白い表面に茶色の木製ブロック

動物病院を経営するなかでは、新しい事業や施策を始める機会もあるでしょう。

それ自体は決して悪いことではありませんが、残念ながら100%成功する事業は存在しません。

当てが外れたり、タイミングがずれたりして採算が取れず、頭を抱えてしまうこともあるでしょう。

ここで問題になってくるのは、事業そのものの内容ではなく、引き際にあります。

不採算事業をスッパリ切ることができずに惰性で続け、赤字を増幅させている企業は少なくありません。

これは大きな問題です。

痛手を最小限に抑えて経営を立て直すためには、どのような心構えが求められるのでしょうか。

今回は新規事業を始めるときに押さえておきたいポイントを解説します。

事業の判断が鈍る「サンクコスト効果」にはご注意を

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あなたは「サンクコスト効果」という言葉を聞いたことがありますか?私のブログで何度か紹介しているので、ご存知の方も多いかもしれませんね。サンクコストとは、将来的に回収できる見込みがないコストのことです。新規事業のためにかけた設備投資費用や広告費などは、どれだけ事業が成功したとしても、直接回収することができませんよね。このようにサンク(=埋没)してしまった費用のことをサンクコストと呼んでいるのです。

しかし、私たちはコストをかけた以上、それを回収しなければならないと考えてしまうものです。この心理は「サンクコスト効果」と呼ばれています。この心理が働くがゆえに、ついつい私たちはすでに失敗している事業や施策でも諦めず、元手を回収できるまで続けてしまう傾向にあるのです。その結果、赤字がさらに膨れ上がり、大失敗に終わってしまった事例があります。

それがフランスの超音速旅客機「コンコルド」の開発です。1970年代の開始当時からすでに不採算性を指摘されていましたが、すでに多額の投資をしていた開発者たちは開発を続行してしまい、最終的に開発費を上回る赤字を出してしまったのです。この失敗事例から、合理的な判断ができずに大きな失敗を犯してしまう心理は「コンコルド効果」と呼ばれています。

このコンコルド効果にあなた自身がはまってしまうことがないように、新規事業を開始するときには必ず失敗も想定しておきましょう。

事業の大失敗を防ぐためのポイント

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いくらコンコルド効果に気を付けていても、いざ事業がピンチに陥ると冷静な判断ができなくなるものです。それならば、新規事業を立ち上げる際に、失敗したときの対処策を考えておきましょう。ここからは事前に考えておきたい失敗への対処策を紹介します。

撤退条件を決めておき必ず守る

心意気や雰囲気で事業の継続・撤退を決めてしまうと、判断を誤ることがあります。その場の感情に流されることがないように、撤退の条件は数字で明確化しておきましょう。「月々〇万円以上の収益を出しているなら継続、それ以下であれば撤退」などと決め、必ずそれを守るようにしてください。あなた一人で決めてしまうと、いざ撤退の判断を下す状況に迷いが生じる可能性がありますので、スタッフにも意見を求め、決めた条件は公言するようにしましょう。

新しい事業を考えておく

ひとつの事業を撤退させることになると、他の事業における収益確保の負担が重くなってしまいます。そのことを気にして潔く撤退できないという経営者も少なくありません。それであれば、雲行きが怪しくなり始めたら、不採算事業の代わりになりそうな新事業を考えておきましょう。それによって未練なく撤退を判断できるようになるはずです。

飼い主さんやスタッフへのフォローを忘れない

どのような理由であっても、事業の撤退にはネガティブな印象が付きまとうものです。たとえ採算が取れなくても、あなたの事業を気に入ってくれていた飼い主さんやスタッフがいるかもしれませんよね。期待してくれていた人たちの想いに反するかたちで事業を撤退するのなら、せめてその人たちのフォローは忘れないようにしたいものです。フォローがないために、事業の撤退をきっかけにあなたの動物病院そのものから離れてしまう可能性も考えられます。

撤退する際にはこれまでご愛顧いただいたこと、協力してもらったことへの感謝の意を忘れずに伝えましょう。採算が取れていなかった商品の販売をやめるのであれば、最後はディスカウントして売り切ったり、プレゼントしたりすると、最後まで良い印象を持ってもらえるはずです。

撤退するときの記録を必ず残す

例え事業が失敗に終わってしまっても、恥じることはありません。「失敗は成功の基」です。これからの経営に活かせるように、なぜ今回失敗したのかを徹底的に考えましょう。独りよがりにならないよう、スタッフ全員で反省会を開くと客観視できます。

 

失敗を恐れていては、なにもできません。大切なのはピンチに陥ったときにも慌てない、冷静な対応です。もしあなたが新規事業の立ち上げを考えているのであれば、ぜひ今回紹介したポイントを頭の片隅に置いていただけると幸いです。

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