多くの動物病院は、獣医師であるあなたと数名のスタッフで運営されているかと思います。
私自身も5名程度のスタッフで診療からトリミングサービス、ペットホテルまでを運営しております。
スタッフ数が限られていると結びつきがおのずと強くなり、阿吽の呼吸で仕事を進められるようになりますよね。
それは確かに大きなメリットです。
しかし、アットホームな雰囲気だからこそ、惰性や甘えが生じやすくなることもまた事実です。
良好な人間関係を維持しながらも、ほどよい緊張感を保つためには、どのような点に気を配れば良いのでしょうか。
今回は個人経営の動物病院だからこそ気を付けておきたいポイントをまとめて紹介します。
まずは経営理念とビジョンの共感を深めよう
毎日職場のスタッフと顔を合わせていると、まるで家族や友達のような関係となってしまい、ビジネスであることを忘れてしまいがちです。それではあなたの動物病院の成長は見込めないでしょう。仕事であることを全てのスタッフに自覚してもらうためには、定期的にスタッフと一緒に経営理念やビジョンを共有するようにしてください。ただ、伝えるだけではスタッフの心に響きません。経営理念に則って、どのような動物病院にしていきたいのかを具体的に伝えることで、スタッフに共感してもらいやすくなります。そして、自分達は目標を達成するために、あなたの動物病院に働きに来ているのだということを自覚できるでしょう。
報連相を徹底する
阿吽の呼吸が生まれるのは一見良いことのように思われますが、「言わなくても伝わる」と思い込むのは慢心と言わざるを得ません。報連相がおざなりになっていると、重大なトラブルが発生する恐れがあります。
思い当たる節がある方は、一度院内の報連相の体制をぜひ見直してみてください。会議を行った際には議事録を取り、全員に共有できているのか、マニュアルやシステムの変更はすぐに周知しているのか、飼い主さんや業者からの連絡は通達しているのかを考えてみましょう。満足に報連相ができていなければ、いつ、誰が、どのように報告をするのか、ルールを設けてみてください。
相手と情報共有ができるようになることで、効率よく仕事を進められるようになりますし、スタッフにも安心して仕事を任せられます。「言った言わない」の問題がなくなることで、人間関係はより良好なものへと変わるでしょう。
スタッフとは連絡を取らない時間をつくる
前述の報連相の徹底と矛盾するように思えますが、ときにはスタッフと距離を置くことも必要だと考えます。いつでもあなたと連絡が取れる状態では、スタッフに「何かあったら先生に相談すればいいや」という気持ちが芽生えてしまい、依存される恐れがあるためです。もちろん総責任者はあなたですが、仕事である以上、スタッフ一人ひとりに責任感を持たせる必要があります。そのためにはスタッフからの連絡を受け付けない時間を設け、その間に起きた課題は自分で解決するように促しましょう。その際には、あなたが仕事を放棄していると誤解を与えることがないよう、連絡を取れなくする意図を伝えてください。
公私の区別は徹底的につける
仕事であるとは言え、一緒に働くのは人間同士です。どうしても相性の合う・合わないが出てきますし、自分をより慕ってくれる部下がいれば特別にかわいがりたくなることもあるでしょう。しかし、私情を絡めて人事を判断しても良いことはありません。一時的に人間関係が良くなったとしても、また新たなトラブルが出てくるはずです。
大切なスタッフだからこそ公私の区別は徹底的につけ、評価や給与を公平に決めるようにしましょう。どのスタッフが見ても納得できる評価制度をつくると、私情に流された評価を下すことがありません。こういった制度を整えることが、あなたの動物病院の経営体制を強固なものにします。
業務のひとつひとつに責任者を決める
動物病院にはさまざまな業務が存在しますが、大小問わずすべての業務に責任者を決めておくようにしましょう。その業務に対して詳しい人がいれば、迷ったときにはすぐに相談できますし、責任者本人には責任感が生まれます。動物病院の総責任者であるあなたの負担も少なくなるはずです。
責任者というとベテランスタッフが就くイメージがありますが、私は若いスタッフにこそ責任者としての使命を与えて、責任感を育むべきだと考えます。まずは簡単な業務の責任者に任命し、徐々に責任の重い仕事を任せていくようにしましょう。
少人数のスタッフで構成されている動物病院ほどスタッフ間の距離が近づきやすく、緊張感が失われがちです。適度な距離と緊張感を保つためには、経営者であるあなたが毅然とした態度で運営体制を整える必要があります。今回紹介した方法のうちひとつだけでも構いませんので、ぜひ実践してみてください。スタッフのモチベーションが上がれば、業務効率も改善されるかもしれません。