多くの動物病院は、獣医師であるあなたと数名のスタッフで運営されているかと思います。私自身も少人数体制で診療からトリミング、ペットホテルまでの事業を展開しています。
スタッフ同士の距離が近い職場では、「阿吽の呼吸で仕事が進みやすい」という大きなメリットがあります。一方で、アットホームな環境だからこそ、惰性や甘えが生まれやすいのも事実です。
良好な人間関係を維持しながら、適度な緊張感を保つためにはどのような工夫が必要なのでしょうか。ここでは、個人経営の動物病院だからこそ意識したいポイントをご紹介します。
まずは経営理念とビジョンの共感を深めよう
毎日職場のスタッフと顔を合わせていると、まるで家族や友達のような関係となってしまい、ビジネスであることを忘れてしまいがちです。しかし、それではあなたの動物病院の成長は見込めないでしょう。
仕事であることを全てのスタッフに自覚してもらうためには、定期的にスタッフと一緒に経営理念やビジョンを共有するようにしてください。ただ、伝えるだけではスタッフの心に響きません。経営理念に則って、どのような動物病院にしていきたいのかを具体的に伝えることで、スタッフに共感してもらいやすくなります。そして、自分達は目標を達成するために、あなたの動物病院に働きに来ているのだということを自覚できるでしょう。
報連相を徹底する

阿吽の呼吸は一見効率的に見えますが、「言わなくても伝わる」という思い込みはトラブルの原因になります。報連相は意識だけでなく、仕組みとして整えることが重要です。
例えば、会議の議事録を必ず共有する、業務変更は即時周知する、連絡内容を記録に残すといったルールを明確にしましょう。さらに、チャットツール(LINE WORKSやSlackなど)や電子カルテのメモ機能を活用し、誰でも確認できるかたちで情報を蓄積することも有効です。
情報共有の質が上がることで業務効率が向上し、「言った言わない」のトラブルも防げるため、結果として院内の信頼関係も強化されます。
報連相の大切さについては、以下の記事でも解説しています。ぜひ参考にしてください。
関連記事:基礎基本を大切にする人こそがビジネスでは成功する
自立を促すための“適切な距離感”を持つ
前述の報連相の徹底と矛盾するように思えますが、ときにはスタッフと距離を置くことも必要だと考えます。いつでもあなたと連絡が取れる状態では、スタッフに「何かあったら先生に相談すればいいや」という気持ちが芽生えてしまい、依存される恐れがあるためです。もちろん総責任者はあなたですが、仕事である以上、スタッフ一人ひとりに責任感を持たせる必要があります。
そこで大切なのが、自分で考えて判断する時間を意図的に設けることです。緊急時を除き、まずは自分で対応を考えるよう促すことで、責任感と判断力が養われます。
その際には、対応の基準や判断の目安をあらかじめ共有しておくことで、不安を与えることなく自立を促すことができます。
公私の区別を明確にし、公平な評価を行う
仕事であるとは言え、一緒に働くのは人間同士です。どうしても相性の合う・合わないが出てきますし、自分をより慕ってくれる部下がいれば特別にかわいがりたくなることもあるでしょう。しかし、私情を絡めて人事を判断しても良いことはありません。一時的に人間関係が良くなったとしても、また新たなトラブルが出てくるはずです。
だからこそ、評価や給与は明確な基準に基づいて決定することが重要です。例えば「接遇」「業務の正確性」「主体性」「飼い主満足度」など、評価項目を具体的に設定し、誰が見ても納得できる形に整えましょう。
公平な評価制度は、スタッフのモチベーションを高めるだけでなく、健全な緊張感を維持する土台にもなります。なお、スタッフの効果的なほめ方については以下の記事で紹介していますので、お悩みの方はぜひ参考にしてください。
業務ごとに責任者を決め、成長機会をつくる
動物病院にはさまざまな業務が存在しますが、大小問わずすべての業務に責任者を決めておくようにしましょう。その業務に対して詳しい人がいれば、迷ったときにはすぐに相談できますし、責任者本人には責任感が生まれます。動物病院の総責任者であるあなたの負担も少なくなるはずです。
特に、若手スタッフにも積極的に役割を任せることで、責任感や主体性を育てることができます。まずは小さな業務から担当してもらい、段階的にステップアップしていくと良いでしょう。
ただし、任せきりにするのではなく、定期的な振り返りやフォローを行うことが大切です。安心して挑戦できる環境が、組織全体の成長につながります。
“前向きな緊張感”が強い組織をつくる
少人数で運営される動物病院は、スタッフ同士の距離が近いからこそ、意識しなければ緊張感が失われやすい環境でもあります。だからこそ、経営者であるあなたが仕組みとルールを整え、適切な距離感を保ちながら組織を導くことが重要です。なお、ここでいう緊張感とは、萎縮するような空気ではありません。互いに責任を持ち、安心して仕事に向き合える“前向きな緊張感”です。
今回ご紹介した内容のうち、ひとつでも実践することで、スタッフの意識や行動に変化が生まれるはずです。結果として、院内の雰囲気や業務効率の向上にもつながっていくでしょう。
最後に、スタッフに対してあなたが見せるべき姿について説いた記事を紹介いたします。ぜひこちらもあわせてお読みください。
