで発信するのも良いですね。
あなた自身の専門性の高さが強みなら、健康セミナーを開催したり、特定の疾患に関する専門情報をブログで提供したりすると、強みを広くアピールできます。得意なことを伸ばすことで、モチベーションも高く、良い循環が生まれるようになります。
弱みを補完して全体的なレベルアップを図る
強みを活かすことだけに集中しすぎると、弱みの補完が見過ごされがちです。せっかく強みを見つけても、それがボトルネックになっていては全体の成長が鈍化します。例えば、接客は得意でも予約システムが複雑で使いにくいといった弱点が見つかったら、それを改善する具体的なアプローチを考えましょう。
オンライン予約の導入や、電話応対のマニュアル見直しなど、小さな改善でも飼い主さんの満足度は大きく変わります。強みを伸ばしつつ、弱みをひとつずつ解消していく視点を持つことで、動物病院全体のレベルアップを図れるはずです。
強みは変化するもの!定期的な見直しと改善サイクルの確立
最も重要なのは、強みは常に変化するものだという認識です。「自分たちはこれが強みだから大丈夫」と安心しきってはいけません。市場のトレンド、飼い主さんのニーズ、競合の動向、そしてスタッフの成長や入れ替わりによって、強みは形を変えていきます。
そのため、一度把握した強みも定期的に見直す必要があります。アンケートやデータ分析、スタッフミーティングなどを通して、常に現状を把握し、時代や客層の変化に合わせて戦略を柔軟に調整する「PDCAサイクル」を回していきましょう。この継続的な見直しと改善こそが、あなたの動物病院が常に進化し、選ばれ続けるための秘訣です。
仕事のプロセスの振り返り方については、以下の記事を一度読んでみてください。
どんなに良いと感じる施策でも、欠点はつきものです。「自分たちはこの点が強みだからずっとこのままで大丈夫」と安心するのではなく、定期的に見直して、欠点があれば改善しましょう。また、時代に合わなくなってきたり、客層が変わってきたりしたら、戦略の見直し時期です。強みは時代やスタッフに合わせて変わっていくものですので、定期的に見直すようにしてください。