デスクでノートパソコンの前に座り手を組んで考える男性

もし、あなたの病院のすぐ隣に、最新の医療設備や豊富なサービス、そして大勢のスタッフを抱える大手動物病院が開業したとしましょう。 多くの方は「もう終わりだ」「勝ち目がない」と、暗い気持ちになるかもしれません。実際に知名度や資本力で圧倒される恐怖は、計り知れないものです。

しかし、ビジネスの世界には「弱者が強者に勝つための法則」が明確に存在します。それが、イギリスのエンジニアが提唱し、後に日本で経営戦略として体系化された「ランチェスター戦略」です。

この戦略を正しく理解すれば、大手病院の隣という立地は、むしろ「あなたの病院の個性を際立たせる最高の比較対象」へと変わります。今回は、ナンバー2(弱者)が取るべき、逆転の経営戦略について考えてみたいと思います。

なお、戦略を立てる方法や時間の確保についてはこちらの記事を参考にしてください。

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まずはランチェスター戦略への正しい理解を

「天元への対抗策、高位を確保する白の戦略的配置」の写真

ランチェスター戦略を考える際には、まず「大手に対抗するために、メニューを増やして広告をより広いエリアに打つ」という、多くの人が陥りがちな戦略を変える必要があります。

ランチェスター法則には、大きく分けて以下の2つの法則があります。

  • 第1法則(弱者の戦略): 局地戦、接近戦、一騎打ち

  • 第2法則(強者の戦略): 広域戦、総合戦、確率戦(物量作戦)

資本力のある大手(強者)は、広いエリアから大量の顧客を集め、総合力で勝負する「第2法則」を得意とするものです。一方で、多数が該当する中小規模の動物病院(弱者)がこれと同じ土俵に上がると、物量で押し切られて確実に消耗してしまいます。「どこにでも広告を出す」という戦略は、実は弱者にとって最も危険な選択なもの。そうではなく、弱者が一貫して選ぶべきは「第1法則(弱者の戦略)」に根ざした戦い方なのです。

中小の動物病院が取るべき「5つの逆転シナリオ」

「紙に印刷した資料を使ってディスカッションする時代」の写真

では、具体的にどのようなアクションを起こすべきでしょうか。ランチェスター戦略の精神を動物病院経営に落とし込んだ、5つの具体的な戦術を提案します。

【局地戦】エリアを広げず、「足元」の密度を上げる

大手は広域から集客しようとしますが、弱者はあえてターゲットエリアを絞ります。「隣の市」まで欲張るのではなく、半径500m〜1km以内の「歩いて来られる飼い主さん」に集中してアピールしましょう。

近隣の商店街との提携、あるいは病院周辺の清掃活動など、大手にはできない「顔が見える、街の一部としての活動」を徹底することで、近隣住民にとって「一番身近で安心できる相談相手」のポジションを独占しやすくなります。

【一騎打ち】得意分野を「一点突破」で絞り込む

幅広く対応できるのは大手ならではの武器ですが、それは裏を返せば「広く浅く」になりがちです。その弱点をつくように、弱者は「猫の皮膚疾患なら県内随一」「シニア犬の介護・リハビリならここ」など、戦う土俵を極限にまで絞り込んでみるのもひとつの手です。

「特定の悩み」を持つ飼い主さんにとって、その分野に特化したあなたの病院は、どんなに大きな総合病院よりも価値のある「唯一無二の存在」となるでしょう。

あなたの動物病院の強みの見つけ方については、以下の記事を参考にしてください。

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【差別化・接近戦】「非効率」を最大の武器にする

効率と回転率を重視する大手は、一人ひとりの飼い主さんと1時間じっくり対話することは困難です。こここそが弱者の勝ち筋です。診察室での丁寧なヒアリングはもちろん、診察後の「その後の調子はいかがですか?」というフォローメールや、手書きのメッセージカードを送ってみてはいかがでしょうか。

こうした「手間のかかる、効率の悪い、人間味のある対応」こそが、飼い主さんの情緒的な満足度を高め、ロイヤリティ(忠誠心)を生みだしてくれます。効率化が求められる時代だからこそ、あえて逆の道をいくと飼い主さんの印象に残るはずです。

飼い主さんの心の掴み方については、こちらの記事でも触れていますので、ぜひ参考にしてください。

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【専門特化】大手が拾いきれない「ニッチな需要」を満たす

大手が提供するサービスは、最大公約数的で標準的なものにもなりがちです。 そこで「完全予約制で待ち時間ゼロ」「夜間専用のLINE相談あり」など、大手が標準化しづらい、あるいは採算が合わないと捨てるようなニッチなニーズを拾い上げてみましょう。この「痒い所に手が届く感」が、熱狂的なファンを生み出すようになります。

【陽動作戦】ライバルの「死角」でサービスを展開する

大手の営業時間を調査し、あえてその「隙間」を狙うのも有効です。 例えば、大手が休診の日にあえて診察を行う、あるいは出勤前の飼い主さんのために早朝受付を行うなど、ライバルが手薄な時間帯や曜日にリソースを投下してみてください。強者の「死角」を突くことで、これまで取りこぼされていた顧客を確実に獲得できるでしょう。

ナンバー2だからこそ、愛される動物病院に

「ナンバー2であること」は、決して敗北ではありません。それは、「特定の誰かにとってのナンバーワン」になれるチャンスを秘めているということです。

すべての人に選ばれる必要はありません。「最新の巨大病院よりも、親身になってくれる先生がいい」と願う飼い主さんは、必ず一定数存在します。 大手と戦うのではなく、大手と「異なる価値」を提供することが重要です。

今回紹介したランチェスター戦略を武器に、あなたの病院にしか出せない色を打ち出していきましょう。そうすることで、どんなに大きなライバルが現れても揺らぐことのない、固い絆で結ばれた飼い主さんが増えていくはずです。

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