歴史と経験

今回のブログでは「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という名言を元に、歴史と経験を参考に気づきを得ることの大切さをお伝えしたいと考えています。
皆さんはこの名言を聞いたことがありますか。「ない」という方も多いかもしれませんね。
この言葉は19世紀に鉄血宰相の異名で知られたオットー・ファン・ビスマルクの言葉として知られています。プロイセン王国宰相やドイツ帝国宰相を務め、東西ドイツ統一の中心人物となったビスマルクは、賛否両論がありながらも今でも国内外でカリスマ的な人気を誇っている人物です。
そんなビスマルクは教権主義者として、有名で血の気もずいぶん多かったようですが、政治家としてはかなり有能であったことから、この格言にも重みが感じられます。

歴史と経験

このビスマルクの名言は、果たしてすべての人に共通して言えるものなのでしょうか。少なくとも私はそうは思いません。なぜなら世の中には歴史からはおろか、経験からも何も学べていない人があまりにも多いと感じるからです。かくいう私もその一人で、同じ過ちを何度も繰り返してしまうことがあります。ビスマルクのように完璧主義の人間であればいざ知らず、なかなか自分を高みに持っていくのは難しいようです。

このことは2020年から始まったコロナウイルス感染拡大騒動を見てもわかりますよね。歴史を紐解けば、ペストや赤痢菌、スペイン風邪など、疫病の歴史は何度も繰り返されてきたはずですが、その歴史をもとに対策をしようとしている人はかなり限られています。歴史を学ぼうともしないのにインターネット上の信憑性のない噂をやデマを真に受けて買い占めに走ったり、根拠のない差別発言をしたりする人間の愚かさを、昨年だけで何度も目にしました。

そして2021年に入った現在、さらに感染者数は増え続けていますが、前年4月の緊急事態宣言のことなど忘れてしまったかのように多くの人が外出をしたり、一か所で密になっていたりします。これを見ると本当に歴史はおろか経験さえも活かせていない人が多いのだなと感じてしまうのです。

経験と事例

歴史から学べる賢者になれなくても、せめて少し前の経験を活かして動ける人間にはなりたいものです。
このブログの読者には動物病院を経営されている方が多いかと思いますが、経営というのは失敗したらまたやり直せばいい、という単純なものではありません。場合によっては大きな負債を抱える可能性もありますし、自分だけではなく従業員が職を失う可能性もあるものです。そのような事態に陥らないためには、動物病院経営の歴史だけではなく、これまでの自身の経験や経営破綻してしまった動物病院の事例を学ぶことで改善につなげられるのではと考えています。

動物病院の経営失敗事例については、私も調べてみることがあるのですが、実は明確な情報がほとんどないのが現状です。ただしペットが減り続けている一方で動物病院が増え続けている昨今の事情を鑑みると、経営難に陥っている動物病院は増加しているに違いがありません。そして、今後日本の高齢化社会が進むにつれてさらに動物病院の経営が悪化することはほぼ確実と言えるでしょう。

周りに失敗事例がないのであれば、やはり自分の経営方法を見直してみるのが最善策です。自分自身の現状は把握できているつもりでも、実は細かいところまで見直せていない可能性は十分にあります。
そのため、最近うまくいかないなと感じている方は一度スタッフも含めて話し合い、過去の経験を振り返ってみてはいかがでしょうか。
「このことをきっかけに飼い主さんが来なくなってしまった」「このことについてクレームを受けたことがある」など、ネガティブ要素をまとめることで自分の動物病院の不足点に気付けます。
そしてそれをクリアにしているだけでは意味がありません。自分の動物病院の欠点をクリアするためにはどうすればいいのか、経験からとことん考えてみましょう。そうすることによって解決の糸口がきっと見えてくるはずです。

事例と学び

動物診療の歴史はかなり古く、なんと日本最古の古事記にも大国主命が白兎の診療をしたと残されているほどです。動物病院が多くなったのは、高度成長期のペットブームがきっかけだそうですが、経営事情は時代の流れとともに変容してきています。動物病院の歴史を知っておくことは大切ですが、今と過去では時代背景が違うという事情もあり、すべてを参考にするのは実際問題難しいもの。
やはり歴史だけではなく、経験から学ぶことも大切と言えるのではないでしょうか。

冒頭で紹介した「賢者は歴史に学び、愚者は経験から学ぶ」というビスマルクの言葉ですが、実は彼は「愚者は自分の経験に学ぶという、私はむしろ他人の経験に学ぶのを好む」という言葉も残しているそうです。なんだかおもしろいエピソードですよね。
確かに自分の経験というのはどうしても評価が甘くなってしまい、ときには参考にならないことも。自分自身を振り返りつつ、周りの動物病院も見て学びを得ることが大切だと気づかされます。

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